メラトニン伝達経路を活性化するramelteonは薬物乱用または運動や認知障害には有効ではないようである、とArchives of General Psychiatry
10月号に掲載された。米国の研究者らはramelteon、トリアゾラム、およびプラセボの効果を鎮痛薬濫用の成人患者14人において評価した。参加者は研究所に約18夜滞在し、ramelteon
16、80、160mg(推奨用量は8mg)、トリアゾラム0.25、0.5、0.75mg、またはプラセボのいずれかの用量の薬剤を順序無作為に内服した。患者(女性1人、男性13人、平均年齢28歳)は内服30分前に評価を受け、内服24時間後に同じ評価を繰り返し受けた。その結果、ramelteon群はどの用量もプラセボと比較し、行動試験で評価した患者の報告および観察者による記録に何の効果の差も認められなかった。一方、トリアゾラムは広範囲に渡る患者および観察者の評価や運動および認知機能計測において用量に応じた効果が認められた。
難治性の症状に対し抗精神病薬を投与されているアルツハイマー病患者の多くは副作用のために内服を中止しており、プラセボと比較し結果として利益が認められない、とNew
England Journal of Medicine 10月12日号に掲載された。Clinical Antipsychotic Trials of Intervention
Effectiveness (CATIE) Alzheimer’s Disease StudyのPhase Iの結果から、これらの患者群におけるオランザピン、クエチアアピン、およびリスペリドンの初めての長期比較が得られた。患者421人全てがアルツハイマー病に罹患しており、日常生活に障害を与えるような妄想、幻覚、攻撃性、または興奮の症状を有していた。オランザピン群の24%が副作用のため内服を中止し、一方リスペリドンでは18%、クエチアラピン群では16%、プラセボ群では5%の患者が副作用のため内服を中止した。このスタディは現実社会の医療を模倣してデザインされた。つまり、患者は最初の薬剤を中止した場合には二重盲検の方式で薬剤を別の抗精神病薬またはcitalopramに変えることを許された。
統合失調症患者において治療薬変更の必要性が生じた場合に、第一世代の抗精神病薬から第二世代の非定型抗精神病薬へ変更しても有意な利点はない、とArchives
of General Psychiatry 10月号に掲載された。英国の研究者らは227人の患者(18〜65歳)を第一または第二世代の抗精神病薬投与群に無作為に割り付けた。薬剤の個々の選択は医師の裁量に任せた。患者らは薬剤変更前、12週、26週、および52週後にquality
of lifeスケールを用いて評価された。症状、副作用、および薬剤に対する満足度も計測した。227人中118人(52%)が第一世代抗精神病薬を内服し、109人(48%)が第二世代を内服した。12週後、quality
of lifeスコアは第一世代内服群で平均49.2であり、第二世代内服群では46.6であった。26週後はそれぞれ49.2、50.4、1年後はそれぞれ53.2、51.3であった。
睡眠時呼吸障害(低呼吸/無呼吸)を有する患者はうつ病のリスクが高い、とArchives of Internal Medicine 9月18日号に掲載された。研究者らは1,408人の患者に対しポリソムノグラフィー、body
mass index、および問診を1988年から4年ごとに行った。睡眠検査3,202件のうち1,911例が微少障害(平均1時間5回未満)、606例が軽度(平均1時間5〜14回)、351人が中等度以上(1時間15回以上)の障害に分類された。呼吸障害の人数は男性の方が女性より約2倍多かった。経過中に軽症うつ病が649件、中等度以上のうつ病が392件認められた。女性は男性と比較し、およそ2倍うつ病になりやすかった(27%対15%)。呼吸障害を有さない者と比較すると微少障害を有する者は1.6倍うつ病になりやすかった。軽度の呼吸障害を有する者は2倍、中等度以上の呼吸障害を有する者は2.6倍うつ病を発症する確率が高かった。
アルコール依存症に対する専門家の援助を求め1年後に寛解した成人は、同時期に再発した成人と比較しその後15年間に死亡する確率がより低い、とJournal
Alcoholism : Clinical and Experimental Research 10月号に掲載された。米国の研究者らは過去にアルコール使用の治療を受けた経験のない成人628人を追跡調査した。全員(約半分が女性、平均年齢30代半ば)が自発的に治療法を探し求めた。16年間の追跡期間中に19.3%が死亡した。死亡率は一般人口の予測死亡率よりは1.4倍高かったが、類似のスタディの報告よりも低かった。ベースライン時にアルコール関連の問題がより多かった者は、独身男性(既婚者と比較して)と同じく死亡のリスクが高かった。外来での治療歴が長く入院期間が短いほど、生存率が高い傾向にあった。
特定の遺伝子変異の存在により、あるクラスの抗うつ薬が後期発症の大うつ病患者に有効であるか否かが決定される可能性がある、とJournal of the
American Medical Association 10月4日号に掲載された。韓国の研究者らは選択的セロトニン再取込み阻害薬(fluoxetineまたはセルトラリン、136人)またはノルエピネフリン再取込み阻害薬(ノルトリプチリン、105人)による治療を受けた大うつ病患者241人を評価した。大うつ病の平均発症年齢は50代前半〜半ばであった。研究者らは、ノルエピネフリンまたはセロトニントランスポーター遺伝子に関するある遺伝子変異の単独または組み合わせの存在が両方のクラスの薬剤に反応するかまたは無反応であるかに影響することを発見した。例えば、ノルエピネフリントランスポーター遺伝子のある変異を有する患者はノルトリプチリンに反応する確率がfluoxetineまたはセルトラリンに反応する確率より有意に高かった(83.3%対58.7%)。
軽度の貧血は高齢者精神障害の独立した危険因子であり、実行機能の低下として表面化する可能性がある、とJournal of the American Geriatrics
Society 9月号に掲載された。研究者らは実行機能を評価するのに一般的に使用される3つのテストを70〜80歳の女性に行った。そのうち約10%が軽度の貧血を有していた。その結果、3つのテストの成績が下から15%であった女性は成績が上位3%であった女性と比較し、貧血の傾向にあった。年齢、教育レベルおよび併存疾患などの認知機能に影響を与える因子で補正した結果、貧血の女性はヘモグロビン濃度が正常であった者と比較し、4〜5倍テストの成績が悪い傾向にあった。患者の実行機能が低下したり精神障害を有していた患者の判断力や高次機能が急速に低下したりしたときには、記憶力低下や認知機能障害が発症する前に、医師らがヘモグロビンレベルを確認することが勧められる。