妊娠早期に1回に3杯以上アルコールを摂取した母親をもつ者は、青年期までにアルコール障害を発症するリスクが上昇する、とArchives of General
Psychiatry 9月号に掲載された。オーストラリアの研究者らは母親7,223人の出生前初回受診時、出産時、出産後についての評価を行った。子供たちは出生児から定期的に評価され、21歳の時点でアルコール障害の有無についての評価を受けた。2,138人に関する最終的な解析結果から、妊娠早期に1回に3杯以上アルコールを摂取した母親をもつ者は早期発症(18歳未満)のアルコール障害のリスクが2.47倍、後期発症(18〜21歳)のアルコール障害のリスクが2.04倍であった。他の妊娠の時期のアルコール摂取でも子供のアルコール障害発症のリスクは上昇していた。アルコール障害発症に関与する他の生物学的あるいは環境的要因を調整した後でも、妊娠中の飲酒と子供のアルコール障害発症には強い相関が認められた。
US National Institute of Mental Healthによって行われた大規模調査の結果、双極性障害は労働者の生産性損失という点において大うつ病の2倍の社会的影響があり、生産性の低下は症状が臨床的に改善した後も継続する、とAmerican
Journal of Psychiatry 9月号に掲載された。調査の結果、うつ病の成人では年間の平均労働損失日数は27.2日であったのに対し、双極性障害の成人では年間平均65.5日であったことが明らかにされた。仕事における低機能性は、欠勤するよりも労働損失日数が多くなることの原因となっており、双極性障害患者におけるうつのエピソードが大うつ患者との労働損失状況の違いに関係している傾向にあった。それ以前に躁もしくは軽躁のエピソードのみ報告された患者の生産性は、大うつ患者の生産性とほぼ同様であった。
より高齢の男性を父親とする新生児に自閉症スペクトラム障害が発生しやすい傾向にある、とArchives of General Psychiatry 9月号に掲載された。研究者らはイスラエル軍隊に徴兵されるために検査を受けた1980年代に生まれた17歳318,506人について解析した。出生時の父親の年齢は全ての者で判明しており、132,271人では母親の年齢も判明していた。全体の中で208人に自閉症スペクトラム障害が認められ、そのうち110人では両親の年齢が判明していた。出生時の両親の年齢が15〜29歳、30〜39歳、40〜49歳、50歳以上のグループではそれぞれ34例、62例、13例、1例の自閉症障害児が存在した。出生年、社会的地位、出生時の母親の年齢による調整を行った後でも、出生時の父親の年齢が高いほど子供に自閉症障害のリスクが高くなる相関が認められた。出生時の父親の年齢が40歳以上の子供におけるリスクは、その年齢が29歳以下の子供と比較して6倍近くも高かった。一方、父親の年齢による調整を行なった後では、出生時の母親の年齢は自閉症には影響しなかった。
強迫性障害や糖尿病を有する小児と健常な小児に対する評価から、精神疾患を有する小児では健常な小児や慢性疾患を有する小児と比較していじめを受けるリスクがはるかに高い可能性がある、とJournal
of Clinical Child and Adolescent Psychology 9月号に掲載された。研究者らは強迫性障害児52人、1型糖尿病患児52人、および年齢をマッチさせた52人の健常児についてclinician-administered
testと親子調査の結果を評価した。強迫性障害児の4分の1以上で慢性的ないじめが問題として報告された。他のグループでは、いじめ(平均して1日に1回以上の言葉もしくは身体的なエピソードと定義されている)に関する深刻な問題が報告されたのはわずか9%にすぎなかった。さらに、いじめは症状悪化の原因となり、また孤独やうつのリスクを高くさせる指標であった。
職場において実際に暴力もしくはその脅しを受けたものは、他の就業者と比較してうつやストレス関連性疾患をさらに有意に発症しやすい傾向にある、とJournal
of Epidemiology and Community Health 9月号に掲載された。デンマークの研究者らは、うつまたはストレス関連性疾患で治療を受けている外来および入院患者14,000人以上と年齢・性別をマッチさせた健常人38,000人以上を対象として、職場環境について評価した。ヘルスケア部門、教育部門、ソーシャルワーク部門において暴力は最も一般的にみられる問題であり、女性と比べて男性は暴力に曝露されるリスクがさらにより高かった。暴力を受けない職場で働く人と比較して、暴力に曝露されることによるうつのリスクは女性で48%、男性で45%急増した。一方、暴力に曝露されたことによるストレス関連性疾患は、女性でおよそ33%、男性でおよそ55%の増加傾向にあった。
脳の発達に関係する遺伝子の変異は、ミエリンを産生する希突起膠細胞の成熟を障害することで統合失調症の原因となっている可能性がある、とProceedings
of the National Academy of Sciences (USA) 8月15日号に掲載された。米国および英国の研究者は、血縁関係にない統合失調症患者673人と統合失調症以外の患者716人のDNAを解析した。対照群は年齢、性、人種をマッチさせ、研究中は誰も内服治療を受けなかった。OLIG2遺伝子の変異は統合失調症の発症に強く関連していた。さらに、CNPとERBB4というミエリンの産生に関与し統合失調症に関連のあることが分かっている2つの遺伝子と共に検査された場合にも、OLIG2には統合失調症との関連が認められた。