選択的セロトニン再取込み阻害薬の無効なうつ病患者は、短期間でも非定型抗精神病薬を追加することにより有益性が得られる可能性がある [2006-08-29]

Patients with depression resistant to a selective serotonin reuptake inhibitor may benefit from even short-term addition of an atypical antipsychotic

抗うつ薬が無効なうつ病患者は、たとえ投与期間が短くても、非定型抗精神病薬による補助薬物療法により有益性が得られる可能性がある、とNeuropsychopharmacology AOP 8月号に掲載された。ある国際トライアルにおいて研究者らは選択的セロトニン再取込み阻害薬が無効(1〜3種の治療が不成功)であった患者489人を登録した。まず、患者らは1日60mgまでのcitalopramを4〜6週間投与された(オープンラベル)。症状の改善が50%未満の患者には、オープンラベルでリスペリドンの1日2mg補助薬物療法を続行可能とした。3段階目では、寛解した患者をリスペリドンまたはプラセボ投与群に盲検化し無作為割り付けを行った。Citalopramを開始された患者489人中434人において治療が不成功であった。Citalopram無効でリスペリドンを投与された患者386人中243人が寛解に達した。3段階目における再発までの中央値はリスペリドン群で102日であったのに対しプラセボ群では85日であった(それぞれ56.1%および54.6%)。

 

うつ病のリスクの高い妊婦の多くは、大うつ病の妊婦と同様、無治療であるか不適切な治療を受けている可能性がある [2006-08-29]

Many pregnant women at high risk for depression, as well as women with major depression, may not be receiving therapy or are receiving inadequate therapy

大うつ病の妊婦の多くは無治療であり、また軽度のうつ病症状を有するまたはうつ病のリスクの高い妊婦のほとんども無治療である、とGeneral Hospital Psychiatry 7-8月号に掲載された。米国の研究者らはある一地域の妊婦1,837人を、DSM-IV診断基準に基づいた標準的な質問票を用いて評価した。276人の女性がうつ病のリスクの診断基準に合致し、彼女らの20%は治療を受けていた。精神専門家によるフォローアップの問診の結果、276人中17%が大うつ病の診断基準に合致し、他の23%は大うつ病の既往歴を有していた。大うつ病女性のうち何らの治療を受けていたのはわずか33%であった。治療を受けている女性のデータ解析の結果、推奨用量の抗うつ薬を少なくとも6週間処方されていたのはわずか43%であった。

 

ケタミンは1回量の静注後2時間という短時間で難治性うつ病患者の症状を一時的に緩和する [2006-08-22]

Ketamine can temporarily relieve symptoms of depression in patients with treatment-resistant disease in as little as two hours after one intravenous dose

ケタミンは1回量の静注後数時間という短時間で難治性うつ病患者の症状を一時的に緩和し、この発見により、さらに即効性および長期の忍容性のある新薬が開発される可能性があるとArchives of General Psychiatry 8月号に掲載された。計18人の患者にケタミンまたはプラセボの1回量を投与する群に無作為に割り付けた。その結果、ケタミンを投与した患者の71%において1日以内にうつ病症状が改善した。これらの患者のうち29%は1日以内にほぼ無症状になった。ケタミン投与群患者の35%は7日後にも有益な効果が認められた。一方、プラセボを静注された患者では改善は認められなかった。1週間後、初回の治療にて改善が認められなかった場合には、患者はもう一方の治療を受けた。筆者らは、ケタミンはNメチルDアスパラ酸(NMDA)受容体を阻害し、脳内グルタミンレベルに直接影響を与えるためにこれほど迅速に作用するものとの仮説を立てている。

 

早期のアルツハイマー病さえも他の痴呆と区別できるバイオマーカーが発見されたことにより、医師らが正確な診断を簡便に行なうことができるようになる [2006-08-22]

Discovery of biomarker that distinguishes even early Alzheimer’s disease from other dementias may allow physicians to reach accurate diagnoses easily

早期のアルツハイマー病さえも検出するある酵素バイオマーカーの発見により、医師らは簡便な皮膚テストで正確な診断を達成できる可能性があるとProceedings of the National Academy of Sciences オンライン版8月14日号に掲載された。アルツハイマー病は酵素MAP Kinase Erk 1/2のある変化を刺激する。線維芽細胞を一般的な炎症シグナルであるブラディキニンに曝露させたところ、アルツハイマー病の線維芽細胞の反応は、同年代の対照集団の細胞やパーキンソン病、多発性脳梗塞性痴呆、ハンチントン舞踏病などのアルツハイマー病以外の痴呆患者から採取された細胞の反応と明らかに区別できた。このバイオマーカーが有用であることが証明されれば、長期の精神疾患歴を有する患者における早期の痴呆の可能性の考えられるような複雑な臨床症状を評価するのに役立つであろう。

 

家族性強迫性障害に関する2つの別のスタディにおいて、ある特定のグルタミン酸輸送体遺伝子が同定されたことによりこの障害の理解が深まる [2006-08-08]

Identification of a specific glutamate transporter gene in two separate studies on familial obsessive compulsive disorder advances understanding of the disorder

家族性強迫性障害に関する別々のスタディにおいて、ある特定のグルタミン酸輸送体遺伝子SLC1A1が同定されたことにより、この疾患に対する理解が深まり近いうちに患者の親類のスクリーニングテストが開発される可能性がある、とArchives of General Psychiatry 7月号に掲載された。ある解析では71人の患者およびその両親の遺伝子検体を使用し、その結果、疾患の早期発症とSLC1A1遺伝子のいくつかの部位の遺伝子亜型に相関があることが判明した。これらの亜型のうち2つの部位と強力な相関性が認められ、それは早期発症の男性のみにみられた。臨床的には患者の半数もが初発症状を小児期または青年期に経験する。もう1つの新しい論文は、患者157人とその第一度親族319人のデータをもとにしたものである。その結果、障害とSLC1A1遺伝子の3個所に連鎖が認められた。これまでの研究は脳のある特定の部位のグルタミン酸レベルと障害の存在の機能的な関連をみたものであったため、この新たな発見は今後の臨床研究の上で特に重要なものである。

 

同僚のサポートによって自己の理解を高める嗜癖からの回復プログラムは、たとえ精神疾患を有した人々に対しても有用である [2006-08-08]

Addiction recovery programs that rely on peer support and increasing self-understanding are helpful even for people who have psychiatric illness

同僚のサポートによって自己の理解を高める嗜癖からの回復プログラムは、たとえ精神疾患を有した人々に対しても有用である、とAlcoholism: Clinical and Experimental Research 8月号に掲載された。Alcoholics Anonymous(アルコール依存症のグループ)のようなプログラムにおける初めてのスタディにおいて、米国の研究者らは、アルコール依存症の患者227人を外来リハビリテーションプログラム終了後最長3年間追跡した。男女ともに等しく同僚の作り上げた組織の恩恵を受け、信仰家の人もそうでない人も同様に効果が認められた。精神疾患を合併している人々も同様の結果であった。最重症のアルコール依存症の人々はプログラムに最も参加する傾向にあり、ほとんどの集まりに参加する人々ほど禁酒に成功する確率が高かった。

 

弁証法的行動療法を受けている境界性パーソナリティ障害の女性は、専門家が診療しているが一般的な治療を受けている者と比較し自殺企図のリスクが半分である [2006-08-01]

Women with borderline personality disorder who receive dialectical behavioral therapy halve their risk for suicide attempts compared with expert but general therapy

弁証法的行動療法を受けている境界性パーソナリティ障害の女性は、専門家が診療しているが一般的な治療を受けている者と比較し自殺企図のリスクが半分である、とArchives of General Psychiatry 7月号に掲載された。この研究では条件の適合した101人の女性(年齢18〜45歳)を登録し、どちらかの治療を1年間受けその後1年間追跡する群に無作為に割り付けた。女性らは弁証法療法または困難な患者の治療に従事する専門家による治療とともに、個々の療法士による治療を受けた。また、研究では治療の種類を評価するようにデザインされ、療法士の質が管理された。治療期間を通して行動療法の女性はまた、精神疾患による入院、治療法の変更、または治療中断の確率も低かった。さらに、境界性パーソナリティ障害または自殺行動の治療に従事している専門家に治療されたこれらの女性は、全体的に通常よりも良好な成績を報告しているようである。

糖尿病とアルツハイマー病の関連に関するパイロット研究の結果、ピオグリタゾン療法がアルツハイマー病の進行を遅延させる可能性が示された [2006-08-01]

Link between diabetes and Alzheimer’s disease leads to pilot study showing that pioglitazone therapy may delay progression of Alzheimer’s disease

2型糖尿病とアルツハイマー病との関連が認識されたことにより施行されたパイロット研究の結果、ピオグリタゾンが、おそらく脳のアミロイドプラークの炎症反応を軽減することにより、アルツハイマー病の進行を遅延させる可能性が示された、と2006年International Conference on Alzheimer’s Disease and Related Disorders学会で発表された。軽度から中等度のアルツハイマー病患者25人を対象としたプラセボコントロールスタディにおいてピオグリタゾンの効果が試された。Phase Iスタディではこの患者集団における薬剤の安全性について評価した。ピオグリタゾンによる治療はアルツハイマー病の進行を軽減するようであったが、この研究は小さすぎるため記憶力や日々の生活能力に対する効果を確信できなかった。このような制限はあるが、学会の主催者はこの発表に注目しており、さらなる治験が計画されている。



 

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