ケタミンは1回量の静注後数時間という短時間で難治性うつ病患者の症状を一時的に緩和し、この発見により、さらに即効性および長期の忍容性のある新薬が開発される可能性があるとArchives
of General Psychiatry 8月号に掲載された。計18人の患者にケタミンまたはプラセボの1回量を投与する群に無作為に割り付けた。その結果、ケタミンを投与した患者の71%において1日以内にうつ病症状が改善した。これらの患者のうち29%は1日以内にほぼ無症状になった。ケタミン投与群患者の35%は7日後にも有益な効果が認められた。一方、プラセボを静注された患者では改善は認められなかった。1週間後、初回の治療にて改善が認められなかった場合には、患者はもう一方の治療を受けた。筆者らは、ケタミンはNメチルDアスパラ酸(NMDA)受容体を阻害し、脳内グルタミンレベルに直接影響を与えるためにこれほど迅速に作用するものとの仮説を立てている。
早期のアルツハイマー病さえも検出するある酵素バイオマーカーの発見により、医師らは簡便な皮膚テストで正確な診断を達成できる可能性があるとProceedings
of the National Academy of Sciences オンライン版8月14日号に掲載された。アルツハイマー病は酵素MAP Kinase Erk
1/2のある変化を刺激する。線維芽細胞を一般的な炎症シグナルであるブラディキニンに曝露させたところ、アルツハイマー病の線維芽細胞の反応は、同年代の対照集団の細胞やパーキンソン病、多発性脳梗塞性痴呆、ハンチントン舞踏病などのアルツハイマー病以外の痴呆患者から採取された細胞の反応と明らかに区別できた。このバイオマーカーが有用であることが証明されれば、長期の精神疾患歴を有する患者における早期の痴呆の可能性の考えられるような複雑な臨床症状を評価するのに役立つであろう。
家族性強迫性障害に関する別々のスタディにおいて、ある特定のグルタミン酸輸送体遺伝子SLC1A1が同定されたことにより、この疾患に対する理解が深まり近いうちに患者の親類のスクリーニングテストが開発される可能性がある、とArchives
of General Psychiatry 7月号に掲載された。ある解析では71人の患者およびその両親の遺伝子検体を使用し、その結果、疾患の早期発症とSLC1A1遺伝子のいくつかの部位の遺伝子亜型に相関があることが判明した。これらの亜型のうち2つの部位と強力な相関性が認められ、それは早期発症の男性のみにみられた。臨床的には患者の半数もが初発症状を小児期または青年期に経験する。もう1つの新しい論文は、患者157人とその第一度親族319人のデータをもとにしたものである。その結果、障害とSLC1A1遺伝子の3個所に連鎖が認められた。これまでの研究は脳のある特定の部位のグルタミン酸レベルと障害の存在の機能的な関連をみたものであったため、この新たな発見は今後の臨床研究の上で特に重要なものである。
同僚のサポートによって自己の理解を高める嗜癖からの回復プログラムは、たとえ精神疾患を有した人々に対しても有用である、とAlcoholism: Clinical
and Experimental Research 8月号に掲載された。Alcoholics Anonymous(アルコール依存症のグループ)のようなプログラムにおける初めてのスタディにおいて、米国の研究者らは、アルコール依存症の患者227人を外来リハビリテーションプログラム終了後最長3年間追跡した。男女ともに等しく同僚の作り上げた組織の恩恵を受け、信仰家の人もそうでない人も同様に効果が認められた。精神疾患を合併している人々も同様の結果であった。最重症のアルコール依存症の人々はプログラムに最も参加する傾向にあり、ほとんどの集まりに参加する人々ほど禁酒に成功する確率が高かった。
弁証法的行動療法を受けている境界性パーソナリティ障害の女性は、専門家が診療しているが一般的な治療を受けている者と比較し自殺企図のリスクが半分である、とArchives
of General Psychiatry 7月号に掲載された。この研究では条件の適合した101人の女性(年齢18〜45歳)を登録し、どちらかの治療を1年間受けその後1年間追跡する群に無作為に割り付けた。女性らは弁証法療法または困難な患者の治療に従事する専門家による治療とともに、個々の療法士による治療を受けた。また、研究では治療の種類を評価するようにデザインされ、療法士の質が管理された。治療期間を通して行動療法の女性はまた、精神疾患による入院、治療法の変更、または治療中断の確率も低かった。さらに、境界性パーソナリティ障害または自殺行動の治療に従事している専門家に治療されたこれらの女性は、全体的に通常よりも良好な成績を報告しているようである。
2型糖尿病とアルツハイマー病との関連が認識されたことにより施行されたパイロット研究の結果、ピオグリタゾンが、おそらく脳のアミロイドプラークの炎症反応を軽減することにより、アルツハイマー病の進行を遅延させる可能性が示された、と2006年International
Conference on Alzheimer’s Disease and Related Disorders学会で発表された。軽度から中等度のアルツハイマー病患者25人を対象としたプラセボコントロールスタディにおいてピオグリタゾンの効果が試された。Phase
Iスタディではこの患者集団における薬剤の安全性について評価した。ピオグリタゾンによる治療はアルツハイマー病の進行を軽減するようであったが、この研究は小さすぎるため記憶力や日々の生活能力に対する効果を確信できなかった。このような制限はあるが、学会の主催者はこの発表に注目しており、さらなる治験が計画されている。