肥満は気分障害および不安障害のリスクを有意に上昇させるが薬物乱用のリスクは有意に低下させる [2006-07-25]

Obesity is associated with a significant increase in risk for mood and anxiety disorders but significantly lower risk for substance abuse

肥満は気分障害および不安障害のリスクを25%上昇させ薬物乱用のリスクを25%低下させる、とArchives of General Psychiatry 7月号に掲載された。米国の研究者らは、ある大規模な調査に参加した成人9,125人(平均年齢44.8歳)に対し大うつ病、気分変調、双極性障害などの気分障害、パニック障害や全般性不安障害を含む不安障害、薬物乱用などの経験に関する質問を行った。Body mass indexが 30未満は全体の約4分の3であり、2,330人はbody mass indexが30以上で肥満と考えられた。肥満を有する成人は気分障害や不安障害の生涯罹患率がより高く、薬物乱用障害の罹患率はより低かった。この傾向は男女間において差はなかった。肥満と気分障害の関連はヒスパニック系でない白人でより学歴の高い者において最も強く認められた。

 

STAR*Dスタディの新たな結果から、抗うつ薬を2種類試し不成功であった患者が3種類目の薬剤によって軽快する確率はごく低いことが示された [2006-07-25]

New results for the STAR*D study show that patients who fail two trials of an antidepressant have only a minimal chance for remission with a third type of medication

第3回目のSTAR*Dスタディの新たな結果から、抗うつ薬を2種類試し不成功であった患者が3種類目の薬剤によって軽快する確率はごく低いことが示された、とAmerican Journal of Psychiatry 7月号に掲載された。抗うつ薬に関するこれまでで最も大規模な第二相臨床試験の患者で、他の薬剤を試すことを選択した者235人を、レベル1または2では使用されなかった抗うつ薬であるノルトリプチリンまたはmirtazapineを試す群に無作為に割り付けた。14週後の寛解率はノルトリプチリン群で20%、mirtazapine群で12%であり有意差はなかった。有害な副作用の頻度もまた同等であった。このレベル3で使用された2種類の抗うつ薬の薬理作用は過去のレベルのものとは異なり、また2種類各々の薬理作用もお互いに異なっていた。

 

長期スタディのデータから境界性パーソナリティ障害と双極性障害は一般的には共存しないことが示唆された [2006-07-18]

Data from long-term study suggest that borderline personality disorder and bipolar disorder do not commonly coexist

境界性パーソナリティ障害と双極性障害は一般的には共存しないとの治療へのアプローチに関する重要な意味を持つ結果が、American Journal of Psychiatry 7月号に掲載された。4年間の米国のスタディにおいて境界性パーソナリティ障害と確定診断された患者196人を評価した。双極性障害の合併率は19%であった。一方、他のパーソナリティ障害を有する患者が双極性障害を合併する確率は8%であった。パーソナリティ障害を有しベースライン時に双極性障害を有さない患者のうち、その後4年間に双極性障害を発症した確率は、境界性パーソナリティ障害での8%に対し、他のパーソナリティ障害患者におけるその割合は3%であった。これだけ差があったにもかかわらず、境界性パーソナリティ障害患者における双極性障害の合併率は20%未満にとどまっていた。双極性障害の有無に関わらず境界性パーソナリティ障害患者の3分の2において寛解が認められた。

 

動物実験の結果、刺激薬は前頭前野皮質の神経伝達物質レベルを調節することにより注意欠陥/多動性障害(ADHD)の症状を改善することが示唆された [2006-07-18]

Animal study suggests stimulants improve symptoms of attention deficit hyperactivity (ADHD) disorder by modulating neurotransmitter levels in the prefrontal cortex

刺激薬は前頭前野皮質の神経伝達物質レベルを調節することにより注意欠陥/多動性障害の症状を改善することが示唆されたとの結果が、Biological Psychiatry オンライン版6月22日号に掲載された。ラットを用いて研究者らは、臨床的に処方されている薬物用量と動物に投与されている用量が機能的に同等の作用を及ぼすことを確認するために臨床検査と行動検査を行った。研究者らは微小透析法を用いて、一般的に障害の治療に使用される低用量の刺激薬を使用した場合としない場合の前頭前野皮質、側坐核、内側中隔のドパミンおよびノルエピネフリン濃度を計測した。刺激薬により前頭前野のドパミンとノルエピネフリンのレベルは上昇したが他の部位のレベルは有意に変化しなかった。さらなる研究により前頭前野の神経伝達物質レベルの変化がどのように認知機能を改善するかが調査されるであろう。

 

米国のスタディによって、過去20年間の抗うつ剤の使用量増加と国内の自殺率の著明な低下には強力な相関関係が認められることが示された [2006-07-11]

US study shows strong correlation between increased use of antidepressants over the past 20 years and marked nationwide decrease in suicide rate

米国のデータの新たな解析の結果、過去20年間の抗うつ剤の使用量増加と国内の自殺率の著明な低下には強力な相関関係が認められることが示された、とPLoS Medicine 6月号に掲載された。このデータは、fluoxetineが発売される以前の15年間の米国の自殺率はほぼ変化がなかったが、その後14年間その使用量増加に伴い自殺率が低下したことを示している。効果は女性において顕著に認められた。1988年以前のデータをもとに数式モデルから予測した1988〜2002年の自殺率によると、fluoxetine導入後の米国人の自殺による推測死亡者の減少総数は33,600人である。筆者らは、自殺の多くは未治療のうつ病の人々に起こっていると述べている。また、データを総合的に判断すると、使用された個々の抗うつ剤または薬剤の種類と自殺のリスクには傾向が見られなかったことが示された。

 

リラクゼーション療法のような認知行動療法は少なくともある種の非ベンゾジアゼピン系薬剤よりも有益である [2006-07-11]

Cognitive behavioral treatments such as relaxation therapy are more beneficial than at least some non-benzodiazepine medications

リラクゼーション療法のような認知行動療法は非ベンゾジアゼピン系薬剤であるゾピクロンと比較してより有益である、とJournal of the American Medical Associationの6月28日号に掲載された。ノルウェーの研究グループは慢性の一次性不眠を有する成人46症例(平均年齢60.8歳)を、行動療法群、ゾピクロン 7.5mg就寝前投与群、およびプラセボ投与群に無作為に割り付けた。全ての群の治療は6週間にわたって行われ、さらに行動療法群、ゾピクロン7.5mg就寝前投与群の両群に関しては6ヵ月間のフォローアップが行なわれた。行動療法群の夜間総覚醒時間はプラセボ群と比較して6週間の時点で、またゾピクロン投与群と比較すると6週間および6ヵ月の時点で有意に改善が認められた。一方、行動療法群における総睡眠時間は6週間の時点と比較して6ヵ月の時点では有意に増加していた。ゾピクロン投与群では6ヵ月間のフォローアップの期間を通じ、投与6週間の時点において最も改善が認められた。全体的に見て、 認知行動療法群ではゾピクロン投与群に比べ、総覚醒時間、睡眠効率、徐波睡眠のすべてにおいてより有意であった。

 

統合失調症患者の神経伝達物質受容体活性に関する新たな発見により疾患の症状を発現させるメカニズムの理解が深まる [2006-07-04]

New findings on neurotransmitter receptor activity in patients with schizophrenia improves understanding of mechanisms that generate disease symptoms

統合失調症患者における2つの重要な神経伝達物質活性に関する新たな発見により、研究者らに疾患の症状を発生させる分子メカニズムのより迫った理解がもたらされる、とNature Medicineオンライン版 7月11日号に掲載された。国際大規模遺伝子研究の結果neuregulin 1は統合失調症に罹患しやすくさせると考えられていたため、研究者らは、統合失調症患者または健常人の死後の脳におけるneuregulin 1刺激により受容体を活性化しその分子応答を計測した。その結果、統合失調症の脳における受容体活性は有意に高く、それに伴うNMDAグルタミン酸受容体の活性低下が認められた。NMDAグルタミン酸受容体の活性低下は統合失調症の症状と関連があると考えられている。このスタディは、ヒトにおいて2つの興味深い受容体と統合失調症症状との関連を確立した初めてのものである。

2型糖尿病のリスクが高く抗うつ薬を内服している者は抗うつ剤を内服していない者と比較し糖尿病を発症する率が高いようである [2006-07-04]

People at high risk for type 2 diabetes who take an antidepressant appear to progress to diabetes significantly more often than peers who do not use antidepressants

2型糖尿病のリスクが高く抗うつ薬を内服している者は抗うつ剤を内服していない者と比較し糖尿病を発症する率が高いようである、とAmerican Diabetes Association学会で発表された。プラセボ、ライフスタイルの改善、またはメトフォルミン内服の糖尿病発症予防効果を調査した大規模糖尿病予防計画(Diabetes Prevention Program)のサブ解析にて、研究者らは、ライフスタイルおよびプラセボ群の患者でベースライン時点に抗うつ薬を内服していた者またはスタディ期間中に抗うつ薬を頻回に内服していた者は、抗うつ薬を使用していなかった者と比較し、糖尿病を発症する確率が2〜3倍高いことを明らかにした。この相関関係は、肥満などの交絡因子で補正してもなお認められた。興味深いことに、メトフォルミンを内服している群においては抗うつ剤内服によるリスクの変化は認められなかった;メトフォルミンはインスリン抵抗性または明らかな糖尿病のインスリン感受性を改善するために使用される薬物である。



 

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