治療抵抗性のうつ病に対する有望な補助的治療法として迷走神経刺激が臨床診療に用いられる  [2006-02-28]

Vagus nerve stimulation enters clinical practice as a promising supplementary therapy for treatment-resistant depression

迷走神経刺激は米国において薬物抵抗性のてんかんに対し9年間用いられてきたが、今回、治療抵抗性のうつ病に対する有望な補助的治療法として臨床診療に用いられようとしている。この治療法の認可を導いたある大規模スタディで、迷走神経刺激を施行された患者の半数が装置埋め込みの2週間後にスイッチを入れた。残りの半数の患者は装置を埋め込まれたがスイッチは入れなかった。3ヵ月後、スイッチを入れていなかった患者の装置のスイッチも入れた。全ての患者が必要に応じて他の薬物や治療法を継続した。1年後、装置を埋め込まれた患者と、スタディのために評価は受けたが参加しなかった患者を比較した。その結果、迷走神経刺激療法を受けた患者の約33%が有意な持続的な改善を認めたのに対し、薬物療法のみの患者におけるその割合は10%であった。この装置を用いることにより、電気けいれん療法を含む他の治療法が除外されることはなかった。

 

非定型抗精神病薬は、アリピプラゾールの低用量の錠剤および冷蔵の必要のない経口水剤の導入により、さらに広範囲の患者にとって使用しやすくなった [2006-02-28]

Atypical antipsychotics become convenient for larger groups of patients with introduction of low-dose tablet and nonrefrigerated liquid forms of aripiprazole

最近米国では、アリピプラゾールの低用量(2mg)の錠剤および冷蔵の必要のない経口水剤の導入により、非定型抗精神病薬の使用が様々な患者集団に用いられている。この2mgの錠剤は、特に統合失調症または双極性I型障害患者の忍容性を向上し、より精密に有効用量に到達させることができる。冷蔵不要な経口水剤は嚥下困難または錠剤の嚥下が困難な成人患者にとって非常に有用である。非定型抗精神病薬の中で、現在アリピプラゾールが唯一の部分的ドパミン作動薬である。

 

妊娠後期に選択的セロトニン再取込み阻害薬を内服した母親から生まれた新生児は持続性の肺高血圧のリスクが高い  [2006-02-21]

Newborns of mothers who took a selective serotonin reuptake inhibitor in late pregnancy have an increased risk of persistent pulmonary hypertension

妊娠後期に選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)を内服した母親から生まれた新生児は持続性の肺高血圧のリスクが高い、とNew England Journal of Medicine 2月9日号に掲載された。この米国のケースコントロールスタディでは、肺高血圧を有する新生児およびその母親377人とそれに匹敵するコントロールの女性および新生児836人を対象とした。肺高血圧を有する新生児のうち14人が妊娠20週以降にSSRIに暴露されており、それと比較しコントロール群におけるその人数は6人であった。妊娠中いずれの時期における他の抗うつ剤の使用も、妊娠20週より前のSSRIの使用も、リスクを上昇させなかった。この相関関係が確かであれば、妊娠後期に胎児がこの類の薬剤に暴露された場合には、約99%の新生児は肺高血圧を有さないであろうと予測される。筆者らは、患者と医師間における妊娠後期の治療に関する話し合いが向上することを願っている。

 

2つの新たなレビューによると、境界型人格障害の患者に対しては単一の治療法では特別に有効なものはないと結論付けられた [2006-02-21]

Two new reviews conclude that no single treatment is especially effective for patients with borderline personality disorder

2つの新たなレビューによると、境界型人格障害の患者に対しては単一の治療法では特別に有効なものはないと結論付けられた、とCochrane Database of Systematic Reviews 2006年第1版に掲載された。英国の研究者らは7つの心理学のスタディ(成人外来患者計262人)結果を解析し、その結果、dialectical行動療法で治療を受けた患者は通常の治療を受けた患者と比較し、自殺企図および自殺思考の回数が少ないことが明らかとなった。治療には個々人の心理療法、電話での指導、長期の集団療法、認知行動療法などが含まれた。心理解析療法ユニットの入院患者も社会的改善を示したようであった。どちらの治療法も複雑な性質のものであるため、筆者らは、治療は2〜3人の患者を超えた人数には向かないと結論付けている。ある薬物療法のレビュー(10の短期トライアル、入院/外来患者554人)では、抗うつ薬は病状改善の最良の機会を提供するが、結果は強固なものではなかったと述べている。筆者らは、抗精神病薬には臨床試験以外においての役割は現段階ではない、と結論付けている。

 

オピオイド拮抗薬nalmefeneは病的賭博に関連した衝動および行動を有意に軽減する  [2006-02-14]

The opioid antagonist nalmefene significantly reduces urges and behaviors associated with pathological gambling

オピオイド拮抗薬nalmefeneは病的賭博に関連した衝動および行動を有意に軽減する、とAmerican Journal of Psychiatry 2月号に掲載された。この4ヵ月間の米国のトライアルでは207人の患者をプラセボまたは3種類のうちいずれか用量(1日25、50、100 mg)のnalmefeneを内服する群に無作為に割り付けた。スタディ終了時点で、「かなり改善した」または「非常に改善した」と回答した者の割合は、1日25 mgのnalmefeneを内服した群(59%)においてプラセボ群(34%)よりも有意に高かった。1日25mg および50 mgのnalmefeneの内服により、賭博の思考、衝動、および行動は有意に軽減した。Nalmefeneのいずれの用量群においても脱落率はプラセボ群と同様であったが、実薬群のうち25 mg内服群におけるその割合が最も低かった。

 

選択的セロトニン再取込み阻害薬は外傷後ストレス障害の症状軽減に有効である [2006-02-14]

Selective serotonin reuptake inhibitors are effective in reducing symptoms of post-traumatic stress disorder

選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)は外傷後ストレス障害の症状軽減に有効である、との大規模メタ解析の結果が2006年Cochrane Database of Systematic Reviews第1版に掲載された。他のクラスの薬剤がこの疾患の患者に対し試みられたが、解析の可能な十分な数のレビューを有するのは唯一今回の薬剤のみである。このレビューでは、35トライアルの計4,597人のプラセボまたはSSRIで治療された患者を対象とした。これらのトライアルは全て14週間以内の短期のものであった。反応が良好だった者は実薬内服群の59%であったのに対し、プラセボ群では38%であった。最も有効だったのはパロキセチンであり、次にセルトラリンであった。薬物療法、心理療法、および薬物療法と心理療法の併用のトライアルをさらに行なうことで、 患者個々人の治療決定の質が高められるであろうと結論付けている。

 

うつ病のリスクに対する遺伝子の貢献度は男性より女性において有意に高く、これにはホルモンによるメカニズムが絡んでいる可能性がある  [2006-02-07]

The contribution of genetics to risk of depression is significantly higher in women than in men and may involve hormonal mechanisms

うつ病のリスクに対する遺伝子の貢献度は男性より女性において有意に高く、ある遺伝的な因子が一方の性においてのみ働いており他方では関与していない可能性がある、とAmerican Journal of Psychiatry 1月号に掲載された。今回の疫学的なスタディは、双生児を用いたこれまでで最も大規模な研究であり、米国およびスウェーデンの双生児約42,000人の生涯におけるうつ病のリスクを調査した。研究者らは、うつ病の遺伝性が女性では42%であるのに対し男性では29%であるとの結果を得た。筆者らは、この性差の一部は、性ホルモンレベルの変化のような(特に産褥期)、女性のみに存在する遺伝子の働きによるホルモン環境が原因の可能性がある、との仮説を立てている。

 

ある同じシグナル経路の欠損がアルツハイマー病とダウン症候群のようなある種の精神遅滞におけるシナプスの損傷を引き起こしている可能性がある [2006-02-07]

A defect in the same signaling pathway may cause synaptic deterioration in Alzheimer disease and some types of mental retardation such as Down syndrome

ダウン症候群においてきわめて重要なシナプス蛋白の傷害を引き起こしているPAK酵素シグナル経路の欠損が、アルツハイマー病などの痴呆における認知障害の原因でもある、とNature Neuroscience 1月15日号オンライン版に掲載された。研究者らは、中年のマウスのPAK酵素活性を阻害することにより、記憶障害と神経結合作成に係わる蛋白の欠失が生じることを見出した。ヒトにおいては同じ蛋白の量がアルツハイマー病やダウン症候群において有意に減少している。アルツハイマーのプラーク内に発見されたβ蛋白であるAb42のオリゴマーはマウスにおいてアルツハイマー病で認められたのと同様なPAK欠損を引き起こした。この結果から、アルツハイマー病の脳におけるPAKの欠損は認知障害を直接引き起こすのに十分であり、この結果から認知機能を高める新たな治療法が導かれる可能性がある。

 


 

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