うつからの回復に不可欠な脳内蛋白の発見により、抗うつ薬の効果のメカニズムへの理解が改善する可能性がある  [2006-01-31]

Discovery of brain protein that seems to be vital in recovery from depression may improve understanding of mechanisms underlying antidepressant effects

p11蛋白の研究により、うつと抗うつ剤の効果に関する分子学的なメカニズムへの理解が向上する可能性がある、とScience 1月6日号に掲載された。研究者らは、マウスにおいてセロトニン5-HT1Bがp11と相互作用することを発見したため、うつ病のマウスモデルおよびうつ病患者のp11レベルを研究したところ、健常者と比較し有意に低下していることを見出した。さらにマウスで行った研究では、p11の発現を増加させることによりうつ病の症状が軽減したが、p11の発現の無いマウスにおいてはうつ症状が持続した。加えて、三環系、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤、または電気けいれん療法のいずれも、ベースラインでp11の発現の低かったマウスにおいてp11のレベルを上昇させた。P11は、セロトニン信号を増幅するように働くセロトニン受容体を細胞表面に誘導するようである。

 

肥満、喫煙、飲酒、または他の薬物乱用による死亡のように回避可能な死亡の主要なマーカーは青年期後半から成人早期に存在している [2006-01-31]

Major markers for preventable deaths such as obesity, smoking, and alcohol or other substance abuse are present by late adolescence or early adulthood

肥満、喫煙、飲酒、または他の薬物乱用による死亡のように回避可能な死亡の主要なマーカーは、一般的には青年期後半から成人早期に存在していることから、これらのマーカーの一因となる心理学的または精神医学的疾患に対する介入はできる限り早期に始めるべきであることが示唆される、とArchives of Pediatrics and Adolescent Medicine 1月号に掲載された。研究者らは青年早期から追跡を続けている米国の若年成人14,000人以上のデータを解析した。対象者は定期的に、食事、運動不足、肥満、喫煙、薬物使用、大量飲酒、暴力、性と生殖に関する健康、および精神衛生に関するアンケートに回答した。ほぼ全ての人種および民族群において、食事、運動レベル、体重、喫煙、飲酒、違法薬剤使用、性行為感染症の確率は、成人期に近付くほど悪化した。さらに長期の傾向を調査するために、彼らは現在もフォローされている。

 

クエチアピンとリスペリドンの統合失調症に対する有効性は同等であるが、クエチアピンのほうが錐体外路症状の出現頻度が低いようである  [2006-01-24]

Quetiapine and risperidone show equivalent efficacy for schizophrenia but quetiapine appears to be associated with a lesser degree of extrapyramidal symptoms

ある一定の統合失調症患者に対するクエチアピンとリスペリドンの有効性は同等であるが、クエチアピンのほうが忍容性に優れている、とEuropean Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience 1月号に掲載された。ある小規模な(患者44人)12週間の無作為トライアルにおいて、顕著な症状のない患者を対象とした;主要評価項目としての有効性の測定はPositive and Negative Syndrome Scale (PANSS)スコアを用い、忍容性はSimpson-Angus Scale (SAS)および様々な検査測定の値をもとに行った。両治療群ともに総PANSSスコア、positive、 negative、および全般的なスコアは有意に改善した。クエチアピンのみがalogiaおよび感情鈍麻をベースラインと比較し改善した。クエチアピンで治療された患者はアカシジアやパーキンソニズムなどの錐体外路症状の発症率が有意に低く、抗コリン薬を必要とする患者数も同薬群において少なかった。

新たなスタディの結果、memantineは中等度から重度のアルツハイマー病の症状に対して少なくとも一年間は有効であることが示された [2006-01-24]

New study indicates that memantine is effective for at least one year against symptoms of moderate to severe Alzheimer disease

新たなスタディの結果、memantineは中等度から重度のアルツハイマー病の症状に対して少なくとも一年間は有効であることが示された、とArchives of Neurology 1月号に掲載された。今回のスタディは、2003年春にNew England Journal of Medicineに掲載され、米国においてmemantineの認可に導いた、252人を対象とした28週間の厳密なスタディの、オープンラベル拡大版である(前回プラセボを内服した患者にも実薬を投与した)。今回のスタディは175人を対象とし、さらに24週間期間を延長した:前回のスタディでは80人がプラセボを投与され、その他の者はmemantineを投与された。プラセボからmemantineに内服を変更された者は、日常生活動作能力および認知能力の低下速度が、前回の低下速度と比較し有意に遅延した。また、全体の能力や行動を評価するテスト(介護者が入力するものも含め)においても優位な有効性が認められた。Memantineを内服し続けた者は前回のスタディ期間に認められた薬剤の効果を維持した。

 

選択的セロトニン再取込み阻害薬の効果の一部は前頭葉および頭頂葉および辺縁系の一部の軸索濃度の増加による可能性がある  [2006-01-17]

Response to selective serotonin reuptake inhibitors may partly be due to increased axonal density in the frontal and parietal lobes and part of the limbic system

選択的セロトニン再取込み阻害薬の有効性の少なくとも一部は脳の重要な部位の軸索濃度の増加による、とJournal of Neurochemistry 1月号に掲載された。研究者らはfluoxetine、選択的セロトニン再取込み増強薬tianeptine、またはdesipramineをラットに4週間投与し、セロトニン刺激の解剖学的パターンを調査した。Fluoxetineおよびtianeptineは前頭葉および頭頂葉の皮質、一部の辺縁系の皮質および皮質下のセロトニン作動性軸索濃度を増加させたが、desipramineではそれは認められなかった。単に神経伝達効果ではなくむしろ解剖学的効果により、抗うつ剤が2〜3日で完全に受容体を調節する効果を有するにもかかわらず、臨床的な有効性を認めるには通常2〜4週間を必要とするのかが説明できる可能性がある。もしこれが確認できれば、今後の研究により軸索細胞増殖因子の効果を最適とする抗うつ剤治療期間が提示されるかもしれない。

 

若年または中年期にうつ病と診断された人々は冠動脈疾患を発症するリスクが高い [2006-01-17]

People diagnosed with depression in early or middle age are at increased risk for developing coronary heart disease

うつ病と診断された人々、特に25〜50歳に診断された者は将来的に冠動脈疾患を発症するリスクが高い、とAmerican Journal of Preventive Medicine 12月号に掲載された。スウェーデンの家族の冠動脈疾患データベースからうつ病による初回入院44,826件(男性19,620人、女性25,206人)を検索したところ、研究者らは1,916人が後に冠動脈疾患を発症したことを認めた。広範にわたるスウェーデンの住民票記録を組み合わせることにより、リスクを年齢、性別、地理的な地域、および社会経済的地位により計算した。全ての年齢および性別を通して、うつ病と診断された者は診断されなかった者より冠動脈疾患を発症する確率が1.5倍高かった。最も若年の年齢層である25〜39歳の群では、そのリスク比は約3であった。

 

Citalopram を使用したSTAR*D real-worlスタディの結果、慢性うつ病患者のうち初回治療中に寛解するのはわずか3分の1であることが示された  [2006-01-10]

STAR*D real-world study using citalopram suggests only about one third of chronically depressed patients achieves remission during initial treatment

米国の大規模スタディであるSTAR*D (うつ病軽減のための継続治療代替薬)の結果、citalopram療法で治療された慢性うつ病患者のうち寛解するのはわずか3分の1であることが示された、とAmerican Journal of Psychiatry 2006年1月号に掲載された。このreal-world outcome スタディでは精神科およびプライマリケアの施設で非精神病性うつ病の外来患者2,876人を登録し追跡調査した。80%近い患者が慢性または再発性の大うつ病および医学的精神学的な合併症を有していた。慢性、再発性いずれの患者も、治療により寛解した者または治療に対する反応が大であった者はわずか30%であり、彼らのほとんどは治療開始後8週までに明らかな反応を示した。白人、女性、有職者、または学歴か収入が高い者は寛解率が高かった。一方、他の障害(特に不安症または薬物乱用)を合併している者や全身性の身体的障害を有する者の寛解率は低かった。

 

小児がんを有する子供の親は一般的に心的外傷後ストレスを治療中に発症しそれはその後数年間持続する [2006-01-10]

Parents of children with cancer commonly develop symptoms of post-traumatic stress during treatment that can be significant for years afterward

小児がんを有する子供の親は一般的に心的外傷後ストレス症状を治療中に発症し、その後臨床的な心的外傷後ストレス障害に進行する可能性がある、とJournal of Clinical Oncology and the Journal of Family Psychologyに掲載された。米国の研究者らは最初の期間に、がんの治療を受けている小児の親を評価した。母親119人および父親52人中1人を除きすべてが心的外傷後ストレスの症状を有していた。次に小児がんの既往を有する青少年の両親98組を評価した(治療終了後平均5年)。子供の治療中よりも心的外傷後ストレスの症状は少なかったが、大部分の家庭においては、少なくともどちらかの親が中等度から重度の心的外傷後ストレスの兆候を有していた。同じ研究グループは以前のスタディにおいても、小児がんの既往を有する青少年の家庭の20%が少なくともどちらかの親が心的外傷後ストレス障害を有していることを見出している。

 


 

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