2006年の主な進歩 (ASCO)
  肺がんと禁煙
  高齢前立腺がん患者の生存期間
  たばこと子宮頸がん
  節煙と禁煙
  化学療法による心合併症の軽減

 12月5日のDOL NewsはAHA特集のため、Oncologyニュースは
 お休みさせていただきました。



2006年のがん領域における進歩の上位には、標的治療がいくつかの難治性がんに有効であることや、遺伝子検査により非小細胞肺がんの予後が予測できることが証明されたことなどが含まれる [2006-12-26]
Top oncology advances of 2006 include proof that targeted therapies are effective against several resistant cancers and a genetic test can predict prognosis of non-small cell lung cancer

2006年のがん領域における進歩には、ヒトパピローマウイルスに対するワクチンや治療後治癒する可能性の高いまたは再発しやすい早期非小細胞肺がん患者を予測する遺伝子検査が含まれる、とAmerican Society of Clinical Oncologyが発表した。いくつかの標的治療が難治性のがんに有効であった。ファーストライン治療としてtemsirolimusを使用することにより進行性のハイリスクな腎がんが改善し、sunitinibにより奏功率や無病生存率が改善した。トラスツズマブ治療にもかかわらず進行したHER-2陽性の乳がんを対象とした試験では、trastuzumabにlapatinibを加えることにより、トラスツズマブ単独よりも腫瘍の成長のコントロールが改善した。血液内科医らは、イマチニブに耐性の慢性骨髄性白血病患者の90%以上がdasatinib療法後には疾患の所見を認めなかったことを示した。最後に、限局性進行頭頸部がんに対し放射線療法にcetuximabを加えることにより、放射線単独療法と比較し、進行を遅延させ生存期間を延長することができた。

 
喫煙をする早期肺がん患者で治癒の可能性のある手術を施行された者の半分近くが、1年以内に喫煙を再開する [2006-12-26]
Nearly half of all smokers who undergo potentially curative surgery for early-stage lung cancer resume smoking within one year

喫煙をする早期肺がん患者で治癒の可能性のある手術を施行された者の半分近くが、1年以内に喫煙を再開する可能性がある、とCancer Epidemiology Biomarkers & Prevention 12月号に掲載された。診断前3ヵ月以内の喫煙に基づきニコチン依存性の高いと考えられる患者154人が研究に組み入れられた。術後3、6、12ヵ月にアンケートおよび唾液の検査を行った。その結果、患者の43%が術後のある時期に喫煙をし、12ヵ月後には37%が喫煙していた。術直後または当日にも喫煙を継続しており喫煙が楽しみで禁煙が困難な患者が、1年後にも喫煙を続けている確率が最も高かった。喫煙を再開した者の60%が術後2ヵ月以内に再び喫煙をし始めていた。筆者らは、これらの患者における術前後の禁煙を援助する努力を呼びかけている。

 
観察研究の結果、局所に限局した前立腺がんを治療された高齢者は治療されなかった者と比較し生存期間が長いことが示唆された [2006-12-19]
Observational study suggests that elderly men treated for localized prostate cancer live significantly longer than peers who are not treated

局所に限局した前立腺がんを治療された高齢者は治療されなかった者と比較し生存期間が有意に長い、とJournal of the American Medical Association 12月13日号に掲載された。この観察研究において研究者らは、診断後1年以上生存した男性44,630人(ベースライン時の年齢65〜80歳)のデータを解析した。治療群(32,022人)は診断後6ヵ月以内に根治的前立腺摘除術または放射線療法を受けた。ホルモン療法のみを受けた患者は除外された。12年間のフォローアップ期間中に積極的な治療を行った群においては7,639人(23.8%)が、経過観察群においては4,643人(37%)が死亡し、積極的な治療により死亡のリスクは31%低下した。筆者および論評者は、初期治療の治療方針決定過程の選択バイアスを取り除くのは不可能であることに言及している。現在進行中の無作為化トライアルにより、早期の低−中悪性度の高齢前立腺がん患者の治療方針決定過程を改善するのに有用なデータが示されるであろう。

 
喫煙とヒトパピローマウイルスへの高度の感染が同時に存在することにより子宮頸がんの発症リスクが有意に増加する [2006-12-19]
Cigarette smoking and concurrent infection with high levels of human papillomavirus significantly increase risk for development of cervical cancer

喫煙とヒトパピローマウイルスへの高度の感染が同時に存在することにより子宮頸がんのリスクが有意に増加する、とCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 11月号に掲載された。スウェーデン人女性105,760人のパップスメアのデータを評価した結果、499人の上皮内子宮頸がんの女性とコントロール499人が同定された。喫煙歴および子宮頸がんと最も関連のあるウイルス株であるHPV-16のウイルス量が調べられた。喫煙をし最初の検査でウイルス量の多かった女性は、喫煙はするがウイルスの陰性の女性と比較し、がんのリスクが27倍高かった。ウイルスが陽性で喫煙をする女性はウイルスが陰性で喫煙をする女性と比較しリスクが14倍高かった。最後に、ウイルス量の多い非喫煙女性はウイルス陰性の非喫煙者よりもリスクが6倍高かった。筆者らは、ウイルス陽性の喫煙者を注意深く監視する一方で、ウイルス感染と喫煙の分子的相乗効果に関して考えられるメカニズムを調べるさらなる研究を行うことを強力に推進している。

 
一日の喫煙本数を半減した喫煙者のがんおよび死亡のリスクは大量喫煙を継続している者と比較し減少しない [2006-12-12]
Smokers who halve the number of cigarettes smoked daily do not reduce cancer and mortality risks compared with continuing heavy smokers

一日の喫煙本数を半減した成人のがんや早期死亡のリスクは大量喫煙を継続している者と比較し減少しない、とTobacco Control誌12月号に掲載された。ノルウェーの研究者らは51,000人余りの男女(ベースラインの年齢20〜34歳、平均フォローアップ期間20年以上)を追跡調査した。参加者は全く喫煙をしたことのない者、過去の喫煙者、喫煙をやめた者(2回目の調査より前に禁煙)、中等度喫煙者(1日15本以上、2回目の調査までに半分以下に節煙)、大量喫煙者(1日15本以上)に分類された。その結果、男性においては節煙した者の喫煙に関連したがん死は継続大量喫煙者と比較し有意に減少しなかった。女性で節煙した者は実に大量喫煙者よりも総死亡率が高かった。筆者らは、節煙は禁煙へ導くには役立つかもしれないが継続しているのでは有益性は認められない、と結論付けている。

 
各用量あたりの点滴時間を6時間以上に延長することで、アントラサイクリン系薬剤による心合併症のリスクが軽減する可能性がある [2006-12-12]
Increasing the duration of infusion of each dose to six hours or longer may reduce risk for heart complications associated with anthracycline drugs

各用量あたりの点滴時間を6時間以上に延長することで、アントラサイクリン系薬剤による心合併症のリスクが軽減する可能性がある、とCochrane Database of Systematic Reviews 第4版(2006)に掲載された。5つのスタディ(患者計557人)を調査した結果、成人患者において点滴時間を延長することにより点滴時間が6時間未満のものと比較し心不全のリスクが75%近く減少することが示された。いくつかのスタディにおいては、点滴時間を延長することにより重症度の低い心臓関連の副作用のリスクもまた減少した。点滴時間による腫瘍縮小効果や生存率の変化はなかった。小児において得られたエビデンスからは、薬剤投与時間による心合併症や早期発症動脈硬化の明らかなリスクの軽減は認められなかった。

 
 


 

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