乳がんに関して国際的に用いられている5つの遺伝子発現プロファイルを比較した結果、4つは同様の予後予測を示し、おそらく同様の分子イベントを表しているであろうことが示された、とNew
England Journal of Medicine 8月10日号に掲載された。研究者らは、無再発生存率および全生存率のわかっている295の腫瘍検体一式のデータについて一致性を調査した。最も一致の認められた3つの予測因子のうち2つは現在多くの臨床試験で用いられている一般的な市販のアッセイであった。興味深いことに2つの市販のアッセイはたった一つの遺伝子しかオーバーラップしていないにもかかわらず、それらは80%の確率で一致した。
ヒト卵巣がんを有するマウスにリポソームを用いて導入されたshort interfering RNAは重要な細胞内酵素活性を有効に抑制し腫瘍重量を有意に減少させた、とClinical
Cancer Research 8月15日号に掲載された。3種類のヒト卵巣がん細胞株を有するマウスをfocal adhesion kinase不活性化RNAまたは対照RNAを含むかまたは何も含まないリポソームで3〜5週間処理した。一部のマウスは不活性化RNAとドセタキセルを含むリポソームで処理された。酵素不活性化リポソームで処理されたマウスの平均腫瘍重量は対照のマウスと比較し44〜72%減少した。RNAとドセタキセルを組み合わせることにより腫瘍重量は94〜98%減少した。これらの結果はドセタキセルおよびシスプラチンの無効な卵巣がん細胞株においても同様に認められた。同様の酵素は結腸、乳房、甲状腺、および頭頸部がんにおいても過剰発現がみられる。
乳がんの女性のデータのA U.S.解析の結果、化学療法に伴う合併症はこれまで推定されていたよりも有意に多く認められる可能性があることが示唆された、とJournal
of the National Cancer Institute 8月16日号に掲載された。最近の記録を評価した結果、化学療法を施行された女性の16%において、貧血、脱水、及び白血球減少などの救急処置または入院を要するような重症の副作用が認められた。重症の副作用の発現率は、初回診断後の化学療法施行期間が一ヵ月増加するごとに20%上昇した。このスタディは、化学療法の合併症に対する薬物療法が容易に可能となってから、65歳未満の女性に対する静脈内化学療法の重症副作用を解析した初めてのものである。
子宮内膜がん女性の約50分の1がLynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)の遺伝子変異を有し、この変異はまた卵巣や胃がんのリスクも上昇させるとCancer
Research 8月1日号に掲載された。この米国のスタディでは、腫瘍のマイクロサテライト不安定性の検査を受けた子宮内膜がん女性543人を対象とした。118人の陽性患者のうち遺伝子型解析において変異を示したのは9人(1.8%)であった。免疫組織化学的な予備スクリーニングによりマイクロサテライト不安定性を示さない変異の保有者が検出された。患者の変異のスクリーニングの価値は明らかであった。つまり、変異を有する者10人中7人は既存の家族歴や年齢などの診断基準に基づく方法では遺伝子型が分類できなかった。変異を発見された女性10人の近親者21人の遺伝子型を解析した結果、さらに10人がLynch症候群の変異を有していることがわかった。
術後化学療法と放射線療法の併用は膵がん患者の生存率を有意に改善する可能性がある、とBritish Journal of Cancer 8月号に掲載された。ある国際トライアルで、毎日の放射線照射を6週間施行すると同時に週に2回のゲムシタビン投与を行い、その後に維持量のゲムシタビン投与を2サイクル施行する方法を評価した。46人の患者のうち70%がリンパ節転移を伴った進行膵がん(T3/T4)を有していた。患者全体の生存期間中央値は18.3ヵ月であり、それに対し手術のみの患者の生存期間中央値は11ヵ月であった。1年生存率は69%であり3年生存率は24%であった。筆者らは、この結果は生存率の延長のみでなく局所病変のコントロールも改善したことを反映している可能性があると述べている。さらに、低用量のゲムシタビンを使用したため毒性の低い治療法であることが示された。
イマチニブおよび他のチロシンキナーゼ阻害薬は直接的に左室機能障害を引き起こし、ある重要な心保護酵素の阻害を介し心不全さえも発症させる可能性がある、とNature
Medicine 7月23日号に掲載された。マウスおよび培養心筋細胞の研究の結果、イマチニブの標的分子であるAbelsonチロシンキナーゼは心筋細胞の維持に必須であることが示された。この研究はあるがんセンターで慢性骨髄性白血病の患者10人がイマチニブ療法開始後2〜14ヵ月後に重症心不全を発症した後に開始された。ベースライン時の心機能評価では全員正常であった。研究者らはこの結果から、薬剤がどのチロシンを阻害するかを詳細に検出することにより、このクラスの新たな薬剤の心毒性の解析がなされるであろうと期待している。新たなクラスの薬剤により治療された症例を集める国際患者登録が計画されている。
イマチニブ抵抗性の様々な型の慢性白血病を引き起こすJAK2伝達経路の二番目の変異の発見により新たな薬物療法が導き出される、とPublic Library
of Science Medicine 7月18日号に掲載された。JAK2およびMPLの二つの変異がイマチニブ抵抗性の骨髄線維症、真性多血症、および本態性血小板血症の原因のようである。両遺伝子ともに同じ成長刺激伝達経路に必須であるため、経路の発現を阻害する研究はどちらかの変異により発症した症例に対し有効な可能性がある。上記の3タイプの慢性白血病ではイマチニブ活性の標的であるフィラデルフィア染色体は認められない。これら2つのどちらかの遺伝子を過剰発現させたマウスの研究では、人間の疾患に非常に類似した疾患を発症させることができる。このような動物モデルが可能性のある治療薬の検査にとって有用であることが明らかになるかもしれない。
乳管液中の悪性細胞を同定する新たな方法はがん検索の感度が顕微鏡的細胞診断の2倍である、とClinical Cancer Research 6月1日号に掲載された。この新たな検査は5〜10個の重要な遺伝子の過剰なメチル化を検知する。過剰にメチル化された細胞のパーセンテージをがんが示唆されることを示す閾値と比較する。高リスクの女性または乳がんの女性の乳管液は乳管洗浄により採取した。細胞病理学者は21人中7人(33%)のがん症例を正確に検出し、がんでない検体の99%を陰性と診断した。新たな検査法のがんの検出率は71%(21検体中15例)であり、がんでない検体の76例中63例(83%)を陰性と診断した。他の研究グループが最も広範な乳管サンプリング法を確実にする方法を模索する一方、この研究グループは、この技術が細胞診により診断可能な他のがんにも有用であるかどうかを研究するだろう。