静脈血栓塞栓症の治療としての未分画ヘパリンの定量皮下投与は低分子ヘパリンの皮下投与と同等に有効かつ安全である、とJournal
of the American Medical Association 8月23日号に掲載された。カナダの主導により施行されたこのスタディでは、静脈血栓塞栓症の患者を定量未分画ヘパリンまたは低分子ヘパリンを投与する群に無作為に割り付けた。未分画ヘパリン群において凝固系のモニタリングは施行されず、両群ともに約70%が外来患者であった。全ての患者はワーファリンを3ヵ月間投与された。血栓塞栓症の再発は、未分画ヘパリン群で345人中3.8%、低分子ヘパリン群で352人中3.4%であった。重大な出血は二群間で差はなかった。編集局は、このデータは興味深いが、大規模二重盲検臨床試験で結果を確認するまでは、凝固能のモニタリングをせずに未分画ヘパリンの使用を推奨するには不十分であると考えている。
飽和脂肪酸を多く含む食事を一回するだけで、高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールの動脈内皮抗炎症作用を一過性に低下させる可能性があるが、多価不飽和脂肪酸を多く含む食事はその抗炎症活性を増強する可能性がある、とJournal
of the American College of Cardiology 8月15日号に掲載された。オーストラリアの研究者らは健常人のボランティア(18〜40歳)に盲検化の要領で1ヵ月ずつ2種類の食事を摂らせた。食事は、一方が飽和脂肪酸(ココナッツオイル)を多く含み、他方は多価不飽和脂肪酸(サフラワーオイル)を多く含む以外は同一であった。全ての食事は参加者が体重1kgあたり1gの脂肪を摂取するように用意された。食後の検査の結果、飽和脂肪酸の多い食事はHDLコレステロールの血管保護能を低下させるのに加え血管反応性を障害した。
アトルバスタチンは心疾患の既往がなくコレステロールが軽度上昇した患者の二度目の脳卒中のリスクを有意に低下させる、とNew
England Journal of Medicine 8月10日号に掲載された。この、強力な脂質低下療法による脳卒中予防の国際スタディ(international
Stroke Prevention by Aggressive Reduction of Cholesterol Levels :SPARCL)は、脳卒中または一過性脳虚血発作発症から6ヵ月以内の患者4,731人を対象とした。患者はアトルバスタチン80mgまたはプラセボを内服した(平均追跡期間5年)。アトルバスタチンはプラセボと比較し二度目の脳卒中のリスクを16%低下させ、虚血性脳卒中のリスクを22%低下させた。アトルバスタチンを内服した患者ではまた、主要な冠動脈イベントのリスクが35%低下した。二度目の脳卒中を解析した結果、出血性脳卒中はアトルバスタチン内服群(2.3%)でプラセボ(1.4%)よりもやや多かった。出血性脳卒中による死亡は二群間で差がなかった。
American College of Cardiologyの新たなガイドラインによると、心房細動の抗凝固療法の開始を決定する際には脳卒中の危険因子を主な決定因子とすべきであるとのことである。2001年のガイドラインでは方針決定の際にいくつかの因子(年齢、性別、心疾患リスク、および合併症)を使用することを推奨していた。新たなガイドラインでは、脳卒中の危険因子を有さない患者においては1日81〜325mgのアスピリン内服を推奨している。中等度の危険因子(75歳以上、高血圧、心不全、左室収縮機能不全、または糖尿病)を一つ有する患者においては、アスピリンまたはワーファリンを推奨している。ワーファリンは高危険因子(脳卒中の既往、虚血性脳虚血発作、塞栓症、または人工弁)のいずれかを有する者、または中等度の危険因子を2つ以上有する者に推奨される。全体的な優先すべき治療としては心拍コントロールに引き続き抗凝固療法、そして可能であれば洞調律化があげられた。
新たなガイドラインは、医師らが各々の患者において、ペースメーカーや植込み型除細動器に対し、勧告やリコールに従うべき最も良い時期を決定するのに役立つだろう、とJournal
of the American Medical Association 7月26日号に掲載された。この決定時期解析モデルにおいて研究者らは、即座にデバイスを交換するかフォローアップを継続するかを決定するのに際して可能性のある結果を考慮した。その項目にはデバイス植込みの適応、デバイス故障後の予測される経過、勧告またはリコールの情報に基づくデバイスの故障率、およびデバイス交換手技による死亡率が含まれた。筆者らは、勧告に基づくデバイスの交換は正当ではなくしばしばフォローアップを継続するよりもリスクが高いとの結論に達した。リコールされたデバイス交換の決定は主に、デバイスの故障率、患者のデバイスに対する依存の程度、およびデバイス交換により予測される死亡率に基づくべきである。
冠動脈疾患のリスクのある患者を検出するのにC反応性蛋白のような因子をリスクの層別化に追加することは患者に有意に有益ではないようである、とArchives
of Internal Medicine 7月10日号に掲載された。研究者らは1987〜1989年の時点で45〜74歳であり現在も追跡されている成人15,792人における19の新たな生化学マーカーを評価した。C反応性蛋白やビタミンB6
などのいくつかの新たなマーカーは冠動脈疾患と有意に関連があった。しかし、5年以内に疾患を発症した患者と発症しなかった者との比較で、これらのマーカーで評価したリスクスコアがより高い可能性があるかをそれぞれのマーカーで検討した結果、ほとんどのマーカーは医師らの冠動脈疾患予測能を有意に増強しなかった。編集者は、既存の危険因子を修正することに綿密な注意を払った方が、より多くのマーカーでスクリーニングするよりも患者に利益を与えるであろうと述べている。
β1アドレナリン受容体遺伝子のある一般的な亜型を検出することにより、医師がβ遮断薬治療により利益を受ける心不全患者を検出できる可能性がある、とProceedings
of the National Academy of Sciences 7月14日号に掲載された。ある治験薬の研究で、研究者らは、β遮断薬を内服し2つのアルギニン(Arg-389)亜型を有する患者の死亡率が38%低下したことを示した。さらに、これらの患者の入院および死亡の合計は34%低下した。他の一般的な亜型であるグリセリン(Gly-389)はプラセボと比較しβ遮断薬に対する反応に有意差はなかった。白人およびアフリカ系米国人の患者を対象にしたさらなる解析の結果、この受容体のジェノタイプのみがβ遮断薬への反応に関係しており人種や民族には関係がなかった。