痴呆の早期発見への努力 
  癲癇と統合失調症 
  高齢者に対するアスピリン投与 
  うつ病と心疾患 
  興奮状態に対するコントロールの選択肢 (APA2005) 
  双極性うつ病治療の比較 (APA2005) 
  注意欠陥/多動性障害の性差 (APA2005) 
  認知機能と統合失調症 (APA2005) 
  うつ病と不眠症の合併の新たな治療 (APA2005) 
  高齢者の不安とうつ病 (APA2005) 

6月7日のPsychiatry Newsは、APA特集のため、6題となっております。



健常な高齢者に対する陽電子放射断層撮影により、痴呆の発症のマーカーである海馬の糖代謝減少を発見できる可能性がある [2005-06-28]

Positron emission tomography (PET) of normal elderly people may detect reduced glucose metabolism in hippocampus that is marker for development of dementia

陽電子放射断層撮影により健常高齢者の海馬の糖代謝減少が発見でき、これは痴呆発症のマーカーであるようだ、とAlzheimer's Association International Conference on Prevention of Dementiaで発表された。米国の研究者らは健常な高齢者53人(平均年齢67歳、50〜84歳)を10〜24年間追跡調査し、計2〜3回撮影を行った。研究終了時に6人がアルツハイマー病、19人が軽度の認知障害と診断された。ベースライン時の糖代謝計測により感度83%でアルツハイマー病を、79%で軽度認知障害を予測できた。フォローアップの撮影の予測度も同様であった。このカンファランスで強調されたことは、早期に代謝低下を発見することにより、より良い治療が可能となるのみならず明白な痴呆を予防できる可能性もあることである。

 

発作性障害の既往を有する人々は統合失調症または統合失調症様精神障害を発症するリスクが高い [2005-06-28]

People with a history of seizure disorder are at increased risk for developing schizophrenia or schizophrenia-like psychosis

発作性障害の既往を有する人々は統合失調症または統合失調症様精神障害を発症するリスクが高い、とBritish Medical Journal オンライン版6月16日号に掲載された。1950〜1987年にデンマークで生まれた人々227万人を対象としたデンマークの研究である。本人と家族の発作性障害および精神障害の既往歴を調査し、本人を25年間監視した。その結果、発作性障害の既往を有する者は統合失調症発症率および統合失調症様精神障害を発症するリスクが、それぞれ一般集団の2.5倍および3倍であった。リスクに男女差はなかったが年齢とともに上昇した。癲癇および精神疾患の家族歴は精神疾患の有意なリスクファクターであった。しかし発作性障害は精神障害の家族歴を有さない者により多く認められた。筆者らは、この2種類の障害が遺伝子的または環境的リスクファクターを両者ではないにしてもどちらかを共有している可能性がある、と述べている。

70歳以上の人々に対する冠動脈疾患予防のための低用量アスピリン投与の純利益は、出血関連の副作用のため帳消しとなる [2005-06-14]

Therapies based on investigational devices will lead to entirely new options in the near future for patients with treatment-resistant depression

70歳以上の人々に対する冠動脈疾患予防のための低用量アスピリン投与の純利益は出血関連の副作用のため帳消しとなる、とBritish Medical Journal 3月21日号に掲載された。冠動脈疾患を有さない70〜74歳のオーストラリア人男女20,000人を対象とした疫学調査の結果、アスピリンによる心血管イベント減少の利益は消化管および脳出血のため帳消しとなることが示された。筆者らは臨床試験において、様々な年代の高齢者に対する低用量アスピリンの価値を確立しアスピリンの有効性が最も認められる人々を見極める必要があると論じている。

 

うつ病は心疾患患者に多く認められ、ある種の降圧薬はうつ病のきっかけになったり増悪させたりする [2005-06-14]

Standard interpersonal psychotherapy modified to target complicated grief is more effective than standard therapy for depression

ベータブロッカーはカルシウム拮抗薬と比較しうつ症状を引き起こしたり増悪させたりする、とPsychosomatic Medicine 5-6月号に掲載された。心疾患患者におけるうつ病を有する者の割合は3分の1にも上る可能性が示唆され、また気分障害は心血管疾患の強力な危険因子であるため、米国の研究者らは、International Verapamil SR-Trandolapril(INVEST)研究のデータを解析し、カルシウム拮抗薬またはベータブロッカーを主体とした降圧療法のうつ病に関する違いを調査した。両群ともに必要に応じてアンジオテンシン変換酵素阻害薬を使用した。2,317人のサブ解析群(約半分が女性、大部分が65歳以上)において、自己申告による気分はベラパミル群で改善したがアテノロール群では改善しなかった。またこの差はうつ病の既往や心疾患の種類などで補正しても依然として認められた。

Aripiprazoleの筋肉内投与は双極性障害の急性躁病および統合失調症における興奮状態に対する緊急の対処法として有望である [2005-06-07]

Intramuscular aripiprazole shows promise as an emergency option for agitation in patients with acute mania and in patients with schizophrenia

非定型抗精神病薬aripiprazoleの筋肉内投与は、双極性障害の急性躁病および統合失調症における興奮状態に対する緊急の対処法として有望であることを示した2つの演題が、American Psychiatric Association学会で発表された。2つの二重盲検試験の一次有効性評価は、ベースラインと薬物投与後2時間のPositive and Negative Syndrome Scale (PANSS) Excited Component (PEC)スコアの変化を用いて行った。急性躁病の患者におけるaripiprazoleの効果をロラゼパムおよびプラセボと比較した。両薬剤ともにプラセボより有意に有効であり、有効度は両者間で差はなかった。急性統合失調症患者を対象とした2回目のトライアルではaripiprazoleをハロペリドールおよびプラセボと比較した。2つの実薬の疾患改善度はほぼ同等であった。両演題ともにaripiprazoleは痴呆を有するこれらの高齢患者では死亡のリスクが上昇することが明らかとなっているため使用すべきではない、と言及している。

 

双極性うつ病に対しオランザピンとfluoxetineの併用はlamotrigineよりも有効である [2005-06-07]

Combination of olanzapine and fluoxetine appears to be significantly more effective for bipolar depression than lamotrigine

双極性うつ病の治療法としてオランザピンとfluoxetineの併用をlamotrigineと直接比較した初めてのトライアルの結果、併用療法はうつおよび躁症状両方に対する有効度が大であることが示された、と American Psychiatric Association学会で発表された。併用療法はまた、lamotrigineよりも効果発現が早かった。オランザピンとfluoxetineの併用療法は米国において唯一承認されている急性双極性うつ病に対する薬剤であるが、双極性躁病および双極性障害の維持療法のための薬剤とはされていない。一方、lamotrigineは気分障害エピソードの発症を遅らせるための維持療法に使用されてきた。今回の7週間のトライアルでは重大副作用がlamotrigineでは5.4%に発生し、一方併用療法では1.0%であった。しかし、体重増加、コレステロールおよび中性脂肪の上昇などの副作用は併用療法に多く認められた。

注意欠陥/多動性障害の女性患者は男性患者よりもatomoxetineによる情動症状の改善度が大である [2005-06-07]

Women with attention deficit hyperactivity disorder achieve greater improvement in emotional symptoms than men when treated with atomoxetine

注意欠陥/多動性障害の成人患者では、女性の方が男性よりもatomoxetineによる情動症状の改善度が大であるようだ、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。女性はベースラインの時点で、解体や衝動性などのいずれの指標においても男性よりも障害されていたため、この結果は非常に重要である。10週間にわたるスタディ終了時点で、Conner’s adult ADHDスケールまたはWender-Reimherr adult スケールで評価した症状改善度に男女差は認められなかった。しかし、Wender-Reimherrスケール(イライラ度、周期的うつ、ストレス処理能力の欠如などの要素で測定)で評価した情動障害に関しては、男性よりも女性により改善が認められた。プラセボと比較した実薬の有効性はすべての患者において認められたが、その度合いは女性の方が大であった。うつ病、不安症、および他の精神疾患を有する者はスタディからは除外した。

 

統合失調症患者に対するクエチアピンおよびリスペリドン投与により全体的な認知機能や生活技能能力が改善する [2005-06-07]

Quetiapine and risperidone are shown to improve overall cognitive function and social skills performance for patients with schizophrenia

統合失調症患者に対するクエチアピンおよびリスペリドン投与は2ヵ月という短期間で全体的な認知機能や生活技能能力を改善する、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。クエチアピンは米国で近年、双極性I型障害に伴う急性躁病エピソードおよび統合失調症に対し認可された。今回の研究は統合失調症患者を対象に、2種類の非定型抗精神病薬のいずれかを8週間投与する二重盲検無作為試験であり、医師が症状および副作用に応じて投与量を調整できるようにした。記憶、言語の流暢度、実行能力、および生活技能能力に基づいた測定などの認知機能評価を、ベースラインおよびスタディ終了時点に施行した。両薬剤投与群ともに認知機能全体の改善を認め、薬剤間に差はなかった。両群ともに、高度実行能力の改善が認められ、生活技能能力が向上した。

Fluoxetineに補助的にeszopicloneを投与することによりうつ病と不眠を合併する患者の睡眠と日中機能尺度両者が改善する [2005-06-07]

Eszopiclone given as adjunct to fluoxetine for patients with coexisting depression and insomnia improves both sleep and daytime function measures

Fluoxetineに補助的にeszopicloneを投与することによりうつ病と不眠を合併する患者の睡眠と日中機能尺度両者が改善する、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。新規発症の大うつ病と不眠を合併しfluoxetineを内服している患者を無作為に割り付け、eszopicloneまたはプラセボを8週間内服させその後fluoxetineのみを2週間内服させた。補助療法期間中にeszopiclone群では、入眠障害および合計睡眠時間に有意な改善が認められ、さらに、覚醒、集中力、身体的な幸福感などの日中の尺度も有意に改善した。スタディ最後の2週間のfluoxetineのみ内服する期間に、eszopicloneを内服していた者に不眠のリバウンドは認められなかった。患者の自己申告によるうつ病スコアはプラセボよりeszopiclone群において改善が認められたが、有意差は認められなかった。

 

Duloxetineは高齢うつ病患者の精神的身体的不安症状を有意に軽減する [2005-06-07]

Duloxetine can significantly reduce both psychic and somatic symptoms of anxiety in elderly patients with depression

Duloxetineは高齢うつ病患者の精神的身体的不安症状をわずか1週間で有意に軽減する、とAmerican Psychiatric Association学会で発表された。この8週間のスタディでは65歳以上の患者をduloxetineまたはプラセボ群に割り付けた。年齢で解析したところ、75歳未満の患者においてはduloxetineによりプラセボと比較し精神的身体的不安症状が有意に改善した。75歳以上の患者においては結果がやや異なっていた。彼らの精神的不安スコアは有意に改善したが、身体的不安症状に関してはプラセボと比較し有意ではない改善が認められたのみであった。いずれの年齢においてもduloxetineの忍容性は高く、薬の副作用による服薬中止率には両群間で差はなかった。発表者は、うつ病や不安症などの合併症を有する高齢者は自殺のリスクが高いため、これらを軽減することは特に重要であると述べている。

 


 

DOLについて - 利用規約 -  会員規約 - 著作権 - サイトポリシー - 免責条項 - お問い合わせ
Copyright 2000-2025 by HESCO International, Ltd.