陽電子放射断層撮影により健常高齢者の海馬の糖代謝減少が発見でき、これは痴呆発症のマーカーであるようだ、とAlzheimer's
Association International Conference on Prevention of
Dementiaで発表された。米国の研究者らは健常な高齢者53人(平均年齢67歳、50〜84歳)を10〜24年間追跡調査し、計2〜3回撮影を行った。研究終了時に6人がアルツハイマー病、19人が軽度の認知障害と診断された。ベースライン時の糖代謝計測により感度83%でアルツハイマー病を、79%で軽度認知障害を予測できた。フォローアップの撮影の予測度も同様であった。このカンファランスで強調されたことは、早期に代謝低下を発見することにより、より良い治療が可能となるのみならず明白な痴呆を予防できる可能性もあることである。
発作性障害の既往を有する人々は統合失調症または統合失調症様精神障害を発症するリスクが高い、とBritish
Medical Journal オンライン版6月16日号に掲載された。1950〜1987年にデンマークで生まれた人々227万人を対象としたデンマークの研究である。本人と家族の発作性障害および精神障害の既往歴を調査し、本人を25年間監視した。その結果、発作性障害の既往を有する者は統合失調症発症率および統合失調症様精神障害を発症するリスクが、それぞれ一般集団の2.5倍および3倍であった。リスクに男女差はなかったが年齢とともに上昇した。癲癇および精神疾患の家族歴は精神疾患の有意なリスクファクターであった。しかし発作性障害は精神障害の家族歴を有さない者により多く認められた。筆者らは、この2種類の障害が遺伝子的または環境的リスクファクターを両者ではないにしてもどちらかを共有している可能性がある、と述べている。
70歳以上の人々に対する冠動脈疾患予防のための低用量アスピリン投与の純利益は出血関連の副作用のため帳消しとなる、とBritish
Medical Journal 3月21日号に掲載された。冠動脈疾患を有さない70〜74歳のオーストラリア人男女20,000人を対象とした疫学調査の結果、アスピリンによる心血管イベント減少の利益は消化管および脳出血のため帳消しとなることが示された。筆者らは臨床試験において、様々な年代の高齢者に対する低用量アスピリンの価値を確立しアスピリンの有効性が最も認められる人々を見極める必要があると論じている。
ベータブロッカーはカルシウム拮抗薬と比較しうつ症状を引き起こしたり増悪させたりする、とPsychosomatic
Medicine 5-6月号に掲載された。心疾患患者におけるうつ病を有する者の割合は3分の1にも上る可能性が示唆され、また気分障害は心血管疾患の強力な危険因子であるため、米国の研究者らは、International
Verapamil SR-Trandolapril(INVEST)研究のデータを解析し、カルシウム拮抗薬またはベータブロッカーを主体とした降圧療法のうつ病に関する違いを調査した。両群ともに必要に応じてアンジオテンシン変換酵素阻害薬を使用した。2,317人のサブ解析群(約半分が女性、大部分が65歳以上)において、自己申告による気分はベラパミル群で改善したがアテノロール群では改善しなかった。またこの差はうつ病の既往や心疾患の種類などで補正しても依然として認められた。
双極性うつ病の治療法としてオランザピンとfluoxetineの併用をlamotrigineと直接比較した初めてのトライアルの結果、併用療法はうつおよび躁症状両方に対する有効度が大であることが示された、と
American Psychiatric Association学会で発表された。併用療法はまた、lamotrigineよりも効果発現が早かった。オランザピンとfluoxetineの併用療法は米国において唯一承認されている急性双極性うつ病に対する薬剤であるが、双極性躁病および双極性障害の維持療法のための薬剤とはされていない。一方、lamotrigineは気分障害エピソードの発症を遅らせるための維持療法に使用されてきた。今回の7週間のトライアルでは重大副作用がlamotrigineでは5.4%に発生し、一方併用療法では1.0%であった。しかし、体重増加、コレステロールおよび中性脂肪の上昇などの副作用は併用療法に多く認められた。