遺伝子操作により早発および後発アルツハイマー病を発症しやすくしたマウスに対する抗βアミロイド抗体の心室内単回注入は、脳におけるアミロイドの蓄積および全体の炎症を減少させたとAmerican
Association of Neurological Surgeons学会にて発表された。抗体の心室内単回注入により、比較的病期の進行したマウスにおいても、脳内のアミロイド量は約70%減少し炎症も減少した。過去に類似の抗体を注射全身投与した際に認められた髄膜脳炎や血管周囲性出血などの重症合併症の兆候は認められなかった。
4歳時に両親から感情に対する養育や認知機能に対する刺激を受けた子供は学校でいじめをする確率が有意に低いが、一日のテレビを見る時間が増えるほどそのリスクは急激に増大するとArchives
of Pediatrics and Adolescent Medicine 4月号に掲載された。米国の研究者らは、いじめの予測因子となる3つの可能性、すなわち、感情に対する両親の養育、認知機能の刺激、およびテレビの視聴量と6〜11歳までのいじめ行為の関係についての国の長期調査において、1,266人の4歳児を評価した。筆者らは、いじめ行為は認知機能および感情の欠如に関連している可能性があるため、医師は親に対して、学校へ行く前の子供に対する向社会的技術(社会に適合するための能力)を向上させる方法を助言する必要がある、と結論付けている。
初回精神病エピソードに対し非定型抗精神病薬を使用された統合失調症患者の脳容積の変化は、従来型の抗精神病薬を使用された患者のそれよりも少ない、とArchives
of General Psychiatry 4月号に掲載された。新たに診断された患者計161人をハロペリドールまたはオランザピン投与群に無作為に割り付け、ベースライン、12、24、52、および104週後に神経認知テストおよび核磁気共鳴画像で評価した;合計の追跡期間は5年間であった。条件を一致させた健常なボランティア58人を対照とした。その結果、オランザピン群の灰白質容積は健常人と同等であったのに対し、ハロペリドール群の脳容積は過去に報告された統合失調症患者における脳容積と同程度に減少していた。筆者らは、脳容積と長期の神経認知機能経過に関連が観察されていることから、非定型抗精神病薬は疾患の進行の原因となる病態に影響する可能性がある、と結論付けている。
新たな薬剤である注射型naltrexoneの月一回投与はアルコール依存症患者の長期治療として有望である、とJournal
of the American Medical Association 4月6日号に掲載された。6ヵ月間の二重盲検試験において、自発的に飲酒をしているアルコール依存症患者627人を長期作用型naltrexone
380mg(205人)あるいは190mg(210人)、またはプラセボ(209人)の毎月の注射と12項目からなる低強度の精神科的治療の組み合わせを受ける群に無作為に割り付けた。プラセボ群と比較しnaltrexone
380mg投与群は大量に飲酒する日が25%、190mg投与群では17%減少した。性別および治療開始前の禁酒は薬物の効果に有意な影響を及ぼし、指導下で禁酒をした男性ではより治療の効果が高かった。
いくつかの米国の大学ではNational
Institutes of Healthと共同でがん患者における精神科医の必要性を研究しそれに従事する計画を立てている。ミシガン大学のプログラムはどのがんが最も気分障害を来たしやすいかや、どの治療が精神的な副作用を来たしやすいかなどを示した精神科医向けの情報を作成した。3つの英語版のオンライン情報が下記のウエブサイトで閲覧可能である。
長期研究によると、メカニズムは不明であるが、現在進行形の喫煙と自殺には関連があることが確認された、とArchives
of General Psychiatry 3月号に掲載された。約900人の成人(1989年の時点で21〜30歳)に対し1992、1994、および1999〜2001年にfollow-upの面接を行った。それぞれの時点でそれまでの喫煙歴、日々のまたは過去の喫煙状態について評価した。10年間の追跡期間の間に19人が自殺を試み、130人に自殺企図があった。うつ、薬物乱用、精神障害、自殺傾向などで補正したところ、それぞれの評価時点で喫煙をしていることは自殺思考および自殺企図の予測因子であった。自殺行為はそれぞれの評価時点でうつ状態と報告したものにおいて多く認められた。
統合失調症のリスクが非常に高い者の脳の機能的核磁気共鳴画像から、これらの人々においては臨床的に診断されるより前に前頭前皮質機能が有意に低下する可能性が示唆された、とArchives
of General Psychiatry 3月号に掲載された。計52人の患者にコンピューターベースのエグゼクティブディシジョン(executive-decision)テストを受けさせ前頭および線条体活性を評価した。これらの患者群は非常に高リスクの者、初期統合失調症(発症から5年以内)、慢性統合失調症(発症から5年以上)、および年齢を合致させた健常対照群からなっていた。高リスク患者は、感情鈍磨、対人関係能力の低下、不衛生、感情の不調和、誤った信念などの初期の感情や認知機能の問題を有していた。興味深いことに、この試験の成績は健常者で最も良好で、慢性疾患患者で最も不良であり、非常に高リスクの者および初期患者はその中間であった。
Duloxetineで治療された高齢うつ病患者においてはうつ病症状に加え言語習得および回想試験の結果が有意に改善した、とAmerican
Association for Geriatric Psychiatry学会で発表された。この8週間にわたるトライアルでは65歳以上の患者311人を対象とし、そのうち207人をduloxetine一日60mg、104人をプラセボ内服群に無作為に割り付けた。スタディ終了までにduloxetine群ではプラセボ群と比較し認知機能の有意な改善を示した。さらに、duloxetine群の27.4%がうつ病症状がほとんど消失したのに対し、プラセボ群におけるその割合は14.7%であった。発表者によるとこのトライアルは、高齢うつ病患者においてうつ病自体の改善に加え認知機能の改善を示した初めてのものである。