多くの医師グループにより現在実施されている最良の末梢性血管疾患治療の新たなガイドラインの基盤をAmerican
College of Cardiology および American Heart Associationが共同で出版した。このプロジェクトの中心は、早期発見治療により機能障害を予防し生命を救うことができるという点に置かれている。このガイドラインには早期病変や腎動脈狭窄を疑わせる兆候を診断するための臨床上の手がかりなどが含まれている。動脈瘤は、手術やカテーテル治療を行うべき場合と注意深く経過観察をするのが最良の場合についても勧告が掲載されている。また、客観的にみた診断法や手術およびカテーテル治療の利点と欠点も掲載されている。このガイドラインでは運動、食事、禁煙、および薬物療法の役割を含めた治療法の選択に重点を置いている。さらに、このガイドラインには臨床上の治療方針決定のためのクリニカルパスウェイや治療アルゴリズムも記されている。
心筋梗塞後の患者の発症から30日間の脳卒中のリスクは44倍高く、この脳卒中のリスクの高いレベルは少なくとも数年間持続するようである、とAnnals
of Internal Medicine 12月6日号に掲載された。米国の研究者らはある大規模なメディカルセンターで1979〜1998年に治療を受けた心筋梗塞患者2,160人の医療記録を解析し、入院後患者が脳卒中発症かつ/または死亡したか否かを観察した。ほとんどの患者は約6年間追跡調査された。興味深いことに、心筋梗塞発症後30日間の脳卒中のリスクが44倍であること、および3年間のリスクが2〜3倍であることは、この研究が行われた20年間の間に大きな変化は認められなかった。筆者らは医師らに、初回心筋梗塞後には総合的な血管のリスクファクター像を考慮に入れ説明し、患者がそれに従い各々のリスクファクターを管理できるよう援助する必要があると述べている。
ヘパリンに抗体をもっている患者は心臓手術後の死亡または重篤な合併症のリスクが2倍近く高い、とJournal
of Thoracic and Cardiovascular Surgery 12月号に掲載された。米国の研究者らは、ある2つの大規模なメディカルセンターで冠動脈バイパス術または弁置換術を施行される予定の患者466人に対しParsonnetリスクスコアを評価し、またヘパリンの抗体を検査した。リスクスコアに関わらず、抗体陽性の患者は死亡や入院期間が10日以上長いリスクが2倍近く高かった。入院滞在期間延長はつまり心筋梗塞、脳卒中、感染、腎障害などの合併症を現わしている。研究者らは、ヘパリン抗体を有する患者においてはヘパリンを用いることにより血液凝固や炎症を引き起こす血液成分を活性化し、心筋梗塞、不整脈,脳卒中、およびその他の合併症のリスクを増大させるものとの仮説を立てている。
非ST上昇急性冠症候群に対し早期の血行再建術を施行され、入院中にenoxaparinまたは未分画ヘパリンを使用されたハイリスク患者の1年後の予後は同等である、とJournal
of the American Medical Association 11月23日号に掲載された。Enoxaparin、血行再建、糖タンパクIIb/IIIa阻害薬を用いた新たな治療戦略の利点(Superior
Yield of the New Strategy of Enoxaparin, Revascularization,
and Glycoprotein IIb/IIIa Inhibitors :SYNERGY)トライアルでは9,978人の患者を対象とした。開始後6ヵ月間に541人(5.4%)が、1年間に739人(7.4%)が死亡した。6ヵ月間の死亡または非致死性心筋梗塞は、enoxaparin投与患者のうち872人(17.6%)、未分画ヘパリン投与患者のうち884人(17.8%)に認められた。180日間の再入院はenoxaparin投与患者の858人(17.9%)に、未分画ヘパリン投与患者の911人(19.0%)に認められた。1年後の総死亡率は二つの治療群間で差はなかった。
New England Journal of
Medicine 11月17日号に掲載されたphase III RIO-Lipidsトライアルのデータによると、rimonabantは脂質代謝異常を有する過剰体重または肥満の患者の様々な心血管および代謝リスクファクターを改善するとのことである。その効果には、ウエスト周囲径や体重の減少、耐糖能改善、降圧に加え、中性脂肪レベルの低下、HDLコレステロールの増加などが含まれた。さらに、10%以上の体重減少を示したのはrimonabant投与患者の32.6%であったのに対し、プラセボ投与患者におけるその割合は7.2%であった。ベースラインの時点でメタボリックシンドロームの診断基準に当てはまった患者はrimonabant群の52.9%、プラセボ群の51.9%であった。スタディ終了時(1年後)、この割合はリモナバント群では25.8%であり、プラセボ群では41%であった。
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American
Heart Associationの緊急処置の新たなガイドラインでは心肺蘇生法に関して心臓マッサージ(胸部圧迫)に重点を置くように改定された [2005-12-06]
Circulationオンライン版11月24日号に掲載された、心肺蘇生および緊急心血管処置の2005年版
American Heart Association (AHA)ガイドラインでは、心肺蘇生法に関して心臓マッサージ(胸部圧迫)をより有効にさせることに重点を置き改定された。このガイドラインは
International Liaison Committee on Resuscitationが発行した文書である、「Consensus
on Science and Treatment Recommendations(科学および治療勧告における総意)」に基づいたものである。心肺蘇生法の最も有意な改定は、新生児を除き全ての患者に対し、人工呼吸に対する胸部圧迫の割合を胸部圧迫15回に対し呼吸2回から胸部圧迫30回に対し呼吸2回に変更したことである。この変更は、1セット間の胸部圧迫1回ごとに循環血液を増加させ、心臓マッサージ中断後の循環血液を維持しなくてはならないとのいくつかの研究の結果から導き出された。