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心房細動患者に対する血栓症予防効果が抗凝固薬の方が抗血小板薬よりも優れていることが明らかとなったためACTIVEトライアルの一部が早期に中止となった [2005-09-27]
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One
arm of ACTIVE Trial ends early after oral anticoagulation
is found superior to antiplatelet therapy for patients
with atrial fibrillation. |
心房細動患者の血管イベント予防効果を比較したACTIVE(Atrial
fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention
of Vascular Events) W群は、抗凝固療法が抗血小板療法よりも優れていたため中止となったが、抗凝固療法に耐えられない患者に対する最大限の治療およびirbesartanの効果を評価する他の2つの部門は継続中である、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。このACTIVEトライアルは30カ国の患者計3,000人以上を対象とした。ACTIVE
W群では通常の抗凝固療法と抗血小板療法(アスピリン+clopidogrel)を比較したものであるが、抗凝固療法の方が有効性が高いことが明らかとなったため中止された。このphase
III多施設試験の残り2つの継続中の群はACTIVE A と ACTIVE Iである。ACTIVE A では経口抗凝固薬投与の適応外の患者および経口抗凝固薬内服を希望しない患者に対しアスピリン単独とアスピリン+clopidogrelの効果を比較する。ACTIVE
Iは(通常の降圧療法に加え)irbesartan投与がプラセボと比較し、心房細動患者の血管イベント予防に有効であるかを評価するものである。
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オーバーラッピングシロリムス溶出ステントは従来のステントと比較し、重大な心有害事象発症率が低く心筋梗塞発症数も少ない [2005-09-27]
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Overlapping
sirolimus-eluting stents result in a lower overall major
adverse cardiac event rate and significantly fewer myocardial
infarctions than bare stents. |
糖尿病や多枝病変、細い血管、高血圧などのリスクの高い患者に対するオーバーラッピングシロリムス溶出ステント挿入は通常のステントをオーバーラッピングするのと比較し有意に予後が良好である、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。SIRIUS (新規発症病変に対するSIRolImUS-coated
Bx Velocity balloon-expandable stent挿入)、E-SIRIUS (SIRIUSのヨーロッパ版)、DIRECT(Sirolimus-eluting
Bx Velocity stentを用いたダイレクトステンティング)、およびSVELTE(細い新規発症病変にCYPHERRステントを留置された患者のスタディ)の4つのトライアルの結果を解析したところ、オーバーラッピング薬物溶出ステント挿入は、ステント留置後1年間の総死亡率によりカウントされた心有害事象、心筋梗塞、ターゲット病変に対する再血行再建術施行、およびnon-Q心筋梗塞の発症率が低かった。 |
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ENDEAVOR
IおよびIIトライアルではシロリムスアナログABT-578溶出挿入後24ヵ月間の安全性および有効性が示された [2005-09-27]
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ENDEAVOR
I and II trials establish safety and efficacy of stents
eluting the sirolimus analogue ABT-578 for up to 24 months
after implantation procedure |
ENDEAVOR IおよびIIトライアルではシロリムスアナログABT-578溶出ステントが後期ステント内血栓およびターゲット病変の再狭窄の面で24ヵ月間有効であることが示された、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。ENDEAVOR Iでは24ヵ月後のターゲット病変の再血行再建術施行率が12ヵ月後と同様の2.0%であったと報告した。ENDEAVOR
IIは薬物溶出ステント(Endeavor)と合金ステント(Medtronic Driver R)を比較した。ENDEAVOR
IIではどちらの群も9〜12ヵ月後にステント内血栓の発症をみなかった。Endeavorステントを留置された700人を12ヵ月以上追跡しているが今日までにステント内血栓の報告はない。ENDEAVOR
IIスタディではまた、12ヵ月後のターゲット病変再血行再建術がたったの6.0%とコントロール群(従来のステント)群の13.2%と比較し効果の持続性も示されている。 |
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JUPITER
IIトライアルの6ヵ月後のデータによりJANUSタクロリムス溶出カーボステントの有効性と安全性は有望であることが示された [2005-09-27]
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JUPITER II six-month data show a promising efficacy and
safety profile for the JANUS tacrolimus-eluting carbostent |
JUPITER IIトライアルの6ヵ月後のデータによりJANUSタクロリムス溶出カーボステントの有効性と安全性は有望であることが示された、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。ダイレクトステントを予定された患者計332人を薬物溶出ステントまたはそれに該当する従来のステント埋め込み群に無作為に割り付けた。ダイレクトステンティング成功率は従来のステント群で86.1%、薬物溶出ステント群で75.9%であった。重大な有害事象発症率はコントロール群で10.6%、薬物溶出ステント群で6.4%であった。有害事象の多くはターゲット病変の再血行再建術施行であった。他の薬物溶出ステントと比較し、JANUSは薬物を運搬するポリマーを必要とせずステント外表面のリザーバーを用いた特有の薬物放出システムを使用する。これにより治療の必要な血管壁部位のみに薬物を放出することが可能となる。 |
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ASCOTトライアルの結果、高血圧および他のリスクファクターを有する患者はβブロッカーよりもアムロジピンで治療した方が予後が良好であることが示された [2005-09-20]
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ASCOT
Trial shows that patients with hypertension and other
risk factors have better outcomes with amlodipine than
with a beta blocker. |
高血圧および他の心血管リスクファクターを有する患者は、アムロジピン主体の治療をした方がβブロッカー主体の治療よりも心血管死亡率、総死亡率、および心血管有害事象発症率や施術を受ける確率が低い、との研究結果がEuropean
Society of Cardiology学会で発表され、同時にLancetオンライン版に公表された。この5年間のAnglo-Scandinavian
Cardiac Outcomes Trial (ASCOT)では19,000人以上の患者を対象とした。アムロジピン群の患者はさらに追加内服が必要な場合にはペリンドプリルおよびドキサゾシンGITS(αブロッカー)を追加され、βブロッカー(アテノロール)群の患者は必要に応じてサイアザイドおよびドキサゾシンGITSを追加投与された。さらに、コレステロールレベルが正常から軽度上昇している患者10,000人には脂質降下療法の効果を評価するために、アトロバスタチン10mgまたはプラセボが投与された。こちらのスタディに関しては、スタチン内服群の患者において心筋梗塞発症率の有意な低下が認められたため、2002年10月に中止した。
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SIRIUS
IIトライアルの結果ularitideは急性非代償性心不全の治療法として有望であることが示された [2005-09-20]
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SIRIUS
II Trial suggests ularitide shows promise as a new therapy
for acute decompensated heart failure. |
急性非代償性心不全患者に対する合成ナトリウム利尿ペプチドularitideの有効性を評価したSIRIUS
IIトライアルの結果、この薬剤の有効性が示唆されたとEuropean Society of Cardiology学会で発表された。計221人の患者を7.5、15、または30
ng/kg/minのularitideを24時間持続点滴する群またはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。一次エンドポイントは、呼吸困難スコアの変化および6時間後の肺毛細管楔入圧の変化の2つであった。その結果、ularitideはいずれの用量でも呼吸困難スコアを改善した。また、6時間後の肺毛細管楔入圧はularitide群で有意に低下した(ularitide群で10〜12mmHg
低下、プラセボ群で4mmHg低下)これらの変化に伴い、ularitide 15および30ng/kg/min投与群においては心拍出係数の増加が認められた。30日後の死亡率はどの用量のularitide群よりもプラセボ群において高かった。 |
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OASIS
5トライアルの結果、fondaparinuxは、すでにアスピリンやclopidogrelを投与されている急性冠症候群患者の多くに有効な抗血栓薬である可能性が示唆された [2005-09-20]
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OASIS
5 Trial shows fondaparinux may be an effective anti-thrombotic
drug in many patients with acute coronary syndrome already
on aspirin and clopidogrel |
OASIS 5トライアルの結果、fondaparinuxは、すでにアスピリンやclopidogrelを投与されている急性冠症候群患者の多くに対し、enoxaparinと同程度に有効な抗血栓薬である可能性が示唆された、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。この虚血性疾患の治療戦略を評価する組織(Organization
to Assess Strategies for Ischaemic Syndromes )5トライアルにおいては、20,000人以上の患者に対しfondaparinuxおよびenoxaparinの有効性を評価した。9日後の死亡、心筋梗塞、および再発性の虚血の予防からなる複合一次エンドポイントに関してはこれらの2剤の有効性は同等であった。Fondaparinuxは、凝固の過程で中心的な役割を果たす蛋白である凝固因子Xaを選択的に阻害する種類の薬剤で最初のものである。このスタディの中で、fondaparinuxはenoxaparinと比較し大出血が47%少なかった。1ヵ月後の死亡率はfondaparinux群で17%低く、この差は6ヵ月後にも維持された(11%低下)。 |
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PREAMIトライアルの結果、ペリンドプリルは左心機能の保たれた高齢の心筋梗塞患者の予後を有意に改善することが示された [2005-09-20]
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PREAMI Trial shows that perindopril significantly improves
outcome for elderly survivors of myocardial infarction
who have preserved left ventricular function |
ペリンドプリルは左心機能の保たれた高齢の心筋梗塞患者の死亡、心不全入院、および左室リモデリングを有意に減少させる、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。PREAMI(高齢心筋梗塞患者におけるペリンドプリルのリモデリングに対する効果:Perindopril
Remodelling in Elderly with Acute Myocardial Infarction)スタディでは、左室駆出率40%以上の心筋梗塞後患者1,252人(平均年齢73歳)に対するペリンドプリルとプラセボの効果を比較した。一般的な推奨される治療法に加え、患者は梗塞発症の約11日後に無作為に割り付けられ、ペリンドプリル4
mg /dayまたはプラセボを1ヵ月間内服した後、ペリンドプリル8mg /dayまたはプラセボを11ヵ月間内服した。その結果、ペリンドプリル内服により複合一次エンドポイント到達率が38%低下し、相対的なリスク軽減が認められた。この効果は主にペリンドプリル群においてプラセボ群よりも左室リモデリングが有意に軽減されたためである(28対51%)。 |
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VALIANTスタディのデータ解析の結果、バルサルタンは心筋梗塞後患者の動脈硬化性疾患のリスクをカプトプリルと同等に軽減することが示された [2005-09-20]
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Analysis
of VALIANT study data shows that valsartan is as effective
as captopril in reducing risk for atherosclerotic events
in survivors of myocardial infarction |
VALIANT (VALsartan In Acute
myocardial iNfarcTion)スタディのデータを新たに解析した結果、バルサルタンは心筋梗塞発症から日の浅い患者の動脈硬化性疾患のリスクをカプトプリルと同様に軽減することが確認された、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。14,703人の患者をバルサルタン、カプトプリル、および両者の併用群に無作為に割り付けた結果、心血管死亡、心筋梗塞、狭心症、血行再建術施行、および脳卒中からなる複合一次エンドポイント到達率に差はなかった(バルサルタン
2,175人、カプトプリル2,228人、併用2,197人)。また、データ解析の結果、バルサルタンは長期投与が必要な患者においては忍容性の面で優れていることが示唆された。副作用のために内服を中断した患者の割合はバルサルタンよりもカプトプリルを内服した患者において有意に高かった(それぞれ5.8%および7.7%)。 |
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基礎研究の結果によると、アンジオテンシン受容体拮抗薬テルミサルタンはインスリン抵抗性や脂質異常を含む代謝のパラメータを改善する可能性のあることが示された [2005-09-20]
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Preclinical
studies show that angiotensin II receptor blocker telmisartan
can improve metabolic parameters including insulin resistance
and lipid abnormalities |
基礎研究の結果によるとアンジオテンシン受容体拮抗薬テルミサルタンは、すでに証明されている降圧効果に加え、血糖、インスリン抵抗性、および脂質異常などの代謝パラメータに良好な効果をもたらすことが示された、とEuropean
Society of Cardiology学会で発表された。テルミサルタンの作用のメカニズムには、インスリン感受性を増大させるホルモン受容体であるperoxisome
proliferator-activated receptor-gamma(PPAR-γ)の部分的な活性化が含まれる。テルミサルタンは構造上、2型糖尿病治療薬として認可されている受容体直接刺激薬ピオグリタゾンに類似している。高血圧およびメタボリックシンドロームのパラメータ異常を両方治療するこの薬剤の臨床上有望な可能性に関しては現在、Ongoing
Telmisartan Alone and in combination with Ramipril Global
End point Trial (ONTARGET)が進行中である。この臨床試験の最初の結果は2008年に得られる予定である。 |
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冠動脈形成術前のclopidogrel投与により発症後30日間の心血管死亡率および心筋梗塞や脳卒中などの非致死的合併症のリスクが軽減する [2005-09-13]
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Pre-angioplasty clopidogrel significantly reduces 30-day
cardiovascular mortality and risk for nonfatal complications
including myocardial infarction and stroke |
冠動脈形成術前のclopidogrel投与により発症後30日間の心血管死亡率および心筋梗塞や脳卒中などの非致死的合併症のリスクが軽減する、と2005年European
Society of Cardiologyで発表され、同時にJournal of the American
Medical Associationオンライン版に公表された。付加的冠動脈再灌流療法としての経皮的冠動脈インターベンション−Clopidogrel(The
Percutaneous Coronary Intervention-Clopidogrel as Adjunctive
Reperfusion Therapy [CLARITY])スタディでは、ST上昇心筋梗塞に対し血栓溶解療法を受けた患者にclopidogrelまたはプラセボを投与したCLARITY-TIMI
28トライアルの患者1,863人を対象とした。アスピリンを投与された後に患者はclopidogrel (ローディングドーズ
300mg)またはプラセボを血管形成術が施行されるまで内服した。ステントを留置された患者には術後にもclopidogrelが投与された。その結果、全体で、clopidogrelは発症後30日間の心血管死亡、心筋梗塞、および脳卒中のリスクを41%軽減させた(血管形成術前のイベントを38%軽減)。この結果を概括すると、血管形成術前にclopidogrelを通常量の1〜2倍追加するだけで、23人に1人の重大な心血管イベントが予防できることになる。 |
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急性心筋梗塞で入院後24時間以内にスタチン療法を開始することにより院内死亡率が半分以上軽減する [2005-09-13]
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Statin therapy begun within 24 hours of acute myocardial
infarction reduces in-hospital mortality by more than
half |
急性心筋梗塞で入院後24時間以内のスタチン療法開始により院内死亡率が有意に軽減する、とAmerican
Journal of Cardiology 9月1日号に掲載された。米国の研究者らは国内データベースの患者170,000人以上のデータを解析した。その結果、入院前または入院時にスタチンを内服していた急性心筋梗塞患者の院内死亡のリスクは、スタチンを内服していなかった患者のそれより54%低かった。以前にはスタチンを内服していなかったが入院後24時間以内に内服を開始した患者の死亡率は、58%低かった。早期のスタチン内服開始により心停止、心原性ショック、心臓破裂、および心室細動の発症も低下した。筆者らは救急外来でのスタチン内服開始または内服継続を呼びかけている。 |
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女性の方が男性よりも冠動脈バイパス術後の死亡率が高いのは体のサイズが小さいことによる影響が大である [2005-09-06]
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Smaller body size is a major contributor to higher mortality
in women than in men after coronary artery bypass graft
surgery |
女性が冠動脈バイパス術後の死亡率が男性より高い大きな理由は、女性の方が体のサイズが小さいからである、とCirculation
8月30日号に掲載された。研究者らは、ある一地域でバイパス術を施行された米国の患者15,440人(女性5,023人)のデータを解析した。女性の平均年齢は66歳、男性は63歳であった。全体で女性の4.2%、男性の2.2%が術中または術直後に死亡し、男女間で90%の違いがあった。疾患の重症度や他の健康状態などで補正し統計学的に解析した結果、性差は90%から49%に低下した。体表面積を考慮に入れたところ、この差は22%に縮まった。バイパス術が有益な女性に対しては施行すべきであるとする一方で、体脂肪率や、特に閉経後女性のホルモンなどの性差に焦点を当てた研究も行われることであろう。 |
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時間外または週末に入院した心筋梗塞患者は再灌流までの時間が長く死亡率が高い [2005-09-06]
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Patients admitted during off-peak hours or the weekend
with acute myocardial infarction have longer duration
to restored blood flow and increased mortality |
時間外に入院した心筋梗塞患者は平日の通常業務時間内に入院した患者と比較し、再灌流までの時間が長く死亡率が高い、とJournal
of the American Medical Association 8月17日号に掲載された。研究者らは、フィブリン溶解療法を受けた米国人患者68,439人およびカテーテルインターベンションを受けた患者33,647人の記録を解析した。両群ともに多くの患者は時間外に治療されていた。来院から薬剤使用までの時間は時間外の方がやや長かった(1.0分の差)。来院からバルーン拡張までの時間は時間外の方がかなり長かった(21.3分の差)。この差は主に心電図をとってからカテーテル室への入室までの時間が長いことが原因であった。再灌流時間の差で補正したところ差は43%縮小したことから、時間外患者の死亡率上昇の一部は治療の遅れが原因であることが示唆された。 |
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