Diabetes Control and Complications
Trial (DCCT)において厳重な血糖コントロールをされた1型糖尿病患者は従来どおりの治療を受けた患者と比較し、心血管疾患発症数が半分以下であった、との結果がAmerican
Diabetes Association学会で発表された。DCCTは1983〜1989に施行された多施設研究であり、厳重な血糖コントロール(HbA1cレベルを6%以下とできるだけ正常値レベルに近い値に維持)により、動脈硬化に加え、眼、神経、および腎合併症のリスクを多大に軽減することを示したスタディである。スタディへの参加を自発的に継続した患者1,375人の新たな結果によると、厳重にコントロールされた患者では心血管イベントが46件であったのに対し従来通りに治療された患者のイベント数は98件であった。イベントには心筋梗塞、脳卒中、狭心症、血行再建を必要とする冠動脈疾患などが含まれた。厳重コントロール患者の計31人(4%)および従来治療患者の52人(7%)が1回以上の脳血管疾患を発症した。
70歳以上の人々に対する冠動脈疾患予防のための低用量アスピリン投与の純利益は出血関連の副作用のため帳消しとなる、とBritish
Medical Journal 3月21日号に掲載された。冠動脈疾患を有さない70〜74歳のオーストラリア人男女20,000人を対象とした疫学調査の結果、アスピリンによる心血管イベント減少の利益は消化管および脳出血のため帳消しとなることが示された。筆者らは臨床試験において、様々な年代の高齢者に対する低用量アスピリンの価値を確立しアスピリンの有効性が最も認められる人々を見極める必要があると論じている。
ベータブロッカーはカルシウム拮抗薬と比較しうつ症状を引き起こしたり増悪させたりする、とPsychosomatic
Medicine 5-6月号に掲載された。心疾患患者におけるうつ病を有する者の割合は3分の1にも上る可能性が示唆され、また気分障害は心血管疾患の強力な危険因子であるため、米国の研究者らは、International
Verapamil SR-Trandolapril(INVEST)研究のデータを解析し、カルシウム拮抗薬またはベータブロッカーを主体とした降圧療法のうつ病に関する違いを調査した。両群ともに必要に応じてアンジオテンシン変換酵素阻害薬を使用した。2,317人のサブ解析群(約半分が女性、大部分が65歳以上)において、自己申告による気分はベラパミル群で改善したがアテノロール群では改善しなかった。またこの差はうつ病の既往や心疾患の種類などで補正しても依然として認められた。