バルサルタンは、特に高リスクの高血圧患者において、有意に糖尿病のリスクを低下させるとAmerican
Society of Hypertension学会で発表された。バルサルタンとアムロジピンを比較したVALUEトライアルでは、31ヵ国15,313人の高血圧患者を組み入れた。データの二次解析の結果、研究者らは、バルサルタン群患者では11.5%に糖尿病が発症したのに対し、アムロジピン群においては14.5%に発症が認められ、バルサルタン群でリスクが23%低かったことを明らかにした。ベースラインで糖尿病を有さなかった患者9,995人を糖尿病のリスクファクターに基づき分類したところ、最も高リスク群の患者は最も低リスク群の患者と比較し、6倍糖尿病が発症しやすかった。しかし、糖尿病のリスクが最も高い群および2番目に高い群の患者でバルサルタンを内服している者は有意に糖尿病を発症する率が低かった。筆者らは、バルサルタンが糖代謝に影響するに相違ないと考えており、さらなる研究が必要であると主張している。
シロリムス溶出ステントは急性心筋梗塞患者に対し従来のステントよりも予後を改善する、とJournal
of the American Medical Association 5月4日号に掲載された。イタリアのSTRATEGYトライアルでは急性ST上昇心筋梗塞患者175人をチロフィバンとシロリムス溶出ステント併用群(87人)またはabciximabと従来のステント併用群(88人)に無作為に割り付けた。8ヵ月後、シロリムス群では74人中14人(19%)、従来のステント群では74人中37人(50%)が一次エンドポイント(非致死的再梗塞、脳卒中、ステント内再狭窄、および死亡)に達した。薬物溶出ステント群において結果が良好だったのは、主に再血行再建術の必要性が低下したことによる。
実際のデータによると薬物溶出ステント後9ヵ月以内のステント内血栓の発症率は臨床試験で示されたよりも高いとJournal
of the American Medical Association 5月4日号に掲載された。計2,229人の患者が、シロリムス溶出ステント(1,062人)またはパクリタキセル溶出ステント(1,167人)を留置された。9ヵ月後、29人(1.3%)においてステント内血栓が認められた。そのうち9人(0.8%)はシロリムス溶出ステント、20人(1.7%)はパクリタキセル溶出ステント留置群であり、トライアルで公表された発生率(シロリムス溶出ステントの1年間の発生率0.4%、パクリタキセル溶出ステントの9ヵ月以内発生率0.6%)よりも実質的に高かった。ステント内血栓の独立した予測因子は、早期の抗血小板薬中止(これらの患者における血栓症発生率29%)、腎不全、および糖尿病(血栓症患者の27%が糖尿病を有していた)であった。
冠動脈バイパス術はおそらく、後発および慢性の神経学的合併症は引き起こさないであろうとのレビュー記事がAnnals
of Neurology オンライン4月25日号に掲載された。筆者らの研究によると、一部の患者において一時的な認知障害は認められたものの、コントロールを用いた研究に基づいた結果、その認知障害が3ヵ月以上持続することはまれであった。手術による後発の合併症が生じやすい患者は、脳血管障害や脳卒中の既往を有する者であった。筆者らは、多くの患者における後発の認知機能低下は脳血管疾患の進行を示しているのであり、従って、手術に基づく認知機能障害を恐れ、冠動脈バイパス術を受けることを思いとどまるべきではない、と結論付けている。
安定狭心症患者に週一回のアジスロマイシン投与を一年間継続しても冠動脈イベントのリスクは軽減されない、とNew
England Journal of Medicine 4月21日号に掲載された。Azithromycin
Coronary Events Study (ACES)では、米国の男女4,012人を無作為に割り付け、抗生剤またはプラセボを1999年から1年間投与した。平均3.9年間追跡した結果、死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、および血行再建術で定義した心疾患イベントの減少は、抗生剤投与群において、プラセボ群と比較し認められなかった。抗生剤の効果は年齢、性別、喫煙歴、肺炎クラミジア抗体の有無に関わらずすべての人々において認められなかった。また、抗生剤投与は、総死亡率や脳卒中発症にも効果を示さなかった。この細菌が果たして心血管疾患の発症に関わっているのかについては、疑問が残る。