患者の不安となりうる要素を取り上げた認知行動療法に参加した後に患者の症状や不安が有意に軽減したトライアルの結果から、認知行動療法は心気症の治療法として有望である、という研究がJournal
of the American Medical Association 3月24日号に掲載された。患者187人のうち102人が認知療法群に、85人が通常療法群に割り付けられ、ベースライン、治療終了後6および12ヵ月に評価がなされた。認知行動療法では90分の個人療法を6週間施行した。ベースラインの教育レベルや一般的な心理的障害の有無などの変動因子で補正したところ、6および12ヵ月後には統計学的にも臨床的にも有意な治療効果が認められた。12ヵ月後には認知行動療法を受けた患者は、社会的役割をこなしたり日常生活を送ったりする上で、有意に問題が少なかった。
喫煙していると神経変性疾患のリスクが低いとの既知の相関に関する新たなメカニズムの仮説を立てた研究者らは、もしこの仮説が確証できれば、ニコチンの持つ神経保護作用を有する薬剤の開発の一助となるであろう、という報告がJournal
of Neurochemistry 3月号に掲載された。今回の研究で彼らは脳内のニコチンが、炎症や神経喪失の原因となる小膠細胞活性を抑制することを発見した。この間接的な作用は、ニコチンがニコチン受容体に結合することによりアセチルコリンレベルを上昇させるという、既に知られている直接効果に加え認められるものである。研究者らは、アルツハイマー病やパーキンソン病のような神経変性疾患に対する新たな見方がこの発見によりもたらされる可能性がある、と述べている。
訓練されたうつ病管理者との相互協力を含めたプライマリケアベースの集中治療により、高齢うつ病患者の自殺思考のレベルを低下することが可能である、という研究がJournal
of the American Medical Association に掲載された。この研究は、無作為に抽出された、うつ病と診断された、あるいはスクリーニングでうつ病が陰性および陽性であった高齢のプライマリケア患者598人を評価した。集中治療群は、老人うつ病に関する特別な訓練を受けた医師から治療を受け、訓練されたうつ病管理者によってモニターされた。ベースラインの時点で自殺企図のあった患者の3分の2以上が4ヵ月後には自殺企図はなく、その改善率は学会ベースの精神科クリニックの患者の改善率に近かった。
イギリスの被雇用者約8,000人を対象とした、質問票を基盤とした前向き調査の結果によると年長の女性管理職は若い従業員よりも飲酒の問題を抱えやすい、という報告がJournal
Occupational and Environmental Medicine 3月号に掲載された。男性においてはアルコール濫用の割合は仕事のどのレベルでも同様であるが、女性においては役職の段階が上がるにつれ上昇し、年長の管理職の女性は事務職員と比較しアルコール濫用に関する問題を3倍以上抱えている(それぞれ14%対4%)。アルコール濫用の男女は、多くの時間を仕事に費やしているが昇進の機会が少ないと述べている。
人口集団ベースの新たなケースコントロールスタディによると、ある腹部疾患(グルテン不耐症)が統合失調症のリスクファクターである、とのさらなるエビデンスが得られたという報告がBritish
Medical Journal 2月21日号に掲載された。デンマークのデータから15歳以上で統合失調症と診断された7,997人が選び出された。いずれのケースも年齢および性別の匹敵した対照のコントロール25人が選ばれた。グルテン不耐症、潰瘍性大腸炎、またはクローン病の既往を有する精神疾患患者、コントロール、および両群の両親を検索した。リスクファクターで補正したところ、グルテン不耐症を有する者の統合失調症の相対リスクは3.2(患者の両親においても同等のリスクを認めた)であった。一方、潰瘍性大腸炎またはクローン病のそれは1.4であった。
ジスルフィラムと認知行動療法の併用は成人のコカイン依存症の治療として有望である、という報告がArchives
of General Psychiatry 3月号に掲載された。米国の研究者らは、禁酒することにより判断を誤ったり薬物欲求への抵抗性を低下させることがなくなるためコカイン使用を減少させられる可能性があるとの仮説を立てている。コカイン依存症の成人計121人をジスルフィラムまたはプラセボを12週間内服する群、また同時に認知行動療法または対人心理療法を受ける群に無作為に割り付けた。その結果、ジスルフィラムを投与された患者はプラセボを投与された患者と比較し、また、認知行動療法を行われた患者は対人心理療法を施行された患者と比較し、有意にコカイン使用量を減少させることができた。ジスルフィラムおよび認知行動療法の効果はアルコール依存症でなくこの研究期間中に飲酒をしないものにおいて著明に認められた。
乳がんの既往のある女性はフォローアップの乳房撮影により急性ストレス関連徴候をきたすことが新たに判明したことから、がんを乗り越えたあとのストレスはこれまで考えられていたよりも大きいことが示唆された、という報告がPsychosomatic
Medicine 1/2月号に掲載された。カナダの研究者らはある大規模ながんセンターで乳房撮影をされた女性135人を評価した。66人は初期乳がんの治療に成功し他の69人は乳がんを発症したことはなかった。がんと診断されたことのある女性は既往のない女性と比較し、急性ストレス関連徴候をきたしたことがあると答えた率が2〜4倍多かった。過去の研究では、がんの既往のある者の30%がその次の年に乳房撮影を拒否して受けなかった。