がんを有する患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高く、治療中にはさらにそのリスクが高まるにもかかわらず、がん治療に当たる医師のうちそのリスクを最低限にするための予防手段を講じている者は少ない、との調査結果がBritish
Medical Journal 9月13日号に掲載された。英国の医師106人を調査した結果によると、その27%は、疾患の種類に関わらずがん患者は血栓塞栓症のリスクが高くないと述べた。75%以上の医師が化学療法は有意なリスクファクターではないと考えており、90%以上が放射線療法に関しても同様に考えていた。しかし実際、化学療法、ホルモン療法、そして放射線療法はいずれも有意に血栓塞栓症のリスクを上昇させる。少なくとも75%の医師が、これらの治療を行う際に日常的に血栓予防手段を講じているわけではない、と回答した。筆者らは、がんおよびその治療に伴うこの避けうる合併症をなくすため、医師らがこの事実に気付くよう取り組むべきであると述べている。
ある酵素阻害薬は培養腫瘍細胞の腫瘍形成を遅延させ、この働きはがん再発の遅延または予防に導く可能性がある、という報告がCancer
Research 9月号に掲載された。研究者らは、悪性細胞に認められる、染色体テロメアの加齢変化を阻害する酵素であるテロメラーゼを阻害する新たな化合物を研究した。この阻害薬を投与されたマウスの前立腺がん細胞はほとんど腫瘍を形成せず前立腺特異抗原もあまり上昇させなかったが、類似のしかし非機能性の化合物を投与されたマウスにおいては大きな腫瘍を形成し抗原レベルも上昇させた。この阻害薬をプラチナと併用することによりさらなる抗増殖効果が認められた。類似の化合物が現在、動物実験の最終段階である。
National
Cancer Instituteの支援による米国の新たなスタディにより、前立腺がん患者が有する性的不能、一過性尿失禁、および肛門に関する問題などの生活の質に対する治療効果が評価される。この多施設試験は対象患者に対し、ベースラインの時点で様々な点から機能や生活の質を評価し、その後、彼らと彼らのパートナーを治療中および治療後にモニターする。この研究に携わる医師らは、この結果から、確立された治療が引き起こしうる一過性および永続性の合併症を有する患者に事実に基づいた情報を提供し、また検証不十分な新たな治療法を論議するよりよい状況を供給したいと願っている。
Bisphosphonatesはがん骨転移による合併症の発症率を有意に軽減する、との論文がBritish
Medical Journalに掲載された。6ヵ月以上継続した30の臨床研究を再検討した結果、bisphosphonates療法を受けた患者の椎骨以外の骨折、椎骨骨折、高カルシウム血症、および放射線療法のリスクはプラセボ群と比較しそれぞれ65%、69%、54%、そして67%であった。この治療によって脊髄圧迫率は変化せず生存期間は延長しなかった。データのサブ解析の結果、筆者らは、骨転移と診断された場合aminobisphosphonateの静脈内投与を開始し、臨床的に治療の適応でなくなるまで継続することを勧めている。
術前化学療法は手術療法のみと比較し局所進行膀胱がんの生存率を改善する可能性がある、という報告がNew
England Journal of Medicine 8月28日号に掲載された。11年間に及ぶ研究による患者計307人において、術前化学療法を施行された患者は手術のみを施行された患者と比較し、生存期間が31ヵ月長かった。さらに、手術のみを施行された患者は併用療法を施行された患者と比較し、がん関連死亡率が66%高かった。予後の最も良好であったのは手術時に膀胱にがんの残存を認めなかった患者であったが、併用群の患者におけるその割合は38%であり一方術前化学療法を受けなかった患者におけるその割合は15%であった。
エンドスタチンは頭頚部扁平上皮細胞がんの細胞移動および浸潤を阻害することから、この薬剤は血管新生抑制以上にこれらのがんに対し有効である可能性がある、という報告がAnticancer
Research 3-4月号に掲載された。エンドスタチンに曝露されることにより浸潤能力のあるがん細胞数は半分に減少した。移動可能ながん細胞数は4分の1減少し、また、検査の結果エンドスタチンはいくつかの移動促進分子の遺伝子発現を抑制することが示された。他のアッセイの結果、細胞移動および浸潤両者を抑制するのはおそらくマイクロフィラメントの機能を破壊することによることが示された。筆者らは、術後の局所投与療法により局所再発のリスクを軽減することが可能となるよう研究を続けることを希望している。