糖尿病の前段階と考えられる状態の耐糖能の低下した人々は大腸がんおよび他のがんによる死亡のリスクが高い、という報告がAmerican
Journal of Epidemiology 6月15日号に掲載された。ベースライン時にはがんを有さない30〜74歳の米国成人3,054人を対象とした15〜20年間の前向きコホート研究の結果、耐糖能異常を有する人々は正常耐糖能の対照群と比較し、がん死のリスクが2倍近く高く大腸がんにより死亡する確率が4倍以上高いことが示された。筆者らは、耐糖能低下はがん死亡率の独立したリスクファクターと考えられると述べている。
ホジキン病の治療として放射線療法のみを受けた30歳未満の女性は乳がんのリスクが高い、という報告がJournal
of the American Medical Association 7月23日号に掲載された。米国の研究者らは、1965〜1994年の間にホジキン病と診断された3,817人の若年女性の乳がんリスクを胸部に対する放射線線量およびアルキル化剤を使用した化学療法の回数の点から推定し解析した。さらに乳がんを発症したホジキン病患者105人とがんを発症しなかった同輩266人を調査した。その結果、胸部への照射放射線線量が上昇するほど乳がんのリスクは上昇したが、卵巣への照射によりそのリスクは低下した。乳がんのリスクはまたアルキル化剤による化学療法によっても低下した。筆者ら、および編集論説者は生存者に対する密接な監視、そして現在かつ将来の患者に対する最良の治療を評価するよう強調している。
米国においてBexxar(tositumomab
and I131-tositumomab)が認可を受けたことにより、非ホジキンリンパ腫に対する標的抗がん剤として新たなモノクローナル抗体が使用可能となった。悪性B細胞に対する毒性は抗体による免疫活性および抗体に付着させたヨード131分子の直接的な放射能の組み合わせによる。臨床試験の結果によると、この治療法は化学療法に無効だった症例も含め、非ホジキンリンパ腫に非常に有効であることが示されている。
シクロオキシゲナーゼ2酵素が大腸がん発症を促進させるメカニズムが発見された、という報告がProceedings
of the National Academy of Sciences (USA) のオンライン版6月30日号に掲載された。研究者らはラットおよび人の細胞を使用しアポトーシスを引き起こすのに必要な2つの経路の詳細を明らかにした。発がんは酵素によるプロスタグランジン形成およびプロスタグランジンによるサイクリックAMP産生増加により始まる。サイクリックAMPはアポトーシス阻害物質とよばれる蛋白の活性による正常細胞の死をブロックする分子である。研究者らはこの分子レベルの過程が理解されることにより予防および治療法の新たなターゲットが導かれるであろうことを期待している。
S状結腸鏡スクリーニングの陰性所見後フォローアップは5年後よりも3年後に行った方が進行性ポリープや大腸がんなどの新たな所見を多く発見できる、という報告がJournal
of the American Medical Association 7月2日号に掲載された。地域ベースの予防トライアルで、検査後の再スクリーニングに適応のあった者11,583人中9,317人(80.4%)が3年後に再検査を受けた。その結果、遠位結腸にアデノーマまたはがんが発見された者は3.1%(9,317人中292人)であった。また遠位結腸に進行性アデノーマまたはがんの発見された率は0.8%(9,317人中78人)であった。編集者はどのスクリーニングテストも完璧ではないことを強調している。つまり、個人や保険医療はリスクの高い者に継続して検査した場合の結果に基づいて評価をしている(リスクの高い者の検査をすれば悪性のものを発見する率は高まるが完全ではない)。しかし、編集者は、3年後に新たに0.8%の者に所見が認められたとの結果は5年間隔のフォローアップにおける利点と欠点に関する有用な情報を与えていると述べている。
一部の女性においてはホルモンと乳がんの関係は遺伝的なものであり、それは思春期の早発として表れる、という報告がNew
England Journal of Medicine 6月5日号に掲載された。研究者らは女性の双子でそのうち片方または両方に乳がんを発症した1,811組の受精卵数、疾患の一致性、および家族歴の有無などのデータを解析した。両者が疾患を有し一卵性の場合、遺伝子的に最も疾患に罹りやすいと仮定したところ、これらの女性において双子のうち先に思春期が訪れた方が乳がんを先に発症する率が5.4倍高かった。一方、初回妊娠年齢や閉経年齢などの累積ホルモン指標とリスクに関連はなかった。編集者はこの新たなデータを「興味深い」と述べると同時に、しかしこの結果は既知の遺伝子リスク(BRCA1またはBRCA2変異)や強力な家族歴をもつ女性のデータとやや矛盾があるとも述べている。
エストロゲンとプロゲステロンを用いた短期ホルモン補充療法により乳がんのリスク、診断時に疾患が進行している割合、およびマンモグラムで異常所見の認められる率が上昇する、という報告がJournal
of the American Medical Association 6月25日号に掲載された。 Women’s
Health Initiative studyの1年間のデータを解析したところ、ホルモン使用により合計のがん症例数(245例対185例)、浸潤性疾患例(199例対150例)の増加が認められた。ホルモン補充療法群において浸潤性乳がんの割合はより高くまたよりステージが進行していた。マンモグラムで異常の認められた女性の割合もホルモン群で非常に高かった(9.4対5.4%)。
細胞上皮の細胞増殖因子受容体チロシンキナーゼをブロックするエルロチニブは、特に喫煙歴の全くない細気管支肺胞上皮がんの患者に有効である、とAmerican
Society of Clinical Oncology学会で発表された。計33人の患者(そのうち9人は全く喫煙歴がない)が臨床治験phase
IIトライアルに登録された。最低1ヵ月は治療を継続した患者30人のうち、8人において一部反応が認められ、そのうち5人は全く喫煙歴のないものであり、2人は軽い喫煙歴があり、1人は過去にヘビースモーカーであった。筆者らは、タバコが引き起こす遺伝子変化が、薬物の重要な経路をブロックする効果に対する耐性を獲得している可能性があると考えている。
膵がん術後患者のうち現在の標準的治療である化学放射線療法の恩恵をこうむる者の割合は非常に少ないため、新たな治療法が必要である、という報告がAnnals
of Surgical Oncology 6月号に掲載された。筆者らは7症例を調査し、膵がんの手術を受けた患者の補助療法の価値を評価した。その結果彼らは、病変を完全に切除された患者のうち術後化学放射線療法により利益が認められるものの割合は少なく、また微視的病巣が残存している患者における効果は無視できる程度であり、臨床治験以外では十分考慮の上決断した場合のみ施行されるべきであるとしている。