術後一年間の狭心症の軽減およびQOLの改善に関し、バイパス手術はステントを用いた 冠動脈形成術よりも優れている [2003-09-30]

Bypass surgery is superior to stent-assisted angioplasty in relief of angina and improvement of quality of life in first postoperative year
術後一年間の狭心症の軽減およびQOLの改善に関し、バイパス手術はステントを用いた 冠動脈形成術よりも優れている、という報告がCirculationオンライン速報 9月16日版に 掲載された。988人の患者にこれらどちらかの治療法を行った無作為試験の解析の結果、 19の質問に対する回答により評価した患者の「QOL」はどちらの治療法においても改善 していた(0から100までの尺度で評価し、全体のスコアは術前の14.3から術後一年の 時点で38.2まで上昇した)。しかし群別に評価したところ、バイパス術を施行された 患者群におけるスコアの上昇の方がはるかに大きかった。この結果は、血行再建術の 治療法を決断する際に、さらに考慮すべき材料を提供している。

スタチン療法の効果は冠動脈動脈硬化性プラークの構造変化も含む [2003-09-30]

Effects of statin treatment include structural change in coronary atherosclerotic plaques
スタチン系薬剤の臨床効果は冠動脈動脈硬化性プラークの良性の構造変化を起こすことも 一因をなしている、とEuropean Society of Cardiology 学会において発表された。 日本の研究者らは経皮的冠動脈形成術目的で入院した患者連続42人を研究に組み入れた。 ベースラインの時点で冠動脈形成術の目標部位以外の冠動脈を血管内超音波信号解析にて 解析した後、患者をアトロバスタチン投与群またはスタチンを投与しない群に割り付けた。 6ヵ月後、プラークの信号はスタチン群において有意に改善していた。 つまり、線維組織の増加によるプラークの構造の安定化が認められた。LDLコレステロールが より低下するほどプラーク構造がより改善していた。プラークの容積自体の変化はいずれの 群においても認められなかった。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬は冠動脈疾患の高リスクの患者のみならず低リスク患者にも利益をもたらす可能性がある [2003-09-22]

Angiotensin-converting enzyme inhibitors may benefit low-risk patients with coronary heart disease as well as high-risk patients
アンジオテンシン変換酵素阻害薬ペリンドプリルは、高リスク及び低リスクいずれの冠動脈疾患患者においても心血管有病率および死亡率のリスクを低下させる可能性があるとのEuropean Society of Cardiologyの研究結果が発表され、Lancetからオンラインで公表された。安定冠動脈疾患患者におけるペリンドプリルの心イベント減少効果を調査したヨーロッパのトライアル(EUROPA study)において、低リスクの患者12,000人はペリンドプリルまたはプラセボ群に割り付けられ、約4年間追跡調査された。その結果、心筋梗塞および心血管死亡率はペリンドプリル群(488人、8%)においてプラセボ群(603人、10%)より低かった。筆者らは、心不全徴候の認められない低リスクの冠動脈疾患患者においてもペリンドプリルを処方内容に加える必要がある、と力説している。

運動後の心拍数回復は冠動脈造影所見に関係なく死亡率を予測する [2003-09-22]

Heart rate recovery after exercise predicts mortality independently of findings on angiography
運動負荷試験後の心拍数が上昇している患者は心拍数の回復が正常の者と比較し死亡率が倍である、とJournal of the American College of Cardiology 9月3日号に掲載された。研究者らは冠動脈疾患疑いで運動負荷試験を受け90日以内に冠動脈造影を施行された患者2,935人を解析した。心拍数回復の異常は運動中止後の心拍数の減少が1分間に12心拍以下と定義した。6年後、336人(11%)の患者が死亡した。心拍数回復異常のハザード比は2.5であり、血管造影における重症冠動脈疾患のそれは2.0であった。編集者は、この研究により運動に対する反応は独立した冠動脈疾患の危険因子である、と述べている。

週60〜90分の運動を行うだけで本態性高血圧患者の収縮期および拡張期血圧降下作用が認められる [2003-09-16]

As little as 60 to 90 minutes of exercise per week can reduce systolic and diastolic values in people with essential hypertension
週60〜90分の運動を行うだけで本態性高血圧患者の収縮期および拡張期血圧降下作用が認められる、という報告がAmerican Journal of Hypertension 8月号に掲載された。日本の研究者らは、高血圧以外は健常である者207人を週30〜120分までの運動を8週間行う4群に振り分けた。運動を週に61〜90分行った群は30〜60分行った群と比較し、より降圧効果が認められた。それ以上長く運動をしてもより多大な効果は認められなかった。この結果から医師らは高血圧患者に対し運動療法を奨励するであろう。筆者らは、運動量と健康に対する利益の比率は他の心血管疾患のリスクファクターとは異なる可能性があることを強調している。

グルコース−インスリン−カリウム療法は心不全の徴候のない心筋梗塞後の死亡率を有意に減少させる [2003-09-16]

Glucose-insulin-potassium infusion significantly reduces mortality after myocardial infarctions without signs of heart failure
心不全の徴候のない心筋梗塞患者においてはグルコース、インスリン、およびカリウムの静脈内注入療法により死亡率がほぼ4分の3減少する、という報告がJournal of the American College of Cardiology 9月3日号に掲載された。オランダの研究者らは心筋梗塞で入院し同日の血管形成術の効果を評価された940人の患者に対し、注入療法を施行する群または施行しない群に無作為に割り付けた。30日間の死亡率には差はなかったが、患者全体の90%を占める、入院時に心不全の徴候のない患者における解析では、注入療法の明らかな効果が認められた(1.2%対4.2%)。同誌の編集者は、この研究を基準としこの結果を確認するさらなるトライアルや、早期のこの注入療法がさらに利益をもたらすかどうかを調査するよう呼びかけている。

スタチン治療により改善した冠動脈血流の検索に対し心臓スキャンは単にコレステロールレベルをモニターするよりも優れている [2003-09-09]

Heart scans may detect improved coronary blood flow related to statin therapy better than merely monitoring cholesterol levels
心臓スキャンは、スタチン治療によるコレステロールレベルの変化の観察のみでは明らかにできない冠動脈血流の改善を検索できる可能性がある、という報告がJournal of the American College of Cardiology 8月20日号に掲載された。プラバスタチン治療開始後6ヵ月間の心筋血流とコレステロールレベルを比較したパイロット研究の結果である。コレステロールレベルは6週後までに低下し始めたが、血流は6ヵ月後になって初めて有意な改善が認められ、その効果の遅延は大規模研究で認められた心筋梗塞および心臓死の減少のタイミングと同様の傾向を示した。編集者は今後のトライアルにおいてもスキャン検査を導入し予後を評価することを勧めている。彼らは、スタチン系薬剤は近年、より多くの患者により長期間使用されているため、スタチン系薬剤の効果のメカニズムに関する新たな情報が得られることは歓迎されるべきことである、と述べている。

新たな評価法により新規発症心房細動患者の脳卒中および死亡のリスクが予測できる [2003-09-09]

A new assessment tool can predict risk for stroke or death for patients with new-onset atrial fibrillation
新たな評価法により新規発症心房細動患者の脳卒中および死亡のリスクが推定できる、という報告がJournal of the American Medical Association 8月27日号に掲載された。フラミンガム心臓研究の研究者らは868人の患者のデータを使用した。その評価スコアは、高齢、女性、収縮期高血圧、脳卒中または一過性脳卒中の既往、および糖尿病の5つの因子を含んでいた。この評価スコアを使用した結果、これらの患者の14.3%は5年間の脳卒中発症のリスクが7.5%以下、30.6%においてはそのリスクが10%以下と予測された。このスコアの有効性が今後証明されれば、抗凝固療法を使用すべきか、また手術や他の手技のために抗凝固療法を中止可能であるかなどの判断をする際に役立つであろう。

冠動脈疾患患者の10人中8人以上が主な危険因子を少なくとも一つ有している [2003-09-02]

More than 8 of every 10 patients with coronary heart disease have at least 1 major risk factor
冠動脈疾患患者の10人中8人以上が冠動脈疾患の主な4つの危険因子(喫煙、高コレステロール血症、高血圧、あるいは糖尿病)のうち少なくとも一つを有している、という報告がJournal of the American Medical Association 8月20日号に掲載された。研究者らは、21年以上追跡調査した大きな3つの研究の対象となった成人約387,000人のデータを解析した。これらのうち、致死性冠動脈疾患を有した者の87〜100%が少なくとも一つの危険因子を有していた。非致死性冠動脈疾患を有した患者群における同割合はベースライン時の年齢40〜59歳の男性で92%、同年齢の女性で87%であった。編集局は、患者の大部分が実に一つ以上の危険因子を有していたとのこの結果から、危険因子の存在を発見すること、および危険因子を最小にするあるいは軽減させることの重要性が注目される、と強調している。

レプチンレベルをコントロールすることによる減量は将来の左室肥大治療の基本となる可能性がある [2003-09-02]

Weight loss through manipulation of leptin levels may be foundation of future therapy for left ventricular hypertrophy
マウスを使用した実験結果から、レプチンレベルをコントロールすることによる減量は将来の左室肥大治療の基本となる可能性がある、という報告がCirculation 8月12日号に掲載された。レプチンまたはその受容体を発現させる遺伝子を欠失したマウスは、正常に発育したマウスと比較し、生後6ヵ月までに肥満となり左室肥大を有した。カロリー制限による減量は左室肥大に何の影響も及ぼさなかったが、レプチン注入による減量により左室肥大および個々の細胞の肥大を減少させた。現在進行中の研究により、人におけるレプチンと肥満に関与する分子学的経路が評価され、これらのマウスの結果を臨床に拡大できる一歩となる可能性がある。
 

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