選択的エストロゲン受容体変調薬は、乳がんのリスクは軽減するがホルモンの効果は維持でき、閉経前後の治療薬として第一選択薬となりうるとの結果が、CANCERオンライン版では12月中旬から掲載されプリント版では1月1日号に掲載される。最近の論文をもとに筆者らは、エストロゲンの骨、脂質そして中枢神経系に対する有益な効果は維持し、乳房や子宮内膜組織においてはエストロゲン拮抗薬として働く調節薬系統の新たな薬剤の開発が研究の大きなゴールであると考えた。新たな薬剤はさらに、Women’s
Health Initiative trialにおいてホルモン補充療法を中止せざるを得なくなった原因である冠動脈疾患や脳卒中の発症率の増加も回避できる可能性がある。
悪性黒色腫に対する新たなマーカーにより術後予後の良好な患者を同定できる可能性がある、という後ろ向き研究結果がJournal
of the National Cancer Institute 12月4日号に掲載された。研究者らはstage
I、II、およびIIIの黒色腫患者の検体のHDM2分子をアッセイした:10年間の追跡調査を行ったところ、同分子が低レベルであった患者の53%に再発が認められたのに対し、高レベルの患者ではその率が28%であった。さらに低レベルであった患者の55%、高レベルであった患者の38%が死亡した。このマーカーによる予後評価は腫瘍の厚さなど他の因子とは独立したものであった。このマーカーを使った前向き臨床試験が開始された。
急性骨髄性白血病患者に対してペプチドワクチンを接種することにより、白血病細胞に対し特別な高活性の免疫性を産生し、寛解に導くことが可能であるとの報告が第44回American
Society of Hematology学会で報告された。パイロット研究において、9人の患者に対し3種類の用量(0.25
mg、 0.5 mg、または1.0 mg)のPR1ペプチドワクチンの週1 回3週間の接種が行われた。それぞれの群において3人中0人、3人中1人、3人中3人が寛解に導かれた。T細胞の解析の結果PR1を標的とした免疫反応が観察された。筆者らは、この骨髄性白血病における有効な免疫療法に対するさらに大規模な研究を行う必要があると述べている。
レプチンはヒト乳がん細胞の成長を促すが、これが肥満と乳がんの関係の基本になっている可能性があるというin
vitroの実験結果がJournal of the National Cancer Institute 11月20日号に掲載された。研究者らは、レプチンにより培養された正常および悪性のヒト乳房上皮細胞の接着依存性増殖が増強されることを示した。一方、レプチンはさらにがん細胞の接着非依存性増殖も非常に(81%)増強したが、ヒト正常細胞に対しては接着非依存性増殖に対して影響を与えなかった。後者の結果から、肥満と肥満女性においては早期にがん転移が起こりやすいことの関係を説明できる可能性がある。
中年の喫煙者に対し胸部高速らせんCT撮影を施行したところ、通常のX線撮影の2〜4倍多く肺がんを発見できた、という報告がAmerican
Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 11月1日号に掲載された。さらにこのCTで診断された腫瘍の70%以上がまだstage
Iのものであった。筆者らはさらなる前向き試験を行い、この早期発見が特に切除可能な非小細胞肺がんまたは限局型小細胞肺がんの患者の予後改善に結びつくか否かを確認する必要がある、と述べている。そして現段階ではやはり禁煙が肺がんを予防する唯一の最良の手段であると強調している。