ホルモン補充療法は乳がん患者の予後に対し悪影響を及ぼさない、という報告が Archives of Surgery
9月号に掲載された。米国の研究グループは閉経後女性292人の記録を解析した。ホルモン補充療法を受けた者と受けていない者とで診断時年齢、腫瘍サイズ、腫瘍細胞の認められるリンパ節数、またはstage
IVを有する患者の割合に差はなかった。診断法としてマンモグラフィーと触診を比較した場合、マンモグラフィーで腫瘍が発見された割合はホルモン補充療法群で高かった(58%対42%)。マンモグラフィーで腫瘍が発見された群の6年生存率は94%であったが、触診で発見された群では78%であった。
北米、ヨーロッパ、アジアで行われた新たな研究の解析によると、住居のラドンへの曝露による肺がんのリスクは過去に考えられていたよりも明らかに高い可能性がある、という報告が
Journal of Exposure Analysis and Environmental Epidemiology
5月号に掲載された。研究者らは過去の研究で用いられた曝露に対するいくつかの評価法で検査し、これらのモデルと、人が住居内の様々な場所への移動に伴いラドンに曝露されることに対する包括的な評価法とを比較した。筆者らは、たとえラドンに曝露されている人々が米国の肺がん人口の12%にすぎないとは言え、ラドンは年間19,000例もの肺がんを誘発している重要なリスクファクターであると述べている。
マウスの実験によると、ある薬剤を使用することによって放射線照射後の雌の生殖力が子孫の遺伝子を損傷することなく保護される可能性がある、という報告がNature
Medicine 9月号に掲載された。研究者らはスフィンゴシン1リン酸を投与し放射線照射を施行されたマウスは、いくつかの規準で評価したところ遺伝子的に正常とみなされる仔を産み、さらに数世代にわたって遺伝子は正常であることを発見した。その薬剤は、放射線療法や化学療法の副産物である脂質セラミドの働きを阻害しアポトーシスの初期段階を妨害する
ことによって、卵細胞を保護するものと思われる。
高でんぷん食はある女性群では膵がんのリスクを上昇させる可能性がある、という報告がJournal
of the National Cancer Institute 9月4日号に掲載された。看護師約89,000人のデータが解析された。肥満かつ座業の女性で糖質の多い食事を摂っている女性は、糖質の少ない食事を摂っている女性に対し、膵がんを発症する確率が2.5倍高かった。興味深いことに均整のとれた体格の女性は糖質の多い食事を摂っても膵がんのリスクは上昇しなかった。筆者らは、肥満群においてインスリンが過剰に分泌されることにより膵がん細胞の成長が刺激される可能性を示唆している。彼らはさらに、膵がんのリスクファクターとなりうる変更可能な(食事)因子が存在するかを実証する大規模試験が必要である、と述べている。
イマティニブは切除不可能あるいは転移性の進行性消化器系間質性腫瘍患者54%において、腫瘍サイズを50%以上縮小させる持続的な効果を有する、とthe
New England Journal of Medicine 8月15日号に掲載された。オープンラベル法による第II相無作為臨床試験において、147人の患者はイマティニブ400mgまたは600mg1日投与群に振り分けられた。同薬に対する腫瘍の反応は46週以上持続したが、平均持続期間はこの論文が出された段階ではデータ解析がなされていなかった。筆者らは、イマニティブのようなチロシンキナーゼ阻害薬は、従来の治療法に抵抗性のがんに有効であろうと述べている。
米国の研究チームは副甲状腺ホルモン関連ペプチドと呼ばれる有力な自然発生血管新生阻害物質を同定した、とNature
Medicine 8月19日オンライン版に掲載された。ある悪性腫瘍によって大量に産生されるそのペプチドはプロテインキナーゼAを活性化させることにより血管内皮細胞の遊走および血管新生を抑制する。プロテインキナーゼは細胞の増殖や遊走を制御する蛋白である。その研究チームは現在、悪性腫瘍関連血管内皮細胞を刺激するペプチドを伝達する、生物合成化合物の開発に取り組んでいる。