閉経後のエストロゲン感受性の乳がん患者が術後化学療法を受けてもその効果は認められないようである、という報告がJournal
of the National Cancer Institute 7月17日号に掲載された。しかし、エストロゲン受容体陰性の腫瘍に対し化学療法を施行された患者においては、施行されなかった患者と比較し再発率が低く5年以上生存する確率が高かった。リンパ節転移のない患者1,669人がこの研究に登録され、そのうち約75%がエストロゲン受容体陽性の腫瘍を有していた。これらの患者における5年間無病率は化学療法無施行群で85%、施行群で84%であった。全体の5年生存率はそれぞれ95%、93%であった。
成人軟部組織肉腫を遺伝子指紋法により解析することで診断が改善され、さらに集中した治療が可能になるとAmerican
Society of Clinical Oncology で発表された。Robert Maki博士らは52検体を検査し、約12,500の遺伝子発現型を解析した。その技術を利用することにより既知の異常遺伝子を有する軟部組織腫瘍を容易に同定することが可能であった。さらに博士らはある種の悪性繊維性組織球症を区別し、その一部は明らかな亜型を構成していることを発見した。将来個々の腫瘍の遺伝子指紋を診断時に解析することにより、種々の治療に対する腫瘍の反応を治療開始前に予測することが可能になるであろう。
閉経後エストロゲン補充療法のデータによると、ホルモンの使用により卵巣がんのリスクが上昇することが示された、という報告がJournal
of the American Medical Association 7月17日号に掲載された。米国の研究者らは44,241人の女性を約20年間追跡調査し、その結果、エストロゲンのみの補充療法を受けた女性はホルモン補充療法を受けていない女性と比較して、卵巣がんのリスクが60%高いことを見出した。ホルモン補充療法の期間が長いほど、リスクは上昇した。エストロゲン―プロゲステロン併用療法については観察期間が短期間のため結果を導くことはできなかった。同誌には、併用ホルモン補充療法と長期のがんのリスクについての追加注目記事が掲載されている。
進行頭頚部がんに対する術後放射線照射への追加化学療法は利益をもたらさない、という報告が米国臨床がん学会(American
Society of Clinical Oncology) において発表された。米国のArlene Forastiere博士らは407人の患者を評価した。すなわち、術後において一方の患者群は放射線照射を受け、他の群は放射線照射およびシスプラチン投与の併用療法を受けた。2年後、両群間においてcancer-freeの患者の割合および生存率に差はなかった。博士らは、患者の多くがシスプラチンの副作用で辛い思いをしており、今後は腫瘍を標的とした薬剤または他の方法を試すような化学療法の研究をすべきであろう、と述べている。
進行前立腺がんの患者はGleason gradingおよび分子生物学的検査で同定できる、という報告が Cancer
6月15日号に掲載された。研究者らは、悪性細胞周囲の結合組織を破壊し腫瘍の浸潤に不可欠な酵素カテプシンBと、その阻害酵素ステフィンAの割合を、がん患者97人および良性の腫大の患者8人の検体について計測した。カテプシンBのステファンAに対する割合は転移性悪性腫瘍において、転移のない腫瘍と比較して有意な上昇を認めた。組織病理学的検査と分子生物学的検査を組み合わせることにより、どの症例が進行性でさらに侵襲的な治療を要するかを医師が決断できる可能性がある。
鎮痛薬を直接脳脊髄液内に投与することが可能な埋め込み型ポンプは、疼痛の除去およびQOL全体を改善する、という報告がAmerican
Society of Clinical Oncologyの年次会議で発表された。経口鎮痛薬では疼痛を処理できないさまざまな種類のがん患者200人以上が、埋め込み型ポンプあるいは経口薬投与継続群に割り付けられた。6ヵ月後の時点でポンプ群の54%、経口薬群の37%が生存していた。生存率の差だけでなくポンプを埋め込まれた患者においては疼痛が軽度で薬物による副作用も少なかった。Peter
S. Staats博士らは、埋め込み型ポンプによる鎮痛薬投与により末期がん治療の型が変わりうる、と述べている。
米国人女性10,000人以上のデータを解析した結果、短期および長期の経口避妊薬内服と乳がんのリスクには関連はないことが示された、という報告がNew
England Journal of Medicine 6月27日号に掲載された。The Women's Contraceptive
and Reproductive Experiences (Women's CARE) スタディでは35〜64歳の白人およびアフリカンアメリカンの女性を含んでいたが、閉経後に経口避妊薬をホルモン補充療法として内服したことによるリスク、あるいは利益に関しては焦点を当てていない。複数の研究から、経口避妊薬を内服することにより、子宮内膜がんおよび卵巣がんのリスクを40%まで低下させるとの結果が示された。
腫瘍細胞の遺伝子発現によりびまん性大細胞リンパ腫が化学療法により治療しやすいかどうかが予測できる、という報告がNew
England Journal of Medicine 6月20日号に掲載された。研究者らは240の生検検体のプロファイルを調べ、その結果化学療法後の生存を予測する17の遺伝子を同定した。Louis
M. Staudt博士らが作成した計算式により腫瘍サイズが同等な患者を4群に分類したところ、化学療法後の5年生存率はそれぞれ73、71、34、15パーセントであった。遺伝的な予測因子はまた、化学療法で治療されたものの国際予後係数(International
Prognostic Index)によると予後不良である患者も同定した。
オメガ3脂肪酸の大腸がん予防効果は細胞の過剰増殖阻害によるものである、という報告がJournal
of Cell biology 6月10日号に掲載された。研究者らはトランスジェニックマウスを使用して、プロテインキナーゼCβUが細胞過剰増殖と発がん性物質への感受性に関係があり、オメガ3脂肪酸を投与されていたマウスにみられたようなプロテインキナーゼCβUの低下は、有意に大腸がんのリスクを低下させることを発見した。筆者らは、同様の蛋白の上昇が他の多くのがんでも認められることを示し、従って食事や薬物がこれらの疾患の予防や治療の手助けになる可能性があると記している。