AHA Late-Breaking Clinical Trial特集


心臓突然死のリスク評価
心筋梗塞後時間が経過してから施行した血行再建術の結果
心房性ナトリウム利尿ペプチドと心筋梗塞後の予後
急性心筋梗塞に対する抗炎症療法
救急治療室での呼吸困難の評価
薬剤無効の心房細動に対する治療法の比較

 

12月5日のAHA特集はこちらをご覧ください。


ABCDトライアルの結果、心臓突然死のリスクは心電図のコンピュータ解析で有効かつ非侵襲的に決定できることが示された [2006-11-28]

ABCD Trial shows that risk for sudden cardiac death can be effectively and noninvasively determined with computer analysis of an electrocardiogram
心臓突然死のリスクは、T波交互脈検査と電気生理学的検査とで同様に良く評価できるとの最新臨床試験の結果がAmerican Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialのセッションで報告された。このABCDスタディでは植込み型除細動器の候補となっている患者における検査結果を比較した。患者566人(平均年齢65歳)のうち過去に不整脈を指摘された者は1人もいなかった。どちらかの検査において異常結果が出た患者が、除細動器を植え込まれた。いずれの検査結果も正常であった場合には選択性とした。最初の1年間の全体の不整脈イベントは7%であり、2年目のそれは13%であった。イベント発生率は両検査ともに陽性の場合に最も高く、両検査ともに陰性の場合に最も低く、どちらかの検査で異常の場合にはその間であった。興味深いことに、電気生理学的検査は9ヵ月後までのイベントは予測しなかったが2年間におけるイベントを予測した。一方T波交互脈検査は6ヵ月後の早い時期までの予測をしたが約12〜15ヵ月後にはもはや予測しなかった。筆者らは年に1回の検査が最も良いであろうと結論付けている。

TOSCA-2の結果、心筋梗塞後時間が経過してから施行したステント留置術では血流は回復させるが心機能は薬物のみの治療と比較し改善しないことが示された [2006-11-28]

TOSCA-2 shows that delayed angioplasty with stenting restores blood flow but does not improve ventricular function at one year versus medical therapy alone
TOSCA-2の結果、心筋梗塞後時間が経過してから施行したステント留置術では血流は回復させるが心機能は薬物のみの治療と比較し改善しないことが示された、とAmerican Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialのセッションで発表された。このTOSCA-2トライアルでは、慢性期血行再建術または薬物のみの治療の患者の心臓の機械的機能に対する影響を比較したものであり、このトライアルよりも遥かに大規模な閉塞動脈トライアル(Occluded Artery Trial :OAT)の患者の一部の381人を対象に行った。血行再建術群では慢性期血行再建術により梗塞責任動脈の93%が再開通され83%が1年後も開存したままであった。一方薬物療法群の開存率は25%であった。しかし、1年後の左室駆出率は両群間で差がなかった。研究者らは今後もフォローアップを行い、長期後にこれらの二群間に何らかの違いが生じるか否かを観察する予定でいる。

J-WINDトライアルの結果、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドは心筋梗塞サイズおよび心不全による再入院を有意に軽減させることが示された [2006-11-28]

J-WIND Trial shows that human atrial natriuretic peptide can significantly reduce myocardial infarct size and readmissions for heart failure
ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドは急性心筋梗塞に対し血行再建術を施行された患者の心筋梗塞サイズおよび心不全による再入院を有意に軽減させることが示されたとの最新試験結果が、American Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialのセッションで報告された。このJ-WINDトライアルでは1,216人の患者をナトリウム利尿ペプチド、ニコランジル、またはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。ナトリウム利尿ペプチドは点滴で3日間投与された。ニコランジルは初回投与量投与の後24時間持続点滴として投与された。研究者らは1,064人の患者の梗塞サイズおよび1,104人の患者の心臓死、心血管イベント、および心不全のエンドポイントについて解析した。ナトリウム利尿ペプチドは梗塞サイズを約14.7%減少させ心不全による再入院を83.6%減少させた。ニコランジルは心臓死を38%減少させたがプラセボと比較し梗塞サイズおよび全生存率は改善させなかった。

APEX AMIトライアルの結果、pexelizumabによる抗炎症療法は急性心筋梗塞に対し血行再建術を施行される患者の予後を改善しないことが示された [2006-11-28]

APEX AMI Trial suggests anti-inflammatory therapy with pexelizumab fails to improve outcome in patients receiving angioplasty for acute myocardial infarction
治験薬pexelizumabを用いた抗炎症療法は通常の治療と比較し急性心筋梗塞に対する血行再建術後30日間の罹患率および死亡率を改善しないとの最新臨床試験結果が、American Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialのセッションで発表された。このAPEX AMIスタディはST上昇梗塞患者5,745人(平均年齢61歳)を、血行再建術施行10分前にいずれかの用量のpexelizumabまたはプラセボを静脈内投与開始し24時間継続する群に無作為に割り付けた。一次エンドポイントである30日間の総死亡率はプラセボ群で3.92でありpexelizumab群では4.06であった。死亡、うっ血性心不全、またはショックを合計した発生率はプラセボ群で9.19、pexelizumab群で8.99であった。時間、年齢、性別、梗塞部位、またはKillip分類によるサブ解析でも有益性のエビデンスは認められなかった。

IMPROVE-CHFトライアルの結果、N末端proB型ナトリウム利尿ペプチドは急性非代償性心不全の患者を検出するのに役立つことが示された [2006-11-28]

IMPROVE-CHF Trial shows that blood test for N-Terminal proB-type natriuretic peptide helps identify patients with acute decompensated heart failure
血液検査によるN末端proB型ナトリウム利尿ペプチドの測定が急性非代償性心不全の患者を検出するのに役立つことが示されたとの最新臨床試験結果が、American Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialのセッションで発表された。このPhase IV試験では呼吸困難の評価をされた患者501人(平均75歳)を対象とした。初回診断は一般医の判断に基づきなされ、その後検査結果を知らされていない循環器医が確定診断を下した(採血は救急治療室で施行し入院した患者については入院72時間後にも施行した)。検査後患者を通常の治療または検査結果に基づき治療をする群に割り付けた。最終診断が急性非代償性心不全であった患者227人のペプチド中間値は3,717pg/mLであり、他の患者のそれは340pg/mLであった。研究者らは初回のペプチドレベルが10倍上昇するごとに60日後の死亡および再入院のリスクが41%上昇することを明らかにした。

心不全を伴う薬剤無効の心房細動患者に対する治療として、肺静脈洞隔離アブレーション法は房室結節アブレーションと両心室ペーシングの併用よりも優れている可能性がある [2006-11-28]

Pulmonary vein antrum isolation may be superior to atrioventricular node ablation with biventricular pacing for drug-resistant atrial fibrillation in patients with heart failure
心不全を伴う薬剤無効の心房細動患者に対する治療として、肺静脈洞隔離アブレーション法は房室結節アブレーションと両心室ペーシングの併用よりも優れている可能性があるとの最新臨床試験結果が、American Heart Association学会Late-Breaking Clinical Trialのセッションで発表された。施術を施行する群に無作為に割り付けられた患者71人中、35人が肺静脈洞隔離術を36人が房室結節アブレーションを施行された。患者は医師の判断により抗不整脈薬を継続することができ、また肺静脈洞隔離術施行群の患者は2ヵ月後に施術の再施行が許可されていた。6ヵ月後、隔離術群ではアブレーション群と比較し全ての一次エンドポイント(quality of lifeスコア[61対79]、6分間歩行距離[345m対301m]、および左室駆出率[35%対29%])において改善を認めた。心房細動に関する結果はさらにかなり劇的であった。つまり、隔離術施行群の患者の89%(74%は抗不整脈薬の使用なし)において心房細動を認めなかった。アブレーション群の患者のうち心房細動を認めないと考えられる者はいなかった。



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