バソプレッシン受容体拮抗薬tolvaptanは急性非代償性心不全を改善するが長期予後は変化させない、とのlate-breaking
trial の結果がAmerican College of Cardiology学会で発表された 。このphase IIIのEVERESTトライアルにおいては4,133人の患者が標準的な治療を受け、入院から48時間以内に経口薬tolvaptan1日30mgまたはプラセボを開始し最低60日間継続する群に無作為に割り付けた。その結果、tolvaptanは、1日目の患者の自覚的な呼吸困難および体重、そして7日目における浮腫を有意に改善した。フォローアップ期間中央値9.9ヵ月の死亡率はtolvaptan群で25.9%でありプラセボ群では26.3%であった。心血管死および再入院の複合エンドポイントに達したのはtolvaptan群で42%でありプラセボ群では40.2%であった。興味深いことに、ベースライン時点で低ナトリウム血症を有していたサブグループにおいては、7日目における血清ナトリウムの改善度がより大であり、その治療効果は40週間維持された。
心電図検査においてT-wave alternansの存在を確認することにより植込み型除細動器の有益性が最も認められる人々を同定することができる、とのlate-breaking
trial の結果がAmerican College of Cardiology学会で発表された 。この ALPHAトライアルでは非虚血性の心筋症患者446人を対象とした。これらの患者は全て左室駆出率が40%未満であり、過去に悪性の不整脈は認められていなかった。患者は検査を受けた後18〜24ヵ月間フォローされ、総死亡率および突然死率に加え心臓死および生命に関わる不整脈の合計の発症率に関して評価された。その結果研究者らは、この検査で異常が認められた患者(65%)は心室性不整脈および心臓死の確率が4倍高いことを見出した。またこのトライアルから、この検査結果が正常であった患者(35%)は予後が非常に良好であり、したがって植込み型除細動器の恩恵を受けにくいことが示された。
スタチン療法は、たとえ頸動脈疾患の早期の徴候のみを認め冠動脈疾患のリスクの低い患者であっても陽性の効果をもたらす、とのlate-breaking
trialの結果がAmerican College of Cardiology学会で発表された。24ヵ月間にわたるMETEORトライアルにおいて、フラミンガムにおける10年のリスクが10%未満であり最大頸動脈内膜中膜厚が1.2〜3.5mmの無症状の成人984人をロスバスタチン1日40mgまたはプラセボ群に無作為に割り付けた。スタチン治療により、低密度コレステロールは48.8%減少し、高密度コレステロールは8.0%増加した。これらは両者ともプラセボと比較し有意な差を示した。このトライアル期間中に、スタチン療法群は平均の最大頸動脈中膜内膜厚は年に0.0014mm減少する計算となり、一方プラセボ群においては年間0.0131mm進行すると計算された。
CSL-111(rHDL)を点滴投与することにより急性冠症候群発症から間もない患者の冠動脈プラーク容積が低下する可能性がある、とのlate-breaking
phase II trialの結果がAmerican College of Cardiology学会で発表された。計183人の患者がプラセボ、あるいは40mg/kgまたは80mg/kgのCSL-111の投与を受けた。CSL-111の高用量は一過性の肝機能異常のため中断された。低用量のCSL-111は安全であり忍容性は概して良好であった。2回の連続した超音波検査を施行された患者145人の解析の結果、CSL-111群においては点滴後の冠動脈プラーク容積が3.4%、プラセボ群においては1.6%減少しており、差が認められたが有意ではなかった。しかし、ベースラインと比較した場合、CSL-111群では有意な減少を認めたがプラセボ群では有意な減少は認められなかった。このCSL-111とプラセボの定量的血管造影スコアの差は、2年間にわたるスタチン療法とスタチンを使用しない療法を比較した結果と同様であった。
完全に生体に吸収される薬剤溶出ステントは、その分野では最初の臨床試験の予備結果によると有望であることが示された、とAmerican
College of Cardiology学会で発表された。このABSORBトライアルは、各国最高60人までの患者を対象とした現在進行中の非無作為化オープンラベル試験である。主要なエンドポイントは重大な心血管有害事象および30、180、270日後および1年毎最高5年間のステント内血栓症発症率である。最初の患者30人の6ヵ月間の結果は、ステント内血栓症は認められず虚血性主要心臓イベント発症率は3.3%であった:一人はnon-Q波心筋梗塞を発症し最初にインターベンションを行なった部位を再度治療した。ステント留置成功率は93.5%であった。