Stefanis博士によると、精神分裂病はよくみられる精神疾患であるが、実際には患者が精神症状を呈するかなり以前から前兆が生じ、発病しているという。分裂病型人格障害と精神分裂病には関係があることが知られている。Stefanis博士は、分裂病型人格が精神分裂病の危険因子であるか否かについて問題提起した。
分裂病型人格は多くの要素から定義される。Stefanis博士らの研究グループにより、分裂病型人格障害の各特徴を評価する質問票が作成された。研究対象はギリシア軍の徴兵軍人で、前方視研究に対して1,412名が現在同意している。
対象者は分裂病型人格質問紙票を手渡され、また、認知検査(Raven、言語的・空間的記憶など)、眼球運動検査、精神症状評価、血中catechol-O-methyltransferase遺伝子測定による遺伝マーカー評価、最後に知覚異常スケール検査が施行される。
質問紙票の結果は因子分析され、「陽性」「陰性」「妄想」「解体」の4因子が抽出された。質問紙票の得点は、その時の被験者の状態(不安、疲労などを含む)に強く影響されることが判明した。
「陰性」因子は、持続的な実行課題とワーキングメモリーの課題における得点の低さと関連していた。Stefanis博士によると、孤立しがちな(つまり「陰性」が高得点の)人は、これらの神経心理課題成績に影響を及ぼす障害を担っている可能性があるという。
両手利きと質問紙票の「解体」因子との間に関連が認められた。このことは、精神分裂病患者には脳の局在異常があるという所見に矛盾しない。
一般的にcatechol-O-methyltransferase対立遺伝子には2型あるといわれ、酵素活性が高いものと低いものがある。本研究から、遺伝子型と質問紙票得点、知覚異常スケール得点との間に関連があることが見いだされた。
Stefanis博士はこれらの所見をまとめ、健常青年男性において、分裂病型人格と神経精神的評価に関連があると述べた。分裂病型人格と両手利きに関連があり、また、分裂病型人格とcatechol-O-methyltransferase遺伝子型においても関連が認められた。これらの所見は、危険性を予測する手助けになるかもしれない。しかしながら、まず研究対象者が縦断的に研究される必要がある。