従来報告によれば、17-βエストラジオールはラットやヒトの培養神経細胞に対する毒性を中和する作用をもつことが示唆されている。しかし、より高い有効性を示し、おそらくアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経精神疾患に関連するその他のエストロゲンが存在する可能性もある。
そのような成分の一つとして、カテコールエストロゲンである2-水酸化エストラジオールが挙げられる。Vedder博士のラットの培養神経細胞を用いた研究では、2-水酸化エストラジオールはフリーラジカルによる神経毒性に対する防御効果をもつ可能性が示唆された
Vedder博士らは、培養の際に2-水酸化エストラジオールを投与することによって、17-βエストラジオールに比して、過酸化水素によるマウスの海馬における細胞死に対する防御効果が大きいことを見出した。
2-水酸化エストラジオールを加えて培養が行われた場合、その他のエストロゲンを加えた場合に比して、4時間後には細胞の高い生存率が観察され、Vedder博士はカテコールエストロゲンが神経防御効果をもつ可能性があると推察するに至った。
Vedder博士らが得たその他の所見から、カテコールエストロゲンの神経防御効果はフリーラジカルに対する中和作用によるものである可能性が示唆される。マウスの神経を鉄に曝露し、蛍光法を用いてフリーラジカル形成を測定すると、Vedder博士らは2-水酸化エストラジオールを加えた場合に蛍光強度の有意な減少を認めたが、17-βエストラジオールではそのような変化は認められなかった。
神経毒性のメカニズムについては、もうひとつの可能性として脂質の過酸化が挙げられる。これについては、マウスの海馬細胞において2-水酸化エストラジオール、17-βエストラジオールともに抑制効果が認められている。
Vedder博士は、in vitro(生体外)で彼や彼の同僚が観察した2-水酸化エストラジオールの神経防御効果は神経精神障害の治療に重要な関連性をもつと主張した。精神分裂病の精神病理の重症度と血中エストロゲン濃度が相関するといったいくつかの研究、大うつ病患者でカテコールエストロゲン代謝の異常についての報告、エストロゲン投与によるアルツハイマー病モデルにおける反応性の改善の報告など、支持する所見も認められている。