Bhagwagar博士は小規模ながら、うつ病におけるセロトニン機能についての重要な研究を発表した。うつ病エピソードにセロトニンが役割を担っているというコンセンサスがある。Bhagwagar博士の研究グループは、うつ病が回復した後にセロトニン機能がどうなっているのか、セロトニン機能研究にどのプローブが有用であるかについて問題提起した。今まで多くの研究が施行されているが、忍容性と効用ともに優れたセロトニン機能プローブの報告はない。Bhagwagar博士のグループではプローブとしてcitalopramを試用した。
対象は46名で、うち14名は現在大うつ病症状を呈し、過去3ヵ月間無投薬であった。16名は過去に2回以上うつ病エピソードの既往があり、6ヵ月間以上うつ病症状を呈していない回復者、16名が健常対照者であった。
二重盲検法により、被験者はcitalopram10mgもしくは生理食塩水を静脈内投与された。注射後約150分間にわたり15分毎に血中プロラクチン値とコルチゾール値が測定された。生理食塩水投与時の値からcitalopram投与時の値を減算した結果が提示された。
ベースラインにおけるプロラクチン値とコルチゾール値は3群間において相違なかった。現在うつ病である対象者とうつ病回復者ではcitalopram注射後のプロラクチン値とコルチゾール値が対照者に比べて有意に低値であった。Citalopram注射後のプロラクチン値はうつ病回復者と現在うつ病患者で相違なかった。さらに、うつ病回復者のcitalopram注射後のコルチゾール値は、現在うつ病である対象者と健常対照者の値の中間に位置した。
セロトニン機能異常はうつ病急性期だけでなく、臨床的には回復に至った後でさえ持続する可能性があるとBhagwagar博士は推定している。さらに、citalopramはセロトニン機能プローブとして有用である可能性がある。