通常は血中の鉄が脳へ取り込まれる量はごくわずかである。定型的抗精神病薬への曝露により、脳血流関門での鉄輸送と脳への鉄の蓄積は高まるという。
脳の各部位への鉄の蓄積。サル、イヌ、ラットでの実験結果より。
Youdim博士はラットにクロルプロマジンと鉄を同時に投与し、脳での鉄輸送が高まることと、皮質ニューロン、淡蒼球、黒質に鉄が多く蓄積することを観察した。これはclozapineを投与した個体ではみられない現象であった。
同様に、ハロペリドールを投与したサルにおいても脳への鉄の蓄積が増えていた。鉄の蓄積はハロペリドールの投与量と投与期間に比例して増加していた。
クロルプロマジンやハロペリドールを投与したラットでは、肝臓の鉄が消費されていた。逆にclozapineを投与したラットでは肝臓への鉄の蓄積が増加した。
Youdim博士によると定型的抗精神病薬は肝臓で鉄と結合し、脂肪親和性の抗精神病薬―鉄結合体を形成して脳へ取り込まれ、ニューロン膜の鉄に対する透過性を増す。また、脳への鉄の蓄積はドーパミン受容体のアップレギュレーションを生じ、GABAニューロンの変性をきたし、結果として遅発性ジスキネジアという臨床上の問題を引き起こすのではないかという。