髄液中231リン酸化tauの測定の意義:アルツハイマー病診断および症状進行の評価の生物学的マーカー
Cerebrospinal Fluid Tau Protein phosphorylated at Threonine 231 is a potential biological marker for differential diagnosis and tracking of Alzheimer's disease progression
Prof. Dr. Harald Hampel
Munich, Germany, Presenter

MCIは健常者からアルツハイマー病へと移行する途中の病態と考えられている。MCIの病態を明らかにし、その予後を検討することはアルツハイマー病の病態解明、さらには早期診断、治療の観点からも意義深い。近年SANDWICH ELISA法により髄液中のすべてのタウ(total-tau)、さらにp-231tauについても測定が可能となった。Hampel博士らのグループは健常対照群、MCI群、アルツハイマー病群において髄液中tauを継続的に測定した。彼らはtotal-tauよりp- tau 231が感度、特異性において優れ、生物学的マーカーとして意義があることを指摘している。

鑑別診断の観点からアルツハイマー病、前側頭型痴呆(FTD)、レビー小体病、血管性痴呆、その他の精神神経疾患、および健常対照群において髄液中p- tau 231を測定したところ、アルツハイマー病において有意に上昇していることが確認された(図)。

特にFTDもtauopathyの1つであるが、鑑別が可能であった。さらにMCIでも他の群に比較して有意に上昇していることが確認されたが、アルツハイマー病群よりは低い値であった。p-tau231はMCIの病期からアルツハイマー病に進行するに従って一旦上昇するが、その後さらにアルツハイマー病が進行し、認知機能が低下していくに従って低下に転ずる。このp-tau231の低下は神経細胞死との関連があるのではないかと考えられる。

彼らはアルツハイマー病における生物学的マーカーの重要性について説明し、病態と関連が深く、非侵襲的で、簡易的な手法が望ましいことに言及した。p-tau231はそのような観点からも優れた手法の1つである。


レポーター:順天堂越谷病院精神科 柴田展人

 

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