精神分裂病の形態的イメージングに関しては過去10年間で220の報告があるが、その結果が異なっている場合もある。Sharma博士はMRIを用いた研究に焦点を当てた。
精神分裂病に関するあらゆる研究で、側脳室と第3脳室の拡大は一貫して報告されている。この拡大はしばしば精神分裂病の早期に現れるため、あるいはこれは精神分裂病発症前の先行する病態か、または遺伝的マーカーを示しているのかもしれない。脳全体の容積減少に関する見解は一致していない。
前頭葉の容積減少を報告している研究もある。Sharma博士のグループもまた、灰白質の両側性減少を伴う前頭前野の容積減少を報告している。しかしながら、一方では前頭皮質の増大を報告しているグループもある。この不一致、あるいはさらに他の研究間での不一致は、データの収集や解析方法に関する基準がないことや、脳の領域についての解剖学的境界が異なっていることによるとも考えられる。
また、左側ないし両側の側頭葉の容積減少を報告している研究もある。このことはあるいは重要な知見であるかもしれない。というのも、上側頭回の容積減少は幻覚や妄想といった精神分裂病の「陽性」症状と関連づけられてきたからである。側頭葉の容積と同様、海馬容積もまた、左側ないし両側で減少すると報告されている。
精神分裂病における脳容積異常の始まりと進展に関しては、研究結果は一致していない。報告によっては初回の精神病エピソードの間に異常を認めるとしているが、一方そうではないとする報告もある。脳容積の異常が疾患の経過とともに増大していくと考える研究者もいる。
ある研究では、18ヵ月間の定型抗精神病薬による治療で尾状核の容積が増大したとし、治療により精神分裂病の脳の構造的異常を引き戻すことが可能かもしれないと示唆している。この知見はさらに追認され、抗精神病薬を服用していた患者がベンゾジアゼピン系のクロナゼパムに変薬したところ、続く12ヵ月の間に彼らの尾状核の容積は減少したという。しかしながら、Sharma博士によると、脳容積の異常と薬物反応性が不良であることとの間に関連はあるかもしれないが、それ以外には脳容積によって薬物への反応性を予測することはほとんど不可能と思われる。