チオリダジンは、他の抗精神病薬(特にハロペリドールやリスペリドン)と比較して心電図上のQT間隔を延長させる。そのためチオリダジンのラベルには、心血管障害の発症リスクについての特別な注意書きが書かれている。
しかし、QT間隔の延長は心血管障害の発症リスクと関係するのだろうか?Hennessy博士と共同研究者らによる最近の研究では、QT間隔延長の程度と、心室性不整脈や突然死の発生との間に明確な量―反応関係は存在しなかった。
心血管障害のリスクを評価するために、Hennessy博士と共同研究者らは米国の記録を使用し、3種類の抗精神病薬(チオリダジン、ハロペリドール、リスペリドン)のうちどれか1種類で30日以上治療を受けている95,000人の精神分裂病患者における心血管障害について後方視的に調査した。彼らは7日以上clozapineで治療を受けている患者のサブグループにおける心血管障害についても確認を行った。
調査では91件の心室性不整脈もしくは心停止のエピソード(1.2件/1,000人/年)を確認した(これは他の薬でも報告されている範囲の発症率であった)。
心室性不整脈もしくは突然死のリスクはこれまで調査されたすべての薬と同等であり、投与量とは無関係だった。チオリダジン使用における心臓疾患の発症率は低用量、中用量、高用量と極高用量においても同じであった。
心室性不整脈もしくは突然死に関係するリスクファクターは、心不全や虚血性心疾患、その他の心疾患、また、過去30日間の抗不整脈薬、シサプリド、ループ利尿剤の使用などであった。
彼らが得た結果にはいくらかの制約があり、1つもしくはそれ以上の交絡因子を見逃している可能性もあるが、Hennessy博士と共同研究者らは、彼らが観察した心臓疾患の絶対的な発症率と彼らが同定したリスクファクターは他の研究で報告されているものと同様であることを指摘している。