McDonnell氏は、現在進行中の精神分裂病と体重増加に関する研究プロジェクトの予備段階での結果について述べた。彼女らのグループの調査では、精神分裂病患者の体重増加は一般的な健康上の不利益をもたらすだけでなく、QOLやコンプライアンスを低下させることを示唆している。
以前、この研究グループはBMI(body mass index)と不良な服薬コンプライアンスとの関係について分析を行った。その結果では、治療を受けていない精神分裂病患者の割合は、BMIの上昇とともに増加することがわかった。同様に服薬治療の中断や変更の頻度も体重やBMIの上昇とともに増加していた。
今回の研究で、McDonnell氏とその共同研究者らは治療の中止や変更がヘルスケアに及ぼす影響について検討した。特に、最近の体重増加が、精神分裂病患者の病院の緊急利用や救急サービスの利用に与える影響について評価した。これらの結果はWorld Congress of Biologic Psychiatryで発表されている。
データは、精神分裂病患者の病歴や治療パターンを含む、一般のヘルスケアに対する態度に関する8ページの自己記入式質問紙から得られている。約400人の患者がこの調査に参加し、質問には体重増加や緊急医療サービスの利用についての項目も含まれている。
患者は、最近6ヵ月の間に体重の増減があったか否か、もしあった場合にはどれぐらいであったかについて回答した。また、最近6ヵ月の間に病院もしくは緊急外来を訪れたかどうかについても回答した。
対象者全員における体重の変化の平均は、+4.5ポンド(2.0kg)であった(22%の患者では少なくとも15ポンド[6.8kg]体重が増加していた)。約24%の患者は病院を受診しており、26%は救急外来を受診していた。38%の患者は病院と救急外来の両方を受診していた。
体重増加の度合いは、緊急医療サービスの利用頻度と正の相関を示した。入院や救急外来を利用したのは、少なくとも15ポンド(6.8kg)体重が増加したと報告した患者の方が、体重増加がみられなかった患者よりも、統計学的に有意に多かった。
McDonnell氏とその共同研究者らは、緊急医療施設の利用に影響すると思われる体重増加以外の要因(年齢や性、人種、病気の重症度など)の影響を除くため、ロジスティック回帰分析を行った。その結果、体重増加とヘルスケアサービスの利用の増加との間に強い関連を認めた。
筆者らは、体重が1ポンド増加する毎に入院の可能性が1.04倍ずつ増加することを見いだした。救急外来の利用のオッズ比は1.02で、入院と救急外来両方の利用のオッズ比も1.02だった。
筆者らは、以上のような関連を説明しうるいくつかの可能性について言及している。病状の優れない患者はより病院や救急外来を受診する傾向が高くなるが、そこで精神科医は彼らの治療を他の治療法(例えば体重増加に影響を与える非定型抗精神病薬)に変更するのかもしれない。また、患者は現在の治療とは直接関係のない急速な体重増加の後で、緊急サービスを必要とする傾向が高くなっているのかもしれない。他の可能性としては、体重が増加してしまう患者は、治療を中断したり、症状が再燃もしくは悪化したり、病院や緊急外来サービスを必要とする傾向がより強くなるといったことも考えられる。
これらの可能性を解明するために、筆者らはコンプライアンスや薬物治療のタイプ、緊急医療サービスの利用を調べながら追跡調査を行う予定である。