Pemetrexed is as effective as docetaxel against recurrent non-small cell lung cancer with fewer side effects

Nassar Hanna, MD
Indiana University
Indianapolis, IN, USA

 
第39回ASCO年次総会での発表によれば、pemetrexedは再発非小細胞肺がんに対してドセタキセルと同程度に有効であるが、副作用はより少ないという。過去最大規模のこの第III相試験では、非小細胞肺がんで初期治療後に再発した症例に対する治療を評価するために571例をsecond lineの標準治療であるドセタキセルか、あるいはpemetrexedに無作為割り付けした。(Pemetrexedは葉酸生合成を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する。)効果が確認された奏効率は両群全体で7.9%であり、さらに病変の安定化は571例の内43%の症例に認められた。Pemetrexed群の奏効率(CR+PR)は9.1%であり、ドセタキセル群では8.8%であった。生存期間の中央値はpemetrexed群で8.3ヵ月、ドセタキセル群では7.9ヵ月であった。しかしpemetrexed群では、好中球減少に伴う発熱やGCS-Fの必要性、末梢神経障害、副作用管理目的の入院などが有意に低率であった。このため、「pemetrexedは再発非小細胞肺がんのある症例群に対しては、治療の選択肢の一つとしてじきにドセタキセルに取って代わるかもしれない」と研究総括医師のNassar Hanna博士は結論した。
 

Presence of sequence variations in DNA repair genes predicts survival in patients with non-small cell lung cancer

Sarada Gurubhagavatula, MD
Massachusetts General Hospital
Boston, MA, USA
 
ASCO年次総会での研究者の発表によれば、2つのDNA修復遺伝子のシークエンス内の変化の存在は、白金製剤の化学療法を受けた病期III・IVの非小細胞肺がん症例の生存期間を予言する。彼らは103例におけるXPDXRCC1の遺伝子多型を分析した。その結果、いくつかの特異的なDNA 変化が短い生存期間と相関性があるという所見に加え、variant sequenceの総数が短い生存期間を予言することを見出した。DNA変化のない場合の生存期間の中央値は20.4ヵ月であったが、1つのDNA変化(異型アリル)では16.6ヵ月、2つのDNA変化では11ヵ月、3つのDNA変化では6.8ヵ月であった。「症例の遺伝子変化に基づいて抗がん剤を選別するというコンセプトは比較的新しく、またたいへん興味深い。われわれは、いつの日かこの種の研究が化学療法の選択について医師と患者がより明瞭な理由をもって決定を可能にするようになることを期待している」と研究総括者のSarada Gurubhagavatula博士はコメントした。
 


Surgery followed by radiation may be major therapeutic advance for cancer patients with spinal cord compression

Roy A. Patchell, MD
University of Kentucky
Lexington, KY, USA

 
ASCO本会議(plenary session)の発表によれば、転移性腫瘍による脊髄圧迫の治療において従来推奨されてきた放射線単独療法よりも手術とその後に放射線療法を併用するほうがより有効である。総計101例の症例はすべての腫瘍を取り除き、早期の減圧を図り、そして脊髄を安定化させるために、放射線療法単独群あるいは手術療法を先行しその後放射線療法を行う手術併用群の2群に無作為割り付けされた。両群とも同一のステロイドのプロトコールを採用し、放射線照射の総量は両群とも30Gyであった。この結果、手術併用群は放射線療法単独群と比較して有意に長期歩行可能となった(126日 対 35日)。基本的に治療前は手術併用群では50例中16例が歩行不能であり、放射線療法単独群では51例中16例が歩行不能であった。しかし治療後は手術併用群で歩行不能であった16例中9例が再び歩行可能となったのに対し、放射線療法単独群では歩行不能であった16例中わずかに3例が歩行機能を回復したに過ぎなかった。「転移性腫瘍による脊髄圧迫の治療において、手術療法はここ30年における最も有意な進歩の1つである。このような適切な治療を行えば、多くの患者ががんの脊髄転移による対麻痺から開放されるだろう」と研究総括医師のRoy A Patchell博士はコメントした。
 


Genetic polymorphism predicts severe neutropenia on irinotecan therapy

Mark Ratain, MD
University of Chicago
Chicago, IL, USA

 
University of Chicago, Chicago, IllinoisのMark Ratain博士によれば、ある特異的なひとつの遺伝子変異がイリノテカンによる好中球減少に関する重要な決定因子である。UGT1A1 enzyme(uridine diphosphate glucuronosyltransferase:UDP、グルクロン酸転移酵素)はイリノテカンの活性代謝産物であるSN-38を不活化する酵素である。このUGT1A1 enzymeを産生する遺伝子に変異が起きると上記の事象が発現する。UGT1A1遺伝子が欠損するとSN-38が代謝されずにSN-38の暴露が遷延し、副作用が増強され得る。「このように遺伝的に重篤な副作用を受けやすい患者はイリノテカン以外の他の抗がん剤での治療がよいかもしれないし、あるいはイリノテカンの投与量を減らしたほうがよいだろう」とMark Ratain博士はASCOで述べている。UGT1A1遺伝子には30種以上の遺伝子多形が知られている。たとえばプロモーター領域のTATAboxにおいて野生型はTAリピートが6 formであるがUGT1A1*28ではTAリピートが1つ多い7 formである。7 formとイリノテカンの毒性から細胞を守る働きの低下とは相関がある。イリノテカンの治療を受けた61例中グレード4の好中球減少がみられたのは全体では8%だった。しかしTAリピートが1つ多い7 formであるUGT1A1 7/7 genotype症例でのそれは50%(3/6例)であったのに対し、UGT1A1 6/6 genotype野生型の症例では重篤な骨髄抑制はみられなかった。現在のところ変異のあるUGT1A1遺伝子多形を検出するキットは商品化されていないが、2年以内にはこの種のスクリーニングキットがひろく入手可能となろう。
 


Donor T cells can generate effective immune response against metastatic breast cancer

Michael Bishop, MD
National Cancer Institute
Bethesda, MD, USA

 
第39回ASCO年次総会での報告によれば、HLAがマッチしているT細胞は転移性乳がんに対して移植片対腫瘍効果(graft-versus-tumor response:GVT)を発揮するという。研究グループはこの第I相試験に転移性乳がん症例で多くの前治療を受けてきた13症例を登録した。患者に腫瘍量を減ずるための、そして細胞移植の前処置として骨髄非破壊的な化学療法施行した後、HLAが一致する血縁者からのT細胞除去造血幹細胞を輸注した。ドナーT細胞は別個に輸注した。第1回目のドナーT細胞輸注は造血幹細胞移植後42日目だったので、観察されたいずれの腫瘍縮小効果も化学療法のためというよりもむしろドナーT細胞による効果と思われた。抗腫瘍効果としてPR 4例、MR 4例、SDは3例に認められた。残りの3例の内2例はPD、1例は移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)で死亡した。「ドナーT細胞を定期的に輸注することで腫瘍を完全に排除することはできなかった。また生存期間を延長することもできなかった。しかしこの研究は免疫療法が乳がんの治療法として研究し続ける価値があるという希望を与えている。われわれの希望は、このアプローチが他の乳がんの治療法と併用して使用できるのではないかということである、と研究総括医師のMichael Bishop博士は述べた。
 


Magnetic resonance imaging of the breasts shows promise as a screening procedure for women with BRCA mutations

Mark E. Robson, MD
Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
New York, NY, USA

 
今年のASCOで発表されたいくつかの報告によれば、BRCA変異を有する女性に対しMRIは乳がんのスクリーニングとして有用な検査法である期待がある。BRCA変異が確認されている53症例を含む対象症例群の4年間に及ぶ研究において、MRIが異常を呈したことより12件の生検がなされ、その内2件はがんと診断された(2つともDCISであり、その内1件ではマンモグラフィーは陰性だった)。観察された感度は100%であり年1回のマンモグラフィー(感度は約80%)より優っていた。「しかし今回の研究での特異度は83%なので、もしもこのスクリーニングシステムが広く行われると多くの疑陽性が発生するだろう」と研究総括医師のMark Robson博士は認めている。また「現在のところMRIでは有意に疑陽性が多いので、日常臨床でMRIをルーチンに使用するのは限られる。またわれわれは乳がん罹患のリスクのある女性のQOLを考慮すると、これらの高感度/低特異度のスクリーニングテストの意味を明確にする必要があり、そうすることにより乳がん罹患のリスクのある女性はこのテストを受けるか否か決心しやすくなるだろう」とコメントした。オランダとドイツの研究者も乳がん高リスク例のスクリーニングにはマンモグラフィーよりもMRIが優れていることを今回のASCOで報告している。
 


Combination of cisplatin, 5-fluorouracil, and paclitaxel is more effective against locally advanced head and neck cancer than cisplatin and 5-fluorouracil

Ricardo Hitt, MD, PhD
Hospital 12 de Octubre
Madrid, Spain

 
CDDPと5-FUの併用療法にTXLを併用した症例では、標準的療法であるCDDPと5-FUによる2剤併用療法を受けた症例よりも長期生存し、発声機能や嚥下機能もより良好に保たれる。この欧州共同研究では色々なタイプの頭頚部がん384例を登録し、寛解導入療法として2つの治療法の内いずれかを無作為割り付けした。対象とした頭頚部がんは、特に咽頭、喉頭、口腔のがんであった。進行までの期間(time to disease progression)の中央値は3剤併用群で23ヵ月であり、標準療法の2剤併用群では18ヵ月であった。臓器温存は3剤併用群で88%の症例で可能であったが、2剤併用群では75%であった。副作用のパターンはいずれも同様であったが、重篤な(グレード3以上)粘膜炎は2剤併用群でより頻繁に認められた(23.3% 対 3.1%)。腫瘍組織サンプルの分析では、EGFR(epidermal growth factor receptor:上皮様増殖因子レセプター)の存在とTXLを含んだ3剤併用に対する良好な反応との間には有意な相関性が認められた。「この新しい3剤併用療法は頭頚部がんのあるサブグループ(たとえばEGFR発現症例)にはじきに標準治療になるかもしれない」と総括研究者のRicardo Hitt, MD, PhDはコメントしている。
 


Combination of cetuximab and irinotecan is more effective against metastatic colorectal cancer than cetuximab alone

David Cunningham, MD
Royal Marsden Hospital
Sutton, England

 
イリノテカン(CPT-11)の初期治療にもかかわらずPDとなった結腸直腸がん総計329例は、cetuximabとCPT-11の併用群(218例)またはcetuximab単独群(111例)に無作為割り付けされた。全症例ともその腫瘍組織は上皮増殖因子レセプター陽性であり、よって標的単クローン抗体であるcetuximabの治療に適格だった。腫瘍縮小はcetuximab単独群よりもcetuximab+CPT-11群で有意であった(10.8% 対 22.9%)。さらに無進行期間(TTP)と生存期間中央値(MST)もcetuximab+CPT-11群で良好だった(1.5ヵ月 対 4.1ヵ月、6.9ヵ月 対 8.6ヵ月)。重篤な副作用は併用群でより認められ(49.5% 対 65%)、この差は主にCPT-11に起因した。今回のASCO年次総会でこれらの成績を報告した研究総括者のDavid Cunningham博士は「これらの結果は標準治療にPDとなった転移性結腸直腸がん症例の標準ケアを変更させそうである」と述べた。また、むしろcetuximab単独療法が適切かもしれない症例群もあろう。特にCPT-11での再治療が禁忌となるような症例がそれにあたる、と付け加えた。
 


Treatment decisions for breast cancer should be based on pathology information and patient’s health rather than age

Giuseppe Curigliano, MD
European Institute of Oncology
Milan, Italy

 
毎年ASCOで発表される成績によると、老齢婦人の乳がんはたとえ診断時にリンパ節転移が強く疑われても、放射線療法や化学療法が積極的に施行され難い状況にある。ある大学の医療センターで次々と治療を受けた2,999例の閉経後症例医療記録の後ろ向き分析(retrospective analysis)を試みたところ、65歳から75歳未満の症例あるいは65歳未満の症例と比較して75歳以上の症例に対しては放射線療法が施行され難かった(未施行例はそれぞれ15.5%、14.4%、46.3%)。一方、化学療法も75歳以上の症例に対してはわずかに6.4%に施行されたに過ぎず、75歳未満の症例では35.4%であった。これらに対する治療医の選択基準は病理所見に基づいたものではなかった。75歳以上の症例では62%がリンパ節転移陽性であったが、65歳から75歳未満の症例では52%、65歳未満の症例でも52%だった。老齢症例の場合には、患者の意向、その他の余病を含めた一般健康状態、患者闘病支援状況、諸臓器機能状態などを踏まえた症例検討を通して治療法が決定されるのが望ましい、と研究総括医師のGuiseppe Curigliano博士は勧めている。
 


Cisplatin-based adjuvant lung cancer treatment strategy shows benefit

Thierry Le Chevalier, MD
Institut Gustave Roussy
Villejuif, France

 
非小細胞肺がんの標準ケアを変更させ得ると期待される臨床研究において、シスプラチン(CDDP)基軸手術後補助化学療法は手術単独療法よりも有意に生存を改善した。「この研究の結果は手術後非小細胞肺がんに対する術後補助化学療法の適応を支持するものである」とInstitut Gustave Roussy, Villejuif, Franceの研究者であるThierry Le Chevalier博士は述べている。この多施設国際共同研究では、病期I-IIIの術後非小細胞肺がん1,867症例を登録し、術後補助化学療法を行う群と手術単独群に無作為割り付けした。化学療法はCDDPともう1剤との併用であった(エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン)。術後補助化学療法群の5年生存率は44.5%であり、手術単独群では40.4%であった(p<0.03)と今年のASCOでChevalier博士は報告した。この4.1%という5年生存率の改善は、手術後に補助化学療法を勧めるに十分にして有意な数字であると博士は述べた。もちろんCDDPの使用に伴い重篤な副作用もみられた。約1/4の症例では、少なくとも1つのgrade 4の副作用がみられた。それらは主に好中球減少であった。そして7例(約1%)の治療関連死がみられた。術後補助化学療法として他の抗がん剤も有用か否かの臨床研究が進んでいる。たとえばタキサン系薬剤やゲムシタビンが用いられているが、おそらくそれらの術後補助化学療法も有用であるばかりでなく、副作用もより軽度であろう。

 


Adjuvant oral chemotherapy improves early lung cancer survival

Lead Author: Harubumi Kato, MD, PhD
   Tokyo Medical University, Tokyo, Japan
Presenting Author: Masahiro Tsuboi, MD
   Tokyo Medical University, Tokyo, Japan

 
979例の日本人症例に対して行われた臨床第III相無作為化比較試験の成績によれば、early stageの肺がんに対して経口薬UFT(テガフール-ウラシル)は有意に生存を改善した。この治療の副作用はごく軽微であることから、「病期I肺腺がん症例においてUFTの長期経口投与はこの病態における標準治療の質を改善しそうである」と東京医大の坪井正博博士は述べている。治療は腺癌の完全摘出のみあるいは切除後2年間UFT 250mg/m2/日の内服であった。術後5年生存率は、手術+UFT群87.9%に対して手術単独群では85.4%であった。5年生存率の差異はT2症例において最も著明であり、手術+UFT群では84.9%であったのに対して手術単独群では73.5%であった(P=0.005)。手術+UFT群では、わずかに2.9%の症例でgrade 2の副作用がみられたのみであった。それらの多くは軽度の嘔気、下痢、嘔吐、肝障害、骨髄抑制等であった。UFTは日本ではよく用いられているが、米国では認可されておらず入手不能である。
 

Statins may reduce cancer risk

Matthijs Graaf, PharmD
University of Amsterdam
Amsterdam, Netherlands
 
オランダのアムステルダム大学の研究者は、コレステロールを低下させる薬が発がん抑制作用を発揮することを示唆する観察研究の成績を報告した。その研究は、オランダ8都市の住民の内、30万人の退院総括記録や処方情報記録のデータベースをもとに調査された。3,219例のがん患者の記録とそれらの患者と背景因子がマッチする16,976例の記録をデータベースから抽出し、詳細に両者を比較検討した。その結果スタチン類(HMG-CoA還元酵素阻害薬、今回の対象はシンバスタチンが大半だった)の内服とがんの発症リスク20%減少の相関がみられた(オッズ比0.80; 95% 信頼域0.6-0.96)。スタチンの発がん抑制効果は、4年以上スタチンを内服した場合、または連日1,350日以上内服した場合にみられた。「スタチンが広く用いられていることとがんの高い発生率とを考えると、わずかながん発症リスクの減少ではあるが、公衆衛生に与える影響はかなりのものがある」と当該研究者のMatthijs Graaf, PharmDはコメントしている。しかしこの研究では、喫煙関係の情報やその他のライフスタイルの情報が欠如しているなどデータの解釈に当たりいくつかの留意すべき点がある。しかしこの研究成績は、がん予防におけるスタチンの効果を示唆するいくつかの前臨床成績と符合しているように思われる。
 


FOLFOX4 chemotherapy regimen improves outcome in patients with recurrent metastatic colorectal cancer

Mace L. Rothenberg, MD
Vanderbilt-Ingram Cancer Center
Nashville, TN, USA






本年のASCOで発表された研究結果によると、新規抗がん剤であるoxaliplatinと5-FU、ロイコボリンの3剤併用療法(FOLFOX4 レジメン)は、再発進行結腸直腸癌症例に対してoxaliplatin単独療法あるいは5-FU、ロイコボリンの2剤併用療法よりも優れていた。イリノテカン、5-FU、ロイコボリンの3剤併用療法で再発した821例は、3つの治療群に無作為割り付けされた。それはoxaliplatin単独療法、5-FU 、ロイコボリンの2剤併用療法、あるいはFOLFOX4 レジメンであった。奏効率はだいたいFOLFOX4で9%、他の2群では1%以下であった。FOLFOX4では有意に病気の進行を抑え(time to PDの延長)、FOLFOX4で4.9ヵ月、他の2群で2.6ヵ月だった。また体重減少、衰弱、疲労といった疾病随伴症状の緩和効果は、だいたいFOLFOX4で30%、他の2群では15%であった。副作用に関しては、FOLFOX4で嘔気、下痢、神経障害、好中球数減少、血小板数減少などが出現しやすかった。FOLFOX4は以前には得られなかった選択肢でいくつかのベネフィットはあるが、生存期間の延長は期待できないだろうと主任総括研究者のMace Rothenberg博士は述べている。


Targeted oral agent is active in acute myelogenous leukemia

Richard Stone, MD
Dana-Farber Cancer Institute
Boston, MA, USA






第2相臨床試験からある新規経口薬が急性骨髄性白血病に対して有効なことが示唆された。それはPKC 412と呼ばれる新しい薬でFLT3の tyrosine kinase activityを阻害する作用を有するものである。その研究の対象症例は14例であり、いずれもFLT3遺伝子に特異的な変異が認められた。PKC 412は1日3回投与された。14例の内12例は末梢血の白血病細胞が少なくとも50%減少した。2例では白血病細胞が完全に消失した。さらに5症例では骨髄の白血病細胞が少なくとも50%以上減少した。これらの症例の中で、1例は治療開始3ヵ月後に正常血液像を呈した。大半の症例でPKC 412の忍容性は優れていた。Boston, MassachusettsにあるDana-Farber Cancer InstituteのRichard Stone博士によれば、これらの反応は慢性骨髄性白血病に対して Gleevecで治療したときにみられた反応と似たようなものだった。博士らは投与量を変更するなどして研究をさらに進める予定である。また正常なFLT3遺伝子を有する急性骨髄性白血病の何症例かに対しても現在PKC 412による治療を進めている。彼らはいずれPKC 412と標準化学療法との併用療法も考慮している。

 


Chemotherapy benefit similar in older and younger women with breast cancer

Hyman B. Muss, MD
University of Vermont
Burlington, VT, USA






老齢の乳がん患者は癌化学療法の副作用に耐えられないと多くの臨床家は考えている。しかし最近の分析では、術後補助化学療法が年齢に関係なく再発率を若い患者と同じ程度減少させることが示唆されている。Burlington, VermontにあるUniversity of VermontのHyman Muss博士は「老齢の乳がん患者は過度の副作用なしに若年の乳がん患者と同じように治療のベネフィットを受けられるだろう」と述べている。博士らはCALGB(Cancer and Leukemia Group B)の4つの大きな臨床研究に参加した6,489症例からデータを収集した。その結果、65歳以上では死亡例がより多いことが判明した。しかし死亡の増加は乳がんには無関係でまた年齢は乳がん生存に何の影響もなかった。また老齢者は一般に臨床研究において十分に検討されていないことが判明した。臨床研究では65歳以上の患者はわずか8%を占めるに過ぎない。博士は「多くの医師は老齢者における全身治療のベネフィットに気づいていない」と述べている。しかし若い医師は医師になったごく早い時期からこのようなことを学んでいる。ASCOでも老齢者におけるがんについて取り組みを始めている。

 

日本語翻訳・監修:

東京慈恵会医科大学内科学講座・附属病院臨床腫瘍部講師
相羽恵介
 

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