化学療法は乳癌などで原発巣をdownstageし、微小転移巣を早期に破壊することを目的として、手術前に用いられてきている。
Natale博士は局所進行膀胱癌で、術前化学療法が生存期間延長に寄与するか否かを決定するために考案されたmulti-groupによる第V相研究の成績を発表した。この研究成果は、この疾患に対する新しい可能性のある標準的治療の役割についての論議を惹起した。
14年間にわたって行われたこの研究は、膀胱以外に転移巣がなく、前に全身的化学療法を受けていない膀胱の局所進行移行上皮癌の317例を対象として行われた。患者は膀胱摘除のみの群と、化学療法に続いて膀胱摘除が行なわれた群に無作為に割り付けられた。
化学療法は転移性膀胱癌に対して現在の標準的化学療法であるmethotrexate、 vinblastine、 doxorubitin、 cisplatinを併用するMVACから術前化学療法として採用された。
MVACに伴う毒性はgrade4の顆粒球減少が33%、 grade 3/4の胃腸毒性が29%に発現した。両群の間に術後合併症に関しては差がなかった。
生存期間(中央値)は術前化学療法群は6.2年、一方手術のみの群は3.8年であった。そして両群の5年生存率はそれぞれ57%と42%であった。
手術時の剔材料の組織学的検索で、術前化学療法群の38%の症例には癌細胞が認められなかった。これら症例に限ると、5年生存率は85%であり、これら症例が術前化学療法群の中で生存に関して最も利益を受けた症例であった。
Natale博士は、1つの成功した臨床研究のみでは現状の標準的治療を変えることはできないが、この研究成果は局所進行膀胱癌に対する治療の選択肢の1つとして考慮されるべきであると注意を喚起した。