再発上皮性卵巣癌の治療
Treatment of Relapsed Epithelial Ovarian Cancer
Martin Gore, PhD,
FRCP, Royal Marsden Hospital,
London, UK

進行性上皮性卵巣癌の治療は、白金製剤、タキサン系抗癌剤の使用と初期治療としての積極的手術療法の採用により進歩してきた。しかしながら卵巣癌の70〜80%の患者は進行した病巣を有し、化学療法により緩解が得られても大部分は再発する。白金製剤を中心とした化学療法後に再発した症例は難治性であるが、その中でも長期にわたり生存する例も見られることをGore博士は指摘する。

Gore博士は臨床的には同じと考えられる2つの患者群に焦点を当てている。その群とは手術療法のみで再発した早期癌の症例と、手術と補助化学療法の後再発した進行癌症例である。

博士は化学療法の終了と再発の間の無病生存期間は、二次化学療法への反応性と関連することを指摘する。以下は2つの研究の累積データである。

無病生存期間(月)患者数二次化学療法への反応性
5-12 5122%
12-24 2931%
>24 4659%

再発後の二次化学療法の選択については単剤よりも多剤併用のほうが成績が良いように思われる。しかし、副作用の出現は多剤併用のほうが頻度が高く、このような症例は一時的な緩解に終わることが多いことを考え、クオリティーオブライフに重きをおくべきと考える。

血清CA-125の値は鋭敏な再発のマーカーである。臨床的に再発が認められるまで3〜9ヵ月を要するが、個人差が非常にある。Gore博士は、臨床家と患者の中には再発の可能性を恐れるあまり、CA-125の正常値に固執しすぎるものがいることを懸念している。CA-125の上昇が見られるが無症候である患者に対し治療が開始された場合と、臨床的に再発が認められてはじめて治療が開始された場合との間に、生存率に関して差があるか否かについて現在臨床試験が進められている。

直接的な治療手段としても、また腸閉塞のような合併症の緩和としても、再発例に対する手術の意義については一致した見解はない。Gore博士は危険性と死亡率を勘案しても手術を行った方が良い例もあると考えているが、前方視的無作為臨床試験はいまだ計画されていない。

彼は、再発例は無病生存期間と初回の白金製剤への反応性によってクラス分けされるべきことを強調し、無作為臨床試験を行うことを提案している。化学療法終了後6ヵ月以上を経てから再発した例は多く見られ、二次化学療法への反応も期待できることより、このような症例が検討対象としては最も良いであろうと考えている。


レポーター:Elizabeth Coolidge-Stolz, M.D.
日本語翻訳・監修:
九州大学生体防御医学研究所生殖内分泌婦人科講師 加藤秀則
 


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