原発性乳癌1307例で検討したVascular Endothelial Growth Factor (VEGF)とBasic Fibroblast Growth Factor(bFGF)の予後因子としての価値と最初の転移部位との関連
The Prognostic Value of Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) and Basic Fibroblast Growth Factor (bFGF) and Associations to First Metastasis Site in 1307 Patients with Primary Breast Cancer
Barbro Kristina Linderholm, M.D.
Karolinska Institute and Hospital,
Stockholm, Sweden

Linderholm博士とその共同研究者らは、VEGFとbFGFと呼ばれる血管新生因子が、乳癌における生存期間と転移部位に関する予知因子である可能性について研究した。

VEGF、bFGFの双方は腫瘍の発育と転移を促進することが知られている。VEGFは特殊な内皮細胞分裂促進因子として作用し、種々のタンパク分解酵素を誘導し、血管透過性を増加させる。bFGFも同様な作用をもっている。In vitroで発育しているある患者の乳癌細胞は大量のVEGFとbFGFを分泌しているが、臨床におけるその意義は解明されていない。

研究者らは2つの患者群の生存と転移部位を比較した。これら2群は、血管新生因子(VEGF、bFGF)をin vitroで高レベルに分泌している乳癌患者と、低レベルに分泌している乳癌患者である。腋窩リンパ節郭清を伴う手術が行われた1307例が研究対象となった。これらの患者はリンパ節転移の有無、ホルモンレセプター発現の程度により、術後補助化学療法または術後内分泌療法を受けた。全例の生存期間(中央値)は70ヵ月であった。

Barbro Linderholm博士は原発巣の癌細胞より高レベルのVEGFが分泌されている患者は、ステロイドホルモンレセプター陰性、p53の変異そして高い組織異形度と関係していたと報告した。一方、これとは対照的に、高レベルのbFGFの発現はリンパ節転移陰性と小さい癌病巣と関係していた。高レベルのVEGFは術後内分泌療法を受けた患者における短い生存期間と短い無再発生存期間とも、有意に相関していた。

高レベルのVEGFを分泌していた腫瘍をもつ患者は、低レベルの患者と比較して内臓転移と脳転移がより高率に認められたが、その差は統計学的有意差とはならなかった。

低レベルのbFGFの発現は、より短い生存期間およびより短い無再発期間と関連する傾向が認められたが、これも統計学的に有意ではなかった。

Linderholm博士は、原発性乳癌における高レベルVEGFの予後因子としての価値は、無作為化試験で確認される必要があると結論した。


レポーター:Jill Waalen, M.D.
日本語翻訳・監修:愛知県健康づくり振興事業団副理事長 小川一誠
 


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