第一選択の化学療法が奏効した小細胞肺癌症例に対してのマリマスタットの 2重盲検プラセボ対照の比較研究:an NCIC-CTG and EORTC Study
Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial of Marimastat in Patients with Small Cell Lung Cancer Following Response to First-Line Chemotherapy: an NCIC-CTG and EORTC Study
Frances A. Shepherd, M.D.
National Cancer Institute of Canada-Clinical Trials Group,
Toronto, Ontario, Canada

メタロプロテアーゼ阻害剤マリマスタットの小細胞肺癌の治療に対しての第V相研究は、この薬剤が病勢の進行阻止に全く効果のないことを示した。この薬剤の投与に伴う高度の筋骨格系毒性(関節痛、関節炎、筋肉痛など)は、肺癌に対するこの薬剤のこれ以上の研究の停止につながった。

初の経口投与のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤のマリマスタットは、数種の癌に対しての可能性のある治療として興味を持たれていた。小細胞肺癌の治療においてのマリマスタットの、この最新の第V相研究は、プラセボと比較して生存期間に関して全く効果がなかった。この薬剤の投与は高度の筋骨格系毒性を発現したため、研究者は肺癌の治療でのこの薬剤のこれ以上の開発を停止した。

マリマスタットはマトリックスの蛋白分解酵素のすべてを阻害する薬剤である。マトリックスメタロプロテアーゼの過剰発現は、小細胞肺癌のような癌では、転移と未分化な組織像と関連して、予後不良の徴候である。

小細胞肺癌は第一選択の治療が良く奏効するが、再発率が高い。このことがマリマスタットの細胞増殖阻止効果の可能性を検証するモデルとして、この研究計画が立案された。

この第V相研究には、第一選択の治療が奏効した小細胞肺癌555例が含まれた。化学療法終了後、患者は引き続いて経口投与のマリマスタット群または経口投与のプラセボ群に2重盲検で分けられて、2年間を限度として投与された。増悪(再発)までの期間は両群間に統計学的有意差は認められなかった。(マリマスタット群:4.32ヵ月、プラセボ群:4.44ヵ月)生存期間(中央値)もまた両群間で統計学的有意差ではなかった。(マリマスタット群:9.4ヵ月、プラセボ群:9.7ヵ月)

筋骨格系毒性が63%の症例に認められ、このためこれら症状を発現した1/3の症例では投与中止を必要とした。3〜6ヵ月投与後のあらゆる痛みの症状と肩の痛みのスコアーは有意にマリマスタット投与群で増加した。6ヵ月投与の時点でマリマスタット群の患者では全身倦怠の増加、QOLの悪化が有意に認められた。

この研究結果から、Shepherd博士はマリマスタットは増悪(再発)までの期間と生存期間を全く改善しないこと、そして筋骨格系毒性はQOLとコンプライアンスに悪影響を与えることは明らかであると申したてた。

胃腸癌での研究は進行中であるが、肺癌への薬剤としてのマリマスタットの開発は停止された。


レポーター:Elizabeth Coolidge-Stolz, M.D.
日本語翻訳・監修:愛知県健康づくり振興事業団副理事長
小川一誠
 


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