癌治療のための血管新生阻害剤とエンドセリン拮抗剤の開発:リコンビナント ヒト型エンドスタチン(rHE)の固型癌症例での第T相研究
Phase I Clinical Trial of Recombinant Human Endostatin (rHE) in Patients with Solid Tumors: Pharmacokinetic, Safety and Efficacy Analysis Using Surrogate Endpoints of Tissue and Radiologic Response
Roy S. Herbst, M.D., PhD,
The University of Texas M.D. Anderson Cancer Center,
Houston, TX, USA

血管新生阻害剤エンドスタチンは、動物実験での腫瘍増殖阻止効果で劇的な成功を収め、大きな関心を巻き起こした。Herbst博士は、エンドスタチンのヒトにおける最初の第T相研究の結果を発表した。

この研究ではヒトへの投与の安全性を決定するためだけではなく、腫瘍血流に対する効果と同様、内皮細胞のアポトーシスと腫瘍細胞のアポトーシスに対する効果を含むこの薬剤の生物学的効果を測定した。8例のメラノーマと5例の肉腫を含む種々の固型癌の25症例が、エンドスタチンの20分連日静注で治療された。

エンドスタチンは非常に良く耐容された。Grade3の毒性は2例での静注されている血管の炎症のみであった。他の毒性は通常の化学療法で起きるようなものであった。血管新生の阻害に特有と考えられるいかなる毒性も発現しないようであった。

治療開始から8週後の腫瘍生検では、治療前の生検と比較して、腫瘍細胞のアポトーシスの増加と内皮細胞のアポトーシスの増加傾向が、レーザースキャンサイトメトリーにより判定された。

腫瘍血流を検知するための15Oを用いてのポジトロン断層造影法(PET)では、治療前と比較して、4週と8週後で統計学的に有意な血流の減少が認められ、減少の程度はエンドスタチンの高用量でより大きかった。PETはまた腫瘍のブドウ糖代謝の減少も示したが、この効果は治療前と比較して、統計学的な有意差ではなかった。

エンドスタチンのアポトーシスと腫瘍血流に対する効果にもかかわらず、治療中に全ゆる腫瘍が進行した。治療期間(中央値)は69日、腫瘍の進行(増悪)までの期間(中央値)は49日であった。Herbst博士は、この結果は通常の第T相研究で認められている結果と同様であると解説した。

Stable Disease(病勢の進行停止)が、1例のメラノーマで治療開始後の数ヵ月は急速な進行を示した後に、12ヵ月にわたって認められた。下顎骨滑膜肉腫の1例では、1つの部位では部分寛解を示したが、他の部位では腫瘍の進行が認められた。

Herbst博士は、エンドスタチンの抗癌剤としての将来の研究には、動物実験で1日1回の注入より有効であった持続注入を用いる方がよりよい結果となる可能性があり、さらに放射線療法、化学療法または他の生物学的製剤と併用して研究した方がよいであろうと指摘した。


レポーター:Jill Waalen, M.D.
日本語翻訳・監修:愛知県健康づくり振興事業団副理事長  小川一誠
 


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