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転移性/再発頭頚癌に対してのcisplatin+5-fluorouracilの併用療法とcisplatin+paclitaxelの併用療法を比較した第V相研究
Phase III Study Comparing Cisplatin (C) and 5-Fuorouracil (F) vs Cisplatin and Paclitaxel (P) in Metastatic/Recurrent Head and Neck Cancer
Barbara Murphy, M.D.
Vanderbilt-Ingram Cancer Center, Nashville,
TN, USA

この研究は、cisplatin75mg/m2にpaclitaxelの高用量200mg/m2または低用量135mg/m2を持続静注で併用する2つの併用療法の有効性を比較した以前の研究に引き続いて行われた。以前の研究ではpaclitaxelの高用量と低用量間には、生存期間の差は認められなかった。双方の併用療法ともに毒性により、投与中止例が高率に出現した。このため研究者らは、cisplatin+paclitaxelの併用療法での毒性を軽減することが、この併用療法での治療を維持していくために重要であると考えた。

この研究では、前治療のない、進行頭頚癌で、計測可能病変または評価可能病変を有し、充分な実質臓器機能を有する症例を選択した。患者は全例男性であり、平均年齢は60歳であった。症例はcisplatin100mg/m2+5-fluorouracil1g/m2の併用またはcisplatin75mg/m2+paclitaxel175mg/m2の併用のいずれかに無作為に割り付けられた。血液毒性または胃腸毒性が高度に発現した例では、Murphy博士および共同研究者は、20%の投与量減量を行うこと、あるいはcisplatinをcarboplatinに替えることを許可した。cisplatin+5-fluorouracil併用群の23例、cisplatin+praclitaxel併用群の7例がcisplatinをcarboplatinへと替えた。Cisplatin+5-fluorouracil併用群の12例とcisplatin+paclitaxel併用群の8例が毒性のため、この研究から除外された。研究者らは、血液毒性とcisplatinまたはcarboplatinのいずれを用いていたかの関係については報告しなかった。この研究のprimary endpointは1年生存率であった。

結果:
cisplatin/5-fluorouracilcisplatin/paclitaxel
完全寛解 6%5%
部分寛解 21%20%
病勢の安定 62%52%
増悪 4%7%
1年生存率 41%34%
生存期間(中央値) 8.8 ヵ月9.1 ヵ月

この結果は、以前の研究よりも1年生存率と生存期間(中央値)がかなり優れていた。生存に関しては双方の治療法に有意差はなかったが、血液毒性、嘔吐、下痢と粘膜炎はcisplatin+5-Fluorouracil併用群により高度であった。QOLと痛みのコントロールもcisplatin+paclitaxelのほうが良好であった。Murphy博士は以前の研究と比較してこの研究でより良い結果が得られたのは、症例選択基準の差と治療にあたった医師の患者ケアの経験の差によるかもしれないと付言した。

Murphy博士はcisplatin+paclitaxelは今後の研究における新しい基準を代表する併用療法であると述べた。Cisplatin+paclitaxelは毒性を軽減したため、コンプライアンスを改善し、そのためoutcomeを改善する可能性があるが、ケアの新しい基準となるのかについてはいまだ確立されていない。しかし、この研究のスポンサーECOGは、この結果にある程度満足しているだろうと博士は述べた。


レポーター:Aaron Levin
日本語翻訳・監修:愛知県健康づくり振興事業団副理事長  小川一誠
 


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