日本化薬


病理病期 I 期肺扁平上皮癌完全切除例に対するウベニメクス(ベスタチン)vs プラセボの無作為化臨床第III相比較試験
A Randomized Phase III Study Comparing Ubenimex (Bestatin) Versus Placebo as Postoperative Adjuvant Treatment in Patients with Stage I Squamous Cell Lung Cancer
Masahiro Tsuboi, M.D.
Tokyo Medical University,
Tokyo, Japan

この臨床第III相試験の結果から、免疫調節剤であるウベニメクス(ベスタチン)の投与により病理病期I期の肺扁平上皮癌切除例の治療成績が改善することが示唆された。

本試験の適格条件は、1)病理組織学的に扁平上皮癌と診断された病理病期I期肺癌症例、2)完全切除例('87年版・第2版日本肺癌取扱い規約では、絶対治癒切除、相対的治癒切除された症例)、3)担当医が治験薬の投与を不適当と判断した術後合併症(術後気管支瘻、肺炎、膿胸等)が無い症例、4)術後少なくとも3ヵ月以上の生存が期待される症例などであった。治療方法は、「術後原則として1ヵ月以内に登録を行い、ウベニメクス(ベスタチン)群、プラセボ群ともに1日1回1カプセルを約2年間(最長756日)に経口投与する」というものであった。

Overallの5年生存率は、ウベニメクス(ベスタチン)投与群が81% (95% C.I.:76〜86%)に対し、プラセボ群は74% (95% C.I.: 68〜80%)であり、ウベニメクス(ベスタチン)投与群で有意差が認められた(P=0.033)。無再発生存期間についても同様に、両群間に有意差を認めた(71% vs 62%)。

毒性については、食欲不振がウベニメクス(ベスタチン)群でやや発生率が高い傾向にあった(15% vs 7%)が、重篤なものは認められなかった。

この臨床試験がpositiveに出た科学的根拠を明確にすることは難しい。当初サイトカインの放出等の作用から、ウベニメクス(ベスタチン)は免疫調節剤と考えられていた。しかし、最近の研究から血管新生の抑制やアポトーシスの誘導に関与していることが示されてきており、これらの多彩な本剤の効用に注目すべきかもしれない。

今回示された結果をもとに、今後、肺癌についてはUFTなどの抗がん剤あるいは新しい分子標的薬剤との比較試験、多臓器の扁平上皮癌についてはウベニメクス(ベスタチン)の有効性を評価する試験等を検討していく必要があると考えられる。


レポーター:東京医科大学外科第一講座教授 MK421肺癌外科研究会 加藤治文
            東京医科大学外科第一講座   MK421肺癌外科研究会 坪井正博
 


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