第一製薬



日本人癌患者におけるグルクロン酸転移酵素 (Uridine diphosphate glucuronosyltransferase, UGT) 1A7 の遺伝子多型と塩酸イリノテカンの毒性
Genetic Polymorphisms of UDP-glucuronosyltransferase (UGT) 1A7 Gene and Irinotecan Toxicity in Japanese Cancer Patients
Maki Ando, M.D.
First Department of Internal Medicine,
Nagoya University School of Medicine,
Nagoya, Japan

塩酸イリノテカンは大腸直腸癌、肺癌の治療において世界中で使用されているが、白血球減少や下痢など、ときに重篤で致死的な副作用を起こす。安藤らのグループは、グルクロン酸転移酵素 (Uridine diphosphate glucuronosyltransferase, UGT) 1A7 の遺伝子多型が酵素活性を下げ、塩酸イリノテカンで治療された患者に対し毒性に影響を及ぼすと考えた。UGTは塩酸イリノテカンの活性代謝物であるSN-38のグルクロン酸抱合を担っている。

安藤らのグループは、以前UGT1A1*28は有意に副作用の危険因子であると報告している。さらに最近UGT1A7はUGT1A1の9倍高いレベルのグルクロン酸抱合を示すと報告されており、またUGT1A7は消化管に強く発現されている。彼らは、これらの多型が塩酸イリノテカンによる重篤な副作用、特に下痢を予測できるのではないかと推測した。

UGT1A7*1, UGT1A7*2, UGT1A7*3, UGT1A7*4を、シークエンスで遺伝子解析した。118人の癌患者と108人の健常者の遺伝子解析を行った。癌患者は小細胞癌21人、非小細胞癌65人、大腸直腸癌21人、その他11人である。26人が塩酸イリノテカンの治療により、グレイド4の白血球減少もしくはグレイド3以上の下痢が出現している。

単変量、多変量解析とも、遺伝子多型と重篤な副作用の間には関連を認めなかった。これらの結果は、UGT1A7遺伝子多型の解析は、塩酸イリノテカンによる重篤な副作用を予測するのに有用ではないことを示唆している。また、UGT1A7遺伝子多型の分布は健常者と癌患者で類似していた。

さらに、安藤は日本人のUGT1A7遺伝子多型の頻度は、以前報告された白人の頻度より有意に低いと報告している。


レポーター:名古屋大学附属病院第一内科 安藤麻紀
 


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