初発精神病患者における認知機能の安定性
TIPS: Stability of Cognitive Functioning in Patients with First-Episode Psychosis
Stein Opjordsmoen M.D.
Department of Psychiatry, Ulleval Hospital,
Oslo, Norway, Presenter

精神病の早期治療と予防研究の一端として、初発精神分裂病関連障害を有する患者群における認知機能検査を行った。Opjordsmoen博士は、経時的研究における1年後の194名の患者結果を報告した。患者の精神分裂病関連障害分類は、精神分裂病56名、分裂病様障害44名、分裂感情障害27名、妄想性障害12名、特定不能の精神病性障害22名、気分障害8名、感情障害25名である。

各患者が、フィンガータッピング、カリフォルニア言語習得テスト、数唱範囲テスト、trail making テスト、視覚遂行テストなどを含む8種類の神経心理学的課題からなる検査を受けた。因子分析により、これらの検査から、7項目の認知機能(ワーキングメモリー、言語習得、行動管理能力、衝動性、保続、フィンガータッピング、逆行マスキング)が抽出された。

結果、7項目すべてにおいて顕著な安定性がみられた。いずれの項目においても研究開始時と1年経過後の値には有意な相違はみられなかった。分裂病関連障害の下位グループごとにみると、気分に一致しない妄想を伴う気分障害患者では衝動が、分裂病様障害では覚醒度が、分裂感情障害では言語習得が有意に改善された。

これらの結果から精神分裂病患者では、認知障害は、ほぼ持続しているという結論に達した。Opjordsmoen博士は、「この結果から、認知欠損は障害発生時に生じ、その後わずかに変化するということを提示する神経認知研究は、今後発展する分野である」と結論付けている。

Opjordsmoen博士は、この研究に関して以下の考察を加えている。最初の1年間は、比較対象群が存在しなかった。続く追跡研究では、健常群の評価がなされるであろう。博士は、ほとんどの患者で神経遮断薬が投与されており、多くの患者でこの期間に新しい抗精神病薬に変更されていることを付け加えている。今後の追跡研究において、投薬内容に関する傾向、認知欠損はより長期間にわたって持続するか否かが調査されるであろう。


レポーター:Andrea R. Gwosdow, Ph.D.
日本語翻訳・監修:関西医科大学精神神経科講師 延原健二
 


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