Schooler博士はまず初めに、精神分裂病の治療を困難にする要因の中で、物質依存は最も広く研究されており、かつ最も重大な危険因子であると述べている。Epidemiological Catchment Area Study によれば、精神分裂病の患者における物質乱用の生涯罹患率は47%である。研究のどの時点でも、有病率は25%から35%の間にある。物質の乱用は精神分裂病においてより悪い予後をもたらし、再発、再入院、服薬コンプライアンスの低下、ホームレスとなる可能性の上昇に関連が認められる。
Schooler博士は大規模な多施設研究を発表しているが、その中で3段階の投与量のfluphenazineと2つのやり方の家族療法を比較している。研究によって薬物の投与量と再発率の間に強い関連が認められ、再発率はより高用量で有意に低く、より低用量で有意に高かった。
Schooler博士の研究には、患者の自己申告による物質依存のデータも含まれている。Schooler博士によれば、自己申告の場合患者がなかなか報告しようとしないため、物質依存の罹患率は低く見積もられがちだという。
この研究のため、患者達はいくつかのグループのひとつにレトロスペクティブに振り分けられた。1つのグループはアルコールを摂取しないかあるいは摂取量の少ない患者からなる。もう1つのグループはアルコールのみか他の薬物のみを摂取する患者からなる。もう1つのグループはアルコールと他の薬物の両方を摂取する患者からなる。アルコールと他の薬物の両方を摂取する患者は、薬物摂取群に分類された。
Schooler博士は、看護スタッフに評価尺度をつけてもらって判断すると、薬物摂取群では他の2つのグループと比べて社会的接触が多かったと述べている。これは、違法な薬物を入手して使用するのに社会的接触を必要とすることも影響していると考えられる。
アルコールを全く摂取しないか少量しか摂取しない患者では、感情表現の減弱や社会性の減少で障害の度合いが大きいとされた患者が多かった。アルコールか他の物質のどちらかを摂取している患者では、感情表現や社会性での障害の度合いは低かった。
Schooler博士は、合併症の影響の評価については様々な方法が考えられると指摘している。観察集団全体を詳細に検討するやり方もあれば、コホート研究や条件の違いで観察集団にどのような違いが生じ得るかを検討する方法もあり、ある特定の人口での転帰を検討する方法もある。
多くの研究では、転帰を評価する方法として有効性の評価からどの程度有効かの評価へと変化してきている。このことによって、精神分裂病だけでなく他の障害を合併している患者が研究に含まれるようになってくるであろう。また、物質依存と関連した精神分裂病の研究にあたっては、特に長期転帰を評価する場合、条件の違いによるコホート研究が一番良いとSchooler博士は考えている。