精神分裂病において攻撃的な行動が持続している際の治療
Clinical Management of Persistent Aggressive Behavior in Schizophrenia
Leslie L Citrome, M.D.
Nathan Kline Institute, Orangeburg, NY, USA, Presenter

暴力行為は精神科入院のありふれた理由だが、入院後の治療を難しくすることがある。精神疾患に物質乱用が合併していると、暴力行為の重大な危険因子となる。他の潜在的な危険因子としては、被害的な妄想や幻覚、衝動性、人格障害、整っていない治療環境が挙げられる。

危険性を評価するにあたっての最初のステップは、暴力行為を引き起こすかもしれない他の身体疾患を除外することである。そのためには過去の全ての病歴が重要であり、特に初回入院の患者にとっては重要な意味を持つ。また、幅広い事柄について問診することで、そのような行動はこれまで続いてきたパターンの1つであることが分かるかもしれないし、地域によっては警察の記録からそのことが確認できるかもしれない。

アカシジアやそれ以外の薬剤の副作用も暴力行為の危険因子となる。しかしCitrome博士は、非定型抗精神病薬の使用が増えるにつれて、アカシジアに関連した暴力行為の頻度は減っている可能性があると述べている。非定型抗精神病薬は、アカシジアや他の錐体外路性の副作用を起こしにくい。

Citrome博士は、臨床的には異なる経過を持つとして2つのタイプの攻撃行動を 区別している。単発的な暴力行為と過去に暴力の既往のある患者の暴力行為とで は、治療が異なってくる。単発的な暴力行為はしばしば一過性の原因が引き金となるため、患者をそういった原因から引き離すだけでも効果がある場合がある。散発的に暴力行為を起こす患者は、しばしば非定型抗精神病薬によく反応する。それに対して、常習的に暴力行為を起こす患者はあまり非定型抗精神病薬に反応せず、入院中一貫して暴力的であることもある。

Citrome博士によれば、治療のためには考えに入れておくべきことが数多くある。治療の枠組みを設定し環境を整えることと、全般的な行動に重点をおいた治療が重要である。身体拘束や隔離は刺激を減らし、患者の鎮静の助けとなるかもしれない。過鎮静と乱用の危険のため急性期治療での使用は限られたものにはなるが、ロラゼパムのような薬剤も有効な場合がある。

攻撃性が持続している患者のためには、しばしば特別な病棟が必要となる。使用できるのであれば、歩行可能な拘束衣も有効である。薬物には非定型抗精神病薬とバルプロ酸のような気分安定薬が含まれるが、このような患者では定型的な抗精神病薬は別の問題を引き起こすことがある。高用量を投与すれば充分な鎮静が得られるかもしれないが、それでアカシジアが起こることもあるからである。それだけでなく、物質の離脱症状がある患者においては、けいれん発作を起こす危険を高めることがある。

非定型抗精神病薬は精神分裂病の治療全般に重要であるが、注射剤を用いると治療の有効な一助となり得るし、錐体外路性の副作用の可能性が低い、経口剤への切り替えが容易といったメリットがあると思われる。

Citrome博士は、暴力をコントロールし患者の機能レベルを保つことが長期的な治療目標であると述べている。非定型抗精神病薬、特にクロザピンは暴力的な患者の長期治療に効果をあげてきた。臨床試験から得られたデータによれば、リスペリドンも攻撃性に対する効果に優れているようである。


レポーター:Kurt Ullman, RN
日本語翻訳・監修:東京武蔵野病院精神科 野崎昭子
 


Copyright 2000-2013 by HESCO International, Ltd. All rights reserved.