イタリア多施設における欠陥性精神分裂病の研究
The Italian Multicenter Study of Deficit Schizophrenia
Silvana Galderisi, M.D.
University of Naples, Naples, Italy, Presenter

"欠陥性精神分裂病"という表現は、陰性症状が基本でかつ長期間持続するという特徴を有する精神分裂病のサブタイプを指す。欠陥性と非欠陥性精神分裂病の患者の間に臨床症状、病歴、生物学的指標での相違が既に発見されている。Galderisi博士の報告によると、イタリア多施設での本研究の目的は、欠陥性精紳分裂病の特徴、すなわち臨床データと脳の構造変化、遺伝子データ、神経心理機能との関連を明らかにすることである。

研究対象:欠陥性精神分裂病患者60人と欠陥性精神分裂病の診断基準を満たしていないが、年齢、性別をマッチさせ、DSM-Wで精神分裂病と診断された60人および健康対照群120人である。参加者全員に対して病歴聴取、心理学的評価と神経学的、神経・精神生物学的テストおよび頭部、脳のX線検査を行う。欠陥性精神分裂病と脳の成長因子の遺伝子との関連を調べるため、採血を施行した。

Galderisi博士は欠陥性と非欠陥性精神分裂病との検査結果の違いを報告した。例えば欠陥性精神分裂病の患者に陰性症状、注意力低下が多くみられ、神経学的欠陥が重く、初発前の適応状態が悪い。

特に興味深い発見は、欠陥性精神分裂病患者では無気力(Anergia)の項目に関して有意差が得られた。また、欠陥性精神分裂病患者は敵意(Hostility)のレベルがかなり低い。母親の回答による本人と兄弟(同年齢可能)を比較した児童期行動尺度の結果から、早くも児童期にある程度の変化が現れることを示している。  

欠陥性精神分裂病群と非欠陥性精神分裂病群との神経学的、病前適応能力面での大きな相違は、欠陥性精神分裂病と非欠陥性精神分裂病とは異なることを示唆しているとGalderisi博士は主張する。

欠陥性と非欠陥性精神分裂病患者の違いを示す新たな証拠が新しい社会的心理的介入法と新しい薬物療法の開発につながるかもしれない。


レポーター:Kurt Ullman, RN
日本語翻訳・監修:東邦大学医学部精神神経科教授 菅原道哉
 


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