アルゴリズムの利用は、1)臨床的な意思決定、2)医療の質の向上、3) 治療を医療施設や治療者の間で一貫したものにすること、4) 個人個人に合った治療を行うこと、と5) 共通の臨床記録の向上、を促進する。治療ガイドラインは、医療一般で広く使われており、精神科領域でも徐々に数が増えより多く使われるようになってきた。しかしながら、治療アルゴリズムが、臨床症状、臨床経過、医療経済にどのような影響を与えるかについて評価する研究はほとんどなされていない。
テキサス薬物アルゴリズム・プロジェクト[the Texas Medication Algorithm Project (TMAP)]は、系統的な治療ガイドラインと患者・家族の教育プログラムの効果について、双極性障害T型あるいは分裂感情障害双極型の400人以上の患者について調査した。コントロールされたオープン研究の予備的な結果と、公的精神保健システムの中でのガイドラインの使用の意義について報告された。TMAPの詳細については、("http://www.mhmr.state.tx.us/centraloffice/medicaldirector/tmap.html") にてアクセスが可能である。
Suppes博士は、シンポジウムで、研究結果の一部を報告した。267人の双極性障害T型の患者が2群に分けられ、一方の群 (N=141)は、アルゴリズムを用いた、証拠に基づいて同意された治療が行われた。もう1群は(N=126)、アルゴリズムを用いない治療が行われた。 異なった治療アプローチの精神病症状、抑うつ症状、躁症状、身体的・精神的な機能そして副作用への効果について比較された。
アルゴリズムを用いて治療された群では、BPRSで評価された、早期に精神病症状の改善が有意に認められた。アルゴリズムを用いないで治療された群でも、精神病症状の改善が有意に認められたが、用いた群には及ばなかった。アルゴリズムを用いて治療された群では、CARS-Mで評価された、早期の躁・軽躁症状の改善が有意に認められた。アルゴリズムを用いないで治療された群では、躁・軽躁症状の改善は、用いた群には及ばなかった。アルゴリズムを用いないで治療された群とアルゴリズムを用いた群の間には、IDS-Cで評価されたうつ状態の改善に有意差は認められなかった。しかし、非常に重症なうつ状態の患者では、アルゴリズムを用いた治療の方が良い結果を得ることができた。アルゴリズムを用いないで治療された群とアルゴリズムを用いた群の間には、SF-12で評価された身体的・精神的な機能に有意差は認められなかった。アルゴリズムを用いて治療された群では、SAFTEEで評価された早期の副作用の出現が有意に少なかった。
最近、テキサス州議会は、公的精神科保健システム内で重症な精神疾患のための治療ガイドラインを実行することを義務化した。この、双極性障害のための薬物アルゴリズムのテキサス州での実施 [the Texas Implementation of Medication Algorithms (TIMA)]と呼ばれる議案の目的は、重症な精神障害へのより均一な治療を確立することである。TIMA プロジェクトは、従来のTMAP ガイドラインの改訂作業も含まれている。そのため、最近、同意事項を作るための会議が開かれ、TMAPは改訂された。新しい TMAP は、非定型抗精神病薬やlamotrigineなどが双極性障害の治療のオプションに含まれ、その結果より多くの治療が含まれるようになった。