双極II型障害における抗うつ剤の効果と安全性
Efficacy and Safety of Antidepressants in Bipolar II Disorder
Jay D. Amsterdam, M.D.
University of Pennsylvania, Philadelphia,
PA, USA, Presenter

抗うつ剤は双極性患者のうつ病にもしばしば処方されるが、多くの臨床家は抗うつ剤による躁転に懸念を抱いている。

Amsterdam博士は、双極II型障害患者を対象とする二重盲検試験の結果を提示し、fluoxetineによって治療された患者の躁転率はプラセボの躁転率を越えないことを示した。

Amsterdam博士は、fluoxetineが米国で導入された1988年以来fluoxetineで治療を受けた患者に関するデータを調査し、fluoxetine20mg/日の固定用量を服用していた89例の双極II型患者を同定した。博士は、6ヵ月間の経過観察期間で見た場合にはfluoxetineで治療された単極性うつ病患者よりも89例の双極II型患者の方がうつ病エピソードの反復率が低いことを見いだした。Fluoxetineによる急性期治療中に、双極II型患者の3.8%に軽躁転がみられたが、この軽躁状態は、fluoxetine治療を継続したままで自然軽快したという。

次いでAmsterdam博士は、venlafaxine単剤によって治療された31例の単極性うつ病患者と17例の双極II型うつ病患者を対象とした博士らの研究の結果を提示し、6週間の短期療法中には双極性、単極性患者のいずれにおいても躁転例はみられなかったことや、venlafaxineが同等の抗うつ効果を示したことについても述べた。

さらにAmsterdam博士は、monoamine oxidase inhibitor (MAOI)に焦点を当て、MAOIが双極性うつ病に対して非常に有効であることを1970年代前半に見いだしたZollらの研究に言及した。博士らの研究によれば、fluoxetineやvenlafaxineと同様にMAOIによって治療された双極性うつ病患者の躁転率は低く、さらにMAOI単剤服用患者とMAOIと炭酸リチウムの併用療法を受けた患者の躁転率は同等であったことも示された。

Pittsburg大学の研究者が、1990年代前半に56例の双極性うつ病患者においてimipramineとMAOIの効果を比較した結果、MAOIによって治療された患者における治療反応率がより高いことを見いだしたことも紹介された。MAOIはimipramineと同等の忍容性を示し、躁転率はより低かったという。


レポーター:東京女子医科大学医学部精神医学助教授 坂元 薫
 


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