分裂病における治療の継続性について
Treatment Adherence in Schizophrenia
John M. Kane, M.D.
Hillside Hospital, Glen Oaks, CA, USA, Presenter

処方通りに服用することによって、抗精神病薬による薬物療法は分裂病患者の再発や再入院の予防効果を発現する。しかし、未だに治療の継続性は重大な問題である。服薬を遵守しない患者は、うつ病で35%、精神疾患以外の疾患では24%であるのに対して、分裂病患者では42%に達すると報告されている。

患者が処方通り服薬しない理由として、心理・認知的、心理社会的、薬物による要因など多くの要因が挙げられる。非服薬につながる危険因子を検討した研究では、薬物に起因するパーキンソン症候群の影響が最も強いことが明らかにされた。いかなる理由によるものであっても、非服薬によって病状の増悪、家族の負担や社会的なコストを伴う不良な転帰がもたらされることになる。

再発を引き起こす危険因子のうちで最も重要なものは服薬中断である。初回エピソードの分裂病患者であっても処方通り服薬しなければ5年以内に80%が再発する。定型抗精神病薬による長期間にわたる薬物療法には副作用の発現が高頻度に認められるが、新しい非定型抗精神病薬は長期間の安全性や耐用性を伴っている。

再発率を低下させるための最善の治療方略には心理社会的な治療が含まれる。長期間の治療継続性を増進するためのその他の方略として、長時間作用型のデポ剤や比較的耐用性の高い非定型抗精神病薬による薬物療法が挙げられる。

いくつかの研究で経口投与に比してデポ剤を用いた場合に再発率が低いことが示されている。また、フルフェナジンの経口投与とデポ剤による治療を受けている患者の転帰に関する研究では、心理社会的な治療を併用した患者群が最もよい転帰を示した。

一方、患者が寛解状態にあるときには服薬を中断し、再発兆候を示した場合に治療を再開する、間欠的治療については、比較的高い再発率が認められている。

現時点では、心理社会的治療とデポ剤や非定型抗精神病薬を用いた継続的な薬物療法の組み合わせが最良の選択肢であるが、その結果は決して満足がいくものではない。治療方略を改善し、再発率を抑制するために、より多くの研究が必要である。


レポーター:昭和大学医学部精神医学教室助教授 中込和幸
 


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