分裂病の脳形態異常のリスクファクター
Risk Factors for the Brain Deviations Associated with Schizophrenia
Colm McDonald
Department of Psychiatric Medicine, Institute of Psychiatry,
London, England, Presenter

分裂病患者を対象とした58のMRI研究のメタ分析によると、対照に比して平均脳容量は2%減少し、平均脳室は26%増加していた。この分裂病の脳の構造変化の原因は何であろうか。演者はこの問題に取り組んだ。

35名の家族性分裂病発端者、その家族63名、31名の非家族性分裂病発端者、その家族33名、対照33名について脳容量を分析した。さらに対象の一部では産科的合併症も検討した。まず、脳構造の異常には産科的合併症のような人生早期の環境因子が関与しているかどうかを調べた。その結果から、演者は家族性の分裂病では産科的合併症は遺伝的リスクと共に作用してより著しい脳室拡大をもたらす、と考えた。左の海馬容量の減少は産科的合併症とほぼ関係し、性とは関係していなかった。

次に多発家系の健常な親族を調べたところ、遺伝的近親度に応じて罹患者と同じような脳室の拡大が見られた。脳室拡大は男性発端者とその健常な男性親族にほぼ限られていた。演者は脳室の拡大は遺伝的なもので、おそらく性特異的な遺伝子の発現であろう、しかしこの変化があるからといって必ずしも精神症状を呈するとは限らない、と指摘した。

これに対して、非家族性分裂病患者の健常な親族の脳容量は対照と変わらなかった。すなわち非家族性分裂病患者の脳室拡大は非遺伝的な原因によることが示唆された。

最後に演者は「分裂病自身と同じように分裂病脳の変化は遺伝因子と環境因子 および両者の相互作用による」と結論した。


レポーター:帝京大学医学部精神科教授 南光進一郎
 


Copyright 2000-2013 by HESCO International, Ltd. All rights reserved.