β-ブロッカーの心不全治療における地位は確立している。しかし、大多数の内科医は、糖尿病を有する心不全患者にβ-ブロッカーの使用をためらいがちである。なぜなら主な理由は、同剤の使用が耐糖能異常を助長するのを心配するからである。
心不全患者の約3分の1は糖尿病を有している。Fowler博士らは、糖尿病を有する心不全患者で、β-ブロッカー使用の正当性に関するエビデンスを検討した。彼らは、コペルニクス
(COPERNICUS) トライアルに登録された患者を対象として、カルベジロールとプラセボの効果を比較した。

このトライアルは、安静時あるいは極めて軽い労作で心不全をきたす2,289症例を、カルベジロールあるいはプラセボ群に割り付けている。本トライアルは、カルベジロールが生存率を著明に改善させたために、予定より早く中止となっている。
症例の内訳は、589症例の糖尿病と1,700症例の非糖尿病患者である。博士は、β-ブロッカーは両群間では臨床状態、入院率及び生存率で同程度の改善を示した、と報告した。

死亡率の治療危険率は、糖尿病と非糖尿病の両者で0.65であった。またこの治療危険率は、全体の症例でも、死亡率と入院に与える要因としては同程度であった。
博士によれば、カルベジロールは糖尿病患者でよく耐薬性を示した、という。また高血糖や腎障害という過剰リスクもなく、さらに、低血圧や失神前状態の発生率も低かった、という。
博士は、カルベジロールによる治療は糖尿病を悪化させるおそれはないと言及した。事実、β-ブロッカー療法は糖尿病患者の死亡や入院率を有意に減少させている。
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